ドン.・キホーテ  セルバンテス | mitosyaのブログ

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個人誌「未踏」の紹介

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世界文学大系

セルバンテス

ドン・キホーテ  会田 由 訳

第一篇

第一章

 名にし負う郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ偽人および日常について。

 名は思い出したくないが、ラマンチャのさる村に、さほど前のことでもない、槍かけに槍、古びた楯、痩せた馬に、足早の猟犬をそろえた、型のごとき一人の郷士が住んでいた。昼は羊肉よりも牛肉を余分に使った煮込み、たいがいの晩は昼の残り肉に玉ねぎを刻みこんだからしあえ、土曜日には塩豚の卵あえ、金曜日には扁豆、日曜日になると小鳩の一皿ぐらいは添えて、これで収入の四分の三が費えた。そののこりは、厚羅紗の服、祭日用のびろうどズボン、同じ布の靴覆いに使い、ふだんの日は黒っぽいべリヨリ織で体面をととのえた。家には四十歳を過ぎた家政婦と、まだ二十歳にならぬ姪と、それに痩せ馬に鞍もつければ、剪定用の鉈もふるう畑仕事や市場への買い物に行く若者がいた。われらの郷士の齢はまさに五十歳になんなんとしていた。

第八章

 風車の驚くべき、また空想されたこともない冒険で、勇ましいドン・キホーテがこよなき成果と、まさに記憶に価するその他の出来事について。


 そうしているうちに、二人はその野原に立ちならんだ、三十から四十の風車を発見した。すると、これを眼にするやいなや、ドン・キホーテは従者にむかって言った。
「幸運の神は、たまたまわれらが望んだよりもはるかに好都合に、われらの出来事を導いてくださるとみえる。その証拠には、サンチョ・パンサよ、かなたを見るがよい。あそこに三十かそこらの不埒なる巨人どもが姿を現しているではないか。拙者は彼奴らと一戦交えて、一人残らず皆殺しにいたし、その勝利品をもってわれらも富裕になろうというのだ。なぜと申して、これは正義の戦いだからで、こういう邪悪の種を大地の面から除き去ることは、神に対する大きな奉仕でもあるからだ」
「どんな巨人だね」とサンチョ・パンサが聞く。


ドン・キホーテ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ドン・キホーテ (Don Quixote, Don Quijote ) は、スペインの作家であるミゲル・デ・セルバンテス (Miguel de Cervantes Saavedra、1547 - 1616) の小説、または、その主人公の名前。

あらすじ

前篇
風車に突進するドン・キホーテ(ギュスターブ・ドレによる挿絵)ラ・マンチャのとある村に貧しい暮らしの郷士が住んでいた。この郷士は騎士道小説が大好きで、村の司祭と床屋を相手に騎士道物語の話ばかりしていた。やがて彼の騎士道熱は、本を買うために田畑を売り払うほどになり、昼夜を問わず騎士道小説ばかり読んだあげくに正気を失ってしまった。狂気にとらわれた彼は、みずからが遍歴の騎士となって世の中の不正を正す旅に出るべきだと考え、そのための準備を始めた。古い鎧を引っぱり出して磨き上げ、所有していた痩せ馬をロシナンテと名付け、自らもドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャと名乗ることにした。最後に彼は、騎士である以上思い姫が必要だと考え、エル・トボーソに住むアルドンサ・ロレンソという田舎娘を貴婦人ドゥルシネーア・デル・トボーソとして思い慕うことに決めた。

用意がととのうと、彼はひそかに出発した。冒険を期待する彼の思いと裏腹に、その日は何も起こることなく宿屋に到着した。宿屋を城と思いこみ、亭主を城主だと思いこんでしまっていたドン・キホーテは、亭主にみずからを正式な騎士として叙任してほしいと願い出る。亭主はドン・キホーテがいささか気の触れた男であることを見抜き、叙任式を摸して彼をからかうが、事情を知らない馬方二人が彼の槍に叩きのめされてしまい、あわてて偽の叙任式を済ませた。

翌日ドン・キホーテは、遍歴の旅にも路銀や従士が必要だという宿屋の亭主の忠告に従い、みずからの村に引き返すことにした。だが途中で出会ったトレドの商人たちに、ドゥルシネーアの美しさを認めないという理由で襲いかかり、逆に叩きのめされてしまう。そこを村で近所に住んでいた百姓に発見され、ドン・キホーテは倒れたまま村に帰ることになった。

打ちのめされたドン・キホーテの様子を見た彼の家政婦と姪は、この事態の原因となった書物を残さず処分するべきだと主張し、司祭と床屋の詮議の上でいくつか残されたものの、ほとんどの書物が焼却され、書斎の壁は塗りこめられることになった。やがてドン・キホーテが回復すると、書斎は魔法使いによって消し去られたと告げられ、ドン・キホーテもそれに納得した。遍歴の旅をあきらめないドン・キホーテは近所に住む、いささか脳味噌の足りないサンチョ・パンサという農夫を、手柄を立てて島を手にいれ、その領主にしてやるという約束のもと、従士として連れていくことにした。ドン・キホーテは路銀をそろえ、甲冑の手直しをして二度目の旅に出た。

やがてドン・キホーテとサンチョは3?40基の風車に出くわした。ドン・キホーテはそれを巨人だと思いこみ、全速力で突撃し、吹き飛ばされて野原を転がった。サンチョの現実的な指摘に対し、ドン・キホーテは自分を妬む魔法使いが、巨人退治の手柄を奪うため巨人を風車に変えてしまったのだと言い張り、なおも旅を続けるのだった…

後篇
遍歴の旅から戻ったドン・キホーテはしばらくラ・マンチャで静養していた。その間目立った奇行も見られなかったのだが、一月ほど後に司祭と床屋が訪れると、やはり狂気は治癒していないことが判明した。そんな中、ドン・キホーテの家にサンソン・カラスコという学士が訪れる。カラスコが言うには、ドン・キホーテの伝記が出版され(すなわち『ドン・キホーテ 前篇』)、広く世の中に出回っているのだという。ドン・キホーテ主従とサンチョは、伝記に書かれた冒険について、また記述の矛盾についてひとしきり語り合うのだった。

やがてドン・キホーテとサンチョは三度目の旅立ちの用意をかため、出発する。ドン・キホーテの姪や家政婦は引き止めようとするが、カラスコはむしろ彼の出発を祝福して送り出した。

旅立ちを果たした主従が最初に向かった先は、エル・トボーソの村であった。ドン・キホーテが三度目の出発にドゥルシネーアの祝福を受けたいと考えたためであった。彼はサンチョに、ドゥルシネーアを呼んでくるように頼むが、サンチョは困惑する。ドゥルシネーアは架空の人物であるし、モデルとなったアルドンサ・ロレンソのこともよくは知らなかったためである。

結局サンチョは、エル・トボーソの街から出てきた三人の田舎女を、ドゥルシネーアと侍女だと言い張ることにした。その結果、ドン・キホーテは田舎娘をドゥルシネーアと見間違えることはなかったが、自分を憎む魔法使いの手によってドゥルシネーアを田舎女の姿に見せる魔法をかけられているものだと考え、彼女らの前にひざまずき、忠誠を誓ったがまったく相手にされなかった。ドン・キホーテは、心の支えであったドゥルシネーアにかくも残酷な魔法がかけられたことを繰り返し嘆いた。

やがて主従は、「鏡の騎士」と名乗る、恋に悩む遍歴の騎士と出会う。ドン・キホーテは鏡の騎士と意気投合し、騎士道についてさかんに語り合うが、鏡の騎士が「かつてドン・キホーテを倒した」と語ったのを聞くと、自らがドン・キホーテであると名乗り、彼の発言を撤回させるために決闘を挑む。鏡の騎士が乗っていたのが駄馬であったため、ドン・キホーテはその隙をついて勝利することができた。落馬した鏡の騎士の兜を取ってみると、正体は学士のサンソン・カラスコであった。彼は騎士道にのっとった一騎打ちで勝利して、ドン・キホーテをラ・マンチャに連れ戻して静養させようとしていたのであるが、彼の試みはこうして失敗に終わったのだった。

やがて、ドン・キホーテ一行のところに国王への献上品のライオンをのせた馬車が通りがかり、これを冒険とみたドン・キホーテは、ライオン使いに対して、ライオンと決闘したいと願い出る。その場にいたものすべてがドン・キホーテを止めようとするが、ドン・キホーテは聞き耳を持たず、さかんにライオン使いを脅すので、やむなくライオン使いは檻の鉄柵を開け放つ。何度もライオンを大声で挑発するドン・キホーテだが、ライオンはドン・キホーテを相手にせずに寝ころんだままだったので、ドン・キホーテは不戦勝だとして納得し、これから二つ名を「ライオンの騎士」とあらためることにした。

やがて主従は、立ち寄った先でカマーチョという富豪の結婚式に居合わせる。カマーチョは金にものを言わせてキテリアという女性と結婚しようとしていたが、結婚式の場にキテリアの恋人であるバシリオが現れ、狂言自殺をしてキテリアとカマーチョの婚姻を破棄させる。その場にいた大勢の客がもめて大騒ぎになろうとしたところを、ドン・キホーテが仲裁に入り、事なきを得た。バシリオとキテリアはドン・キホーテに感謝し、彼を住まいに招いた。彼はそこに三日滞在したが、その間に二人に思慮深い二三の助言を残した。

なおも旅を続けた二人は、鷹狩りの一団の中にいた公爵夫人に出会う。彼女はドン・キホーテとサンチョを見るやいなや、すぐに自分の城に招待した。というのも、公爵も夫人も『ドン・キホーテ』前篇をすでに読んでおり、ひとつこの滑稽な主従をからかってやろうと思ったからである。そんな企みには全く気づかないドン・キホーテは、公爵夫妻の城きわめて壮大な歓待を受け、その日はじめて、自分が空想上の騎士ではなくて正真正銘の遍歴の騎士であることを認め、確信したのだったが……。