三月さんお入りなさい | mitosyaのブログ

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個人誌「未踏」の紹介

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 なんて柔らかに毛虫は歩くことか―――私の手の上の一匹―――こんなベルベットの世界からお前は来たのか―――こんなビロードの肌を意のままに持つのか―――

 一人になって、時間の中に立ち止まってみると、あらゆるものが、神秘と不思議に満ちてくる―――貴女はその一つ一つに包まれるように、話しかけるように詠っています―――石だって、人が加工した物にだって、存在そのものは、いつもスポットライトをあてられたように浮かび上がっているもの、こんな宇宙の塵の世界からお前は来たの、偏光顕微鏡の下の、こんな虹の世界がお前だったのと―――理由や、仕組みをいくら知らされたからといって、神秘と不思議は消えることがない。それは、生命の飛躍、生命の集約。

 三月さんお入りなさい!―――なんて嬉しいことでしょうか―――お待ちしていたのですよ―――さあ帽子を脱いで―――きっと歩いていらっしゃったのね―――すっかり息を切らしたりして―――三月さんご機嫌いかが そして他のみなさんはお元気?―――

 エミリー、一月、二月と貴女と語ってきて、いま三月となりました。私も三月さんお入りなさいという気分です。そして、貴女も言っている、人が神様に出会う季節、木々の芽はふくらみ、風は南の匂いを漂わせ、鳥たちはもうはしゃぎまわっています。春の貴女があそこに、ここに見つかります。死と孤独の部屋から眺めた貴女の自然―――それは憧れ、天国―――いま私はその天国に住んでいます。天国の中でも一番素晴らしい所、三月という季節に生きています。