ゆきえちゃんのこと | mitosyaのブログ

mitosyaのブログ

個人誌「未踏」の紹介

ゆきえちゃんのこと

よっちゃんは近ごろ毎日がつまんなくなっていた。一、二年の頃はみんなで良く遊んでいたのに、最近は、みんなピアノとか塾とかに通い出し、学校が終わっても遊ぶ友達がいなかった。学校でも勉強が出来る子と、そうでない子と何か壁が出来たようで、昔のようには心が通じなくなっていた。特に乱暴な子はよっちゃんにも平気で「馬鹿」とか「間抜け」とか言って知らぬ顔をしている。
よっちゃんは自分では少しも手が遅いとも、話が下手だとも思っていなかったが、お母さんが言うには、三月生まれの子は、「他の子と一年違うこともあるからね」と、いつか言っていたから、やっぱり自分は遅いのかなとも思った。足の速い子、頭のよい子は自分よりいっぱいいた。でも、昔はみんなそんなことで威張ったりなんかしなかったのにと思った。
そんなある日のことだった。幸恵ちゃんという特殊学級の子が給食の時間だけ、よっちゃんたちのクラスにやってきていたが、いつものようにみんなにからかわれていた。
「ゆきえ、ほらこっちこっち」と筆箱を取り上げたり、「間抜け」とか「馬鹿」とか、押したり、叩かれたりしていた。幸恵ちゃんもいつものように、笑っているばかりで、みんなに遊んでもらっていると思って気にしてる様子はなかったが、よっちゃんは自分がからかわれているような嫌な気分になった。それでクラス会で言ったのだった。
「ゆきえちゃんをみんな馬鹿にしたり、からかったりしているけれど、そういうことは良いことではないと思う」
よっちゃんはゆきえちゃんののんびりとしたところが好きだったし、みんなゆきえちゃんのことを嫌っているわけではなかったが、どこかで差別しているように思った。頭の良い子と、そうでない子、力のある子と、ない子、何をやっても遅いし、出来ないゆきえちゃんは、いつもクラスではお荷物。でも、よっちゃんにはとても慰めだった。人のことなど気にしないゆきえちゃんがうらやましかった。ゆきえちゃんが困っていると良く助けてやった。
 クラス会ではいろんな意見が出た。
良くないとは思ってもついからかってしまう。
差別したり、嫌ってしているのではない。
何で人は差別すのだろうか。