劇団 第三舞台の看板でもあり、そしてまちがいなく20世紀を代表する日本戯曲のひとつである「朝日のような夕日をつれて」が18年振りに帰って来ました。それも鴻上尚史さんの演出で。


それ自体が事件なのですが、今回改めて「朝日のような夕日をつれて」を観て、いかに鴻上さんの作品が時代の三歩先を進んでいたのかがよくわかりました。

スマートホン、ネット掲示板、SNS、などなど、今、僕らが日常としている「生活」は、18年前には存在の萌芽すらなかったはずなのに、次々に世の中のヒット商品となっていきました。そして、流行から日常になり、生活になり、そしてその先は?


今回予言されたのは、「あらゆるデータから分析された、自分が嫌なものを完璧に排除した、完璧に自分に理想の世界を体験できるバーチャルリアリティ」。


ひょっとしたら、それは数年後には日常になり、生活になっているかもしれません。そして、僕らは幸福でしょうか?


また、数年後に、お会いしたいです。立花トーイの皆さま。

企画制作 梅田芸術劇場

ですが公演自体は東京芸術劇場プレイハウスのほうが回数が多かった、という演目です。


アメリカ出身の、様々なバックグラウンドを持ちながら、見事に統一感の取れたチーム BAD BOYS。

そこに、今回「メンバー」として大貫勇輔さんが加わりました。


大貫さんは「マシュー・ボーンのドリアン・グレイ」JPバージョンで以前に拝見したのですが、とにかく美しいダンサーです。最近ではダンサーだけではなくミュージカル「ピーターパン」のフック船長役など、役者としても活動されています。


でも、観に行く前は不安だったんですよ。どうしたって日本人は小柄になりがちだしベビーフェイスに見られがちだし。


ところがところが、180cmの長身、類稀なる技術、そしておそらくは非常に優れたコミュニケーション能力、そのすべてで、「BAD BOYS」の顔として、とても素敵なパフォーマンスになっておりました。

バランスのとれた、とてもいいチームで、今回もまたアメリカが羨ましくなりました。


また観たいです。再演でも新作でも。

またずいぶん日が空いてしまいました。これからはせめて月イチで更新できるように。。。


8月15日から31日まで青山劇場で上演されました舞台「ガラスの仮面」からHorizontal Stripes再開です。

演劇をモチーフにした原作・美内すずえさんの漫画は連載38年にして未完という、超大作です。

主役・北島マヤは天才少女、そのライバル・姫川亜弓は親の七光りと呼ばれるのが悔しくて常人には無理な努力を自らに課し、この2人が幻の名作「紅天女」の主人公役の座を巡って闘うというのが大枠で、劇中劇が多数出てくる、そんなストーリーです。


これを舞台化するわけなので、出演したすべての役者さんが並々ならぬプレッシャーを受けていたであろうことは容易に想像できます。


まず、原作ファンがいます。

連載当初から読んでいる人が多数います。(でなければ商業雑誌で連載は続きません。)

その人たちを納得させられる演技ができますか? というのが最初のハードル。


そして、漫画と演劇では当然ながら「文法」が違いますので、その差を超えられるか、というのが第二のハードル。


まだハードルはあります。誰かひとりでも演技水準が落ちると芝居全体が崩壊します。北島マヤの幼なじみで淡い恋心を抱く青年俳優、桜小路優を演じたのは関西ジャニーズJr.からただひとり送り込まれた浜中文一さん。関西弁とダンスという武器を封じられて、役者として勝負する、その作品がこういう想像もできないプレッシャーがかかった芝居。


ですが、僕が観に行った公演最初の日曜日、誰ひとりとして足を引っ張る人はいませんでした。


ジャニーズウェブという携帯サイト(有料)がありまして、浜中さんの短期集中連載があったのですが、公演中は自信たっぷりな様子だったのが、千秋楽の翌々日に、本音がぽろり。


「初めて足が震えた」「劣等感」


いやいや、凄かったですよ。充分に将来を嘱望される役者さんですよ。


まあ、それだけ役者さんにとって酷な舞台だったのですが、皆さん見事に舞台芸術を作り上げていました。


またこの座組で続編を観たいと思いました。


紫のバラの人は小西遼生さん。この芝居で一番難しい役を、軽々とやってのけてました、あっぱれ。