研修医が誤診してしまうのは、あまりあってはならないと思うが“ありうる”事ではあると思う。しかし、憶測で偏った診方をするのはどうか。


この記事を書くにあたり、私には転換性障害(失立失歩)がかつてあったことを前置きしておく。


一昨昨日の夜8時過ぎ、自宅アパートで体を洗い、シャワーで泡を洗い流そうと椅子からちょっと腰を上げた直後、腰に激痛が走った。「あっ!」と小さく叫んで、立とうとするも下半身に力が入らず直立できない。

これがぎっくり腰というやつなのか? 前後屈もできない。ぎっくりなら明日仕事に行けない。

時間外でもいい。診断を下してもらって注射でも打ってもらわなければとクルマを県立総合医療センターに走らせた。松葉杖を突き、急患入り口で受付をした。対応した救急医は20代後半~30第前半といったところ。風貌は大学出たてのような感じだが、しゃべりは落ち着いている。

私「きょうの午後7時半過ぎから左胸が苦しくなり、ご飯中も息苦しさを感じていました。それは30分ほどで収まり、8時過ぎごろ、風呂でシャワーノズルを取ろうと少し腰を浮かせた瞬間にギクッときました」

看護師に心電図を指示し、波形をみて異常のないことが分かったとみえて、「Mさん立てますか?まっすぐ立ってみてください」と指示してきた。つかまり立ちでようやく立ちるが、すぐにヨロヨロと崩れてしまう。当然腰の痛みは変わりない。失立失歩では腰の痛みはない。直立はできるが前後に歩くことができないだけである。


医師「クルマで来られたんですよね。松葉杖では歩けるんですよね」

しばらく考え、私に幾度か立ち座りを指示し、

医師「Mさん、頑張ってください。Mさんは立てますから!大丈夫です立てます!」

と続ける。しばらく繰り返し立てないことが分かると

医師「転換性障害の他に、最近なにかありましたか?」

私「たまに過呼吸になることはあります」


また考え、ちょっと来てください、とベッドサイドからカーテンで仕切られた診察室に移され、カルテになにやら書きとどめ始めた。


“本人は自分では立てないことをアピールしている”

目を疑った。この医師は転換性障害を前提に誤診している。アピールしている、ではなく、何らかの原因で直立することができない、と書くべきではないのか。たとえ自分の専門外だとしても、患者の文言だけで「この患者は転換性障害により立つことができない」とするのはあまりにも早計だと思う。

医師「Mさん、いまMさんに起こっている問題というのは治療がすごく難しいんです。いまかかられている(精神科の)主治医と相談して、お手紙(紹介状)を持っていらしてください。ここは夜間救急なので何もしてあげることができない。」

私は開いた口がふさがらず、かかったお金を払い病院を後にした。

翌日あまりにも痛みが続くため、かかり付けの整形外科を受診。レントゲンで骨に異常のないことを確認し、腰椎捻挫(ぎっくり腰)との診断。痛み止めと胃薬、それから簡易コルセットで3~4日は観念してじっとしておくように、とのこと。この診断から2日経つが、ようやく横歩きぐらいはできるようになってきた。結果的にぎっくり腰だったわけだ。

救急医はそれなりに経験を積んでいるはずで、それでも誤診が避けられない時もあるだろう。しかしろくに検査もせずに「この人はこういう前科がある人だから」というような診方は、かえって患者からの信用を落とすのではないか。患者の一人や二人からの信頼など、毎日大量の患者を捌く立場からすればゴミみたいなものだろうが、この医師がそういったやり方で人を判断しているのだと思うと、私は不信感を持たざるをえないのだ。