ふぉるくろーれ夜話/mitaquenaのブログ 

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仕事をリタイアしてから始めたケーナの演奏をきっかけに、思い出したり思いついたりした、主にフォルクローレに関するよしなしごとを綴ります。

さて、いったい誰得なのか良く分からないこのシリーズ、前回は、いつも通りグチまじりの冗長な前口上と、「ヘビロテアルバム」の定義と、最後に私の「ヘビロテ」/「スルメ」アルバムリストをダーッと羅列しただけで終わってしまった。

 

前回記事公開後、さていったい、この広げた大風呂敷をどうやって畳めばいいのか…?、私も悩んだ。

全アルバムに「埋もれた名盤」シリーズのような熱量で紹介文を書こうとすれば、途方もないエネルギーと時間と読者の忍耐を要する。

よって、本シリーズでは、「私のヘビロテアルバム」リストを適宜グルーピングし、その中で、各アルバムに短文紹介と(該当あれば)音源リンク先を示すことで、読者の便宜を図りたいと思う。

よかった、これで事態収拾への糸口がつかめそうだ。

 

で、そうなると、どうグループ分けするかだが、前回最後に示した自分の「ヘビロテ」アルバムリストを改めて見返したところ、おおよそ以下のように大別できるかな、と考えるに至った。

 

(1)癒し系

(2)バラエティー系(軽め)

(3)バラエティー系(重め)※「バラエティー系」の意味や「軽め/重め」の区別は、次回以降説明します。

(4)地域色強い系、その他(ソロ演奏家など)

 

うん、実際これまで、だいたい、こんな分類で、アルバムを選んで再生していた。私にとって、実態に即した区分と言える。

今回は(1)癒し系の「ヘビロテ」アルバムをご紹介したい。

「癒し系」とは、印象論だが、BGM、聞き流して心地よい一連のアルバム群である。

「音楽は癒しである」と言われ、フォルクローレは一種のヒーリングミュージックとして聴かれることも多いが、特に(私にとって)癒し成分高めのアルバムたちを「癒し系」として括ることにする。

 

具体的なラインナップは、以下の通り;

 

~私「ヘビロテ」アルバム(1)癒し系~ 
Urubamba vol.1 ←今回紹介

Los Incas "Un instant d'etrernite" ←今回紹介

Los Incas "Alegria" ←今回紹介

Los Incas "En Concerto" ←今回紹介

Los Incas "El Ultimo” ←今回紹介

Los Yuras "Ukamau orake Bolivia" 

Los Yuras "vol.2"

Los Yuras "Music from the Aymara and Quechua Andean Cultures"

Rumillajta "Lo Mejor"

Rumillajta "Pachacuti"

Chacaltaya ”El Zenit Supremo del Todo Es La Nada”

Chacaltaya ”Por Siempre de Los Andes”

Chacaltaya ”Meditation en Los Andes”

Kanata 

Inkuyo "Temple of the Sun"

Inkuyo "Land of the Incas"

Inkuyo "Art from Sacred Landscapes"

※並び順は、前回記事(頻度順)から、話を展開させやすい関連順へ変更している。

 

ここから更にグループごとに小ブロック化して、ご紹介していく。

※なお、最初にお断りさせてください。

私はこれから取り上げるアルバムの演奏家たちについて、必ずしも詳しくはありません。本記事の目的・性格もあり、以下は特に(「埋もれた名盤」シリーズのような)考証は行わずに、記憶ベースで書いております。よって詰めが甘いところや、勘違いをしているところがおそらく含まれておりますこと、予めご了承くださいm(__)m)

 

1.Los IncasとUrubamba

最初に(ってもう最初ではないか💦)本稿の結論を述べると、1973年以前の音源のみでロス・インカスを知っている(例:あー「コンドル」に「岩山の踊り」やろー、知っとる―知っとるー、もうエエわー)という方にこそ、ぜひ「その後のインカス」の素晴らしさを味わって頂きたい

この内省的な音世界は、何物にも代えがたい魅力を有し、その後の多くのボリビアの演奏家たちが、後期インカスに追随した。

本稿で私が言いたいことは、煎じ詰めれば、ただそれだけだ。

 

ロス・インカスについては、今までも、特にホルヘ・ミルチベルグに関し、Ukamauの紹介記事内で、既に少し言及した。

ホルヘ・ミルチベルグほかアルゼンチン出身の演奏家たちのグループで、1960年ごろから欧米で活躍してきた。

彼らの演奏を聴いたサイモンとガーファンクルのポール・サイモンが「コンドルは飛んで行く」を世界的にヒットさせた(バックの演奏は当然ロス・インカスが務めた)のはあまりにも有名。

(それまでも「インカの歌姫」イマ・スマック Yma Smac 等はいたけれど)世界中に南米の一地域音楽であるフォルクローレを広めた功績は計り知れない。

 

「コンドルは飛んで行く」のメガヒットにより「インカの哀愁」「インディオの笛」の代表のように扱われて、世界中でアルバムが発売されたため、再編集盤が多く、単なるタイトル違いや曲順違い、ダブりばっかりのアルバムが多数存在するため、コレクター泣かせな存在である。というかここまでになると、コレクターの私でも、初期インカスの音盤を追うのは諦めた。ディスコグラフィーについては、正直、もーよう分からん。。一応公式サイトはあるけれど、1974年以降のアルバムしか掲載されていない。

 

そんなロス・インカスの音楽性に転機が訪れる。1974年米国録音の伝説的名盤「Urubamba」である。このアルバムからハッキリとホルヘ・ミルチベルグの音楽性が変わった(※)。

それまで全般的にアップテンポな演奏だったのが、テンポがゆっくりになり(緩急の緩により比重が置かれるようになり)、チャランゴの激しい掻き鳴らしは消え、曲調が抒情的になり、さらに地域性の表現よりも、「自分たちらしさ」の追求に入っていったように私には感じられる。

 

※もう少しだけ丁寧に追うと、既に1971年のインカスのアルバム「Los Incas 71」から、既にその兆しはあった。

例えばA6のKacharpariなどは、その後のインカス/ウルバンバのアレンジ・曲調に近い。ジャケット表も、後年の「Alegria」に近いテイストを感じさせる。

だが、ここではこれ以上考証には立ち入らない。ご興味おありの方は、下の71年アルバムを実際にお聴き頂きたい。

 

さて、Urubamba自体は、少なくとも当初は、米国展開向けのユニットだったようだが、80年代以降はインカス本体に吸収され、いつしかホルヘの息子のオリビエが加入し、チャランゴ(ホルヘ)、ギターと笛(オリビエ)、笛(フアン・ダレーラほか)、チェロの人、打楽器の人、そして歌の人(ここは女性枠)といった編成に収斂し(当然、電子楽器は使わない。生音をマイクに通すくらい)、さらには楽器を載せた円卓を演奏者が囲んで、椅子に座って演奏する独自スタイルのコンサート形式に落ち着いていった。

2022年にホルヘが亡くなり、現在息子のオリビエが新たな「Urubamba」プロジェクトを進め、Los Incasの公式Facebookによれば、今年5月と6月にオリビエを中心とした新メンバーにより新ウルバンバがコンサートを開催している。

 

…と、グループ紹介を大分駆け足で行ったつもりだが、やっぱり結局、アルバムの話に入る以前に、めちゃくちゃ字数を食ってしまっているが、仕方ない。

つまり、私にとっての「ヘビロテ」アルバム、癒し系は、1974年以降のロス・インカス/ウルバンバだ、という話だ(最初からそれだけ言えば良かったのだろうか…)。

 

で、そんな後期ロス・インカス/ウルバンバから、私の「ヘビロテ」アルバムをいよいよ個別紹介する。

 

 

1-1.Urubamba vol.1(1974年/LPレコード)※以下、発売年は全て公式サイトによる。

まずは、何をさておいても、ともかく聴いてほしい。

そうそう日本盤も出ていた。

収録時間たった28分だが、「癒し系」を代表するにふさわしい珠玉の名盤だ。

全曲名曲。外れ無し。

特に、A1 Urubamba(ウルバンバの流れ)、A5 El Eco(こだま)は、後続の演奏家がこぞってレパートリーに取り入れた。

ケーナは、ウニャ・ラモスとホルヘ・クンボの二枚看板に、チャランゴのホルヘ・ミルチベルグ。

この取り合わせが聴けるのは本譜のみのはず。

 

ディスコ情報はこちら

Urubamba - Urubamba | Releases | Discogs

ジャケット違いも存在する(1981年再発盤)が、中身は全く一緒(のはず。油断ならない💦)。

Urubamba – Urubamba (1981, Los Angeles Pressing, No Barcode, Vinyl) - Discogs

 

さらに、A1「ウルバンバの流れ」を切り出したこの約2分の動画が、貴重な写真等満載で興味深い。

 

 

1-2.Los Incas "Un instant d'etrernite"(1982年※/CD)※公式サイト情報。Discogsでは1986年、87年。

https://music.amazon.co.jp/albums/B08CMTW42N?marketplaceId=A1VC38T7YXB528&musicTerritory=JP&ref=dm_sh_VBs1SRphiIegkPtUOTtNsHui1

ロス・インカス「永遠の一瞬(※)」と名付けられたCDアルバム。

※正確には下記元盤のスペイン語タイトル(収録曲から名付けられた)と同じ「無限のひとかけら」が正しいと思いますが、高校時代に自分で勝手に訳した「永遠の一瞬」が捨てがたく、そんな個人的な感傷から、そのまま残しておきます。

最大の売り物は、新バージョンの「コンドルは飛んで行く」の演奏を収録していることだが、正直そんなことはどうでもよく(^^;)、冒頭曲「Bolero Op.7」から最終曲「Sikuris」まで、一切のたるみがなく、心地よい音世界が展開する点が素晴らしく、他に類を見ない、完成度の高いアルバムに仕上がっている。

本当に疲れている時は、私はたいていこれを聴く。

本譜だけはどんなに疲弊していても、スッと身体に入ってしみわたる。

 

――が、実は何とこれ、Urubambaの二枚目のセルフ・コピーというか、編集再発盤だったのだ!!

元盤Urubamba「Un Pedazo de Infinito(無限のひとかけら)」(1982年/LPレコード)はこちら。

一部、別テイクもしくはリマスタリングのようだが、基本、グループ名とアルバムタイトルと曲順以外、中身一緒ww

冒頭A1に「コンドルは飛んで行く」の新バージョンを配している。まあご本家がこんなオシャレなアレンジを施したってのは、確かに売りにしたくなるのも分かるけどね。

それにしても、エ―、あれだけ曲順褒めたのに~~、再発かつ再編集盤だっただなんて、やられてもーたわー( ノД`)シクシク…

当時、なーんも知らんかったら、二枚買わされるとこやで~ホンマ勘弁してーなー。

こういうことを平気でシレっとやってのけるので、ロス・インカスは安心できない

でも、いずれも名盤であることは間違いない。

 

ディスコ情報はこちら;

Urubamba "Un Pedazo de Infinito"

Urubamba - Un Pedazo De Infinito | Releases | Discogs

Los Incas "Un instant d'etrernite"

Un instant d’éternité – Musavida

 

 

1-3.Los Incas "Alegria"(1988年/CD)

後期インカスで、もっとも賑やかな(可愛らしい)佳品

先の「永遠の一瞬」よりもだいぶ持ち直しているが、もう少し元気が欲しい状態のとき、良く聴く。

Urubambaからの流れで、ギターはエミリオ・アルテアーガ、笛はホルヘ・クンボにフアン・ダレーラ(ロス・チャスキスのロドルフォ・ダレーラの弟)、さらに本譜では何とボリビア・マンタのカルロス・アルゲダスとフリオ・アルゲダスが参加していて、ビックリ!

しかし、別に本格的なアウトクトナの演奏をするわけではない。7曲目に「プティーニャの泉」が入っているが、別にチャラサニの本格カントゥを演奏するわけではなく、アウトクトナ風だが、まるでリズムが違う、何か並行世界のカントゥというか、どこかにありそうで、どこのものでもない演奏を繰り広げている。たぶん意図的にそう演っている

他にもペルーの曲(ムナワンキ)の新バージョンも入っているが、これも全くペルーの山岳音楽らしく演っていない。

この「どこかにありそうで、どこにもない幻想のアンデス」音楽をあっさり構築している(そしてインカスの中でも本譜だけの音世界である)点が大変興味深い。

ふつう、こういうアンデス音楽の無国籍化は(たとえに出して申し訳ないけれど、出稼ぎストリート・ミュージシャンの演奏のように)根無し草になりがちで、聴いていて正直気持ち悪くなるのが常なのだが、本譜は、唯一無二のオリジナリティにまで昇華されており、心地よい。

 

ディスコ情報はこちら;

Alegria – Musavida

 

 

1-4.Los Incas "En Concert"(2000年/CD)

※なぜかYouTubeのプレイリストを上手く貼り付けられないため、1曲目を載せています。続けてお聴きになりたい方は、下のディスコ情報を参考の上、お手数ですが、関連動画等を追って原盤の順番で聴いてみて下さい。

1999年のライブ録音。音や曲的には特に付言することはない。全16曲、たしか70分くらい収録されているので、遠くへ電車に乗って出かけるときに重宝している。

1974年以降のアルバムのレパートリーをライブで演奏している、というだけと言えばそれだけ。でもそれが、しみじみとイイ。

あと、ライブがカッコイイ! 前述したような、楽器を載せた円卓を演者が囲んで座って演奏する形態がこの頃までに完成しているのが確認できる。あと、ホルヘ・ミルチベルグの頭頂のテカテカ具合もこの時期までに完成を見た(^^;)

 

まあ、それはいいとして、他の音源を色々聴いても、私個人的には、本譜が録音された1999年頃のインカスのライブ演奏が最も完成度が高い気がする。

同じ1999年のライブの様子を収めたこの動画も素晴らしい。

お客さんたちが静かに目を閉じて聴き入っている。

こういう内向的・内省的な音楽性は、偏見かもしれないが、あまり本場では(日本でも)流行らず、むしろフランス等で受け入れられている気がする。

 

ディスコ情報;

Los Incas en concert – Musavida

 

この後のロス・インカスは、私の印象としては、大きな革新・変化は生ぜず、安定飛行に入る。

なので、YouTube時代となった今となっては本譜に代えて、例えば下の2013年のライブ動画でもいいのだが、私はあいかわらず飽きることなく本譜を繰り返し聴いている。

 

 

1-5.Los Incas "El Último”(2002年/CD)

※なぜかYouTubeのプレイリストを上手く貼り付けられないため、1曲目を載せています。続けてお聴きになりたい方は、下のディスコ情報を参考の上、お手数ですが、関連動画等を追って原盤の順番で聴いてみて下さい。

 

「El Último」は、直訳すれば「究極の、最新の、最後の」くらいの意味だが、現時点で本譜が、全曲スタジオ録音した最新にして最後のアルバムとなる。

直前の「En Concert」と同様全16曲の長尺なので、長旅のお供に最適。旅行の時は、たいてい今回挙げた5枚のアルバムをつなげて聴いている。

本譜で特筆すべきは、CDアルバムジャケットだろう。デジパック仕様というのか、紙製ジャケットでデザインワークがとても美しい。私が持っているのは初回限定版だったのか、固有番号も刻印されている。

 

なお、この後2012年に「Salvadors del Olvido 忘却からの救い手たち(?)」というアルバムを出しているが、これはライブとスタジオ録音のパッチワークで、アルバムとしての統一感・クオリティにおいて、「ヘビロテ」アルバムたちにやや劣後する。

 

ディスコ情報;

El Ultimo – Musavida

 

 

――以上、まだ「ヘビロテ」アルバムの最初の類型である「癒し系」のグループ1つ、アルバム5枚しか紹介できなかったが、文字数が既に6千字を優に超えた。エネルギーもかなり使ったので、ここで一区切りとして、次回は、「癒し系」の続き――まさに後期インカスに影響を受けたボリビアのコンフントたちが遺した名盤の紹介――と行きたい。

 

で、1回で5枚しか紹介できなかったが、これ、いったい、何回で終わらせられるんだろう?

まあ、のんびりとお付き合い頂けましたら幸いですm(__)m■