中学生の時に、十二指腸潰瘍で2回、入院した。


以来、実に30代半ばすぎまで、ずっと爆弾を
お腹に抱えて生きてきた。


潰瘍というのは、胃壁の内側に胃酸が触れて痛むのである。
傷口に塩酸をかけられているのと同じだ。

胃も、蛋白質だから実は胃酸で溶けてしまう。

しかしなぜ、ステーキ食べても胃が溶けないかというと
胃の内側を粘膜で守っているからである。

何らかの理由でこの粘膜が壊れることで
潰瘍になる。


多くは精神的ストレスだということになっていた。
私が入院したときは特にそうだった。

で、社会人になってから、しばしば、潰瘍は
再発して、その度に、病院に駆け込んで
薬を処方してもらって、ごまかしてきたのだった。


転機がきたのは、岡山のある先生に診ていただいたとき。

「最近はいい薬があるから、潰瘍はすぐに治りますよ。
ピロリ菌が原因のことが多いんです。
血液検査をすれば、すぐにわかりますよ。」


…と、検査を勧められ、結果を聞くと。
「いましたよ。ちゃんと。抗生物質を出しますから
しばらく飲んで下さい。よくききますよ。

おかげで私らの商売、上がったり(笑)
ま、おだいじに。」


ということで、実に25年もの間、悩まされた
潰瘍に、2週間で、おさらばしたのだ。


あんまりあっけなく治ったので、
思わず、再発しないかと、先生に電話したのだ。

そしたら、まぁ、大丈夫でしょう、と
おっしゃって、一つだけ、注意事項を告げられた。

「ナマモノはね、気をつけてね。
魚の刺身はイイです、2親等離れてますから。

哺乳類の生ものはやめてね。
また菌に感染するかもしれないからね。

馬刺とか、生レバー、ユッケはだめですよ。
再発する可能性がありますから。」


…以来、生ものはほとんどやめている。
数年前に、一度だけ、美味しいと評判のお店に案内され、
「ここの生レバーは本当に美味しいんです、新鮮だし。
一切れだけ、味見して下さい。」と

とあるお客さまに懇願され(苦笑)、
一度だけ、禁を破ったことがある。

しかし、


それ以外、生肉というものは食したことはない。

25年も苛まれた、ピロリ菌の怖さを知っているからである。