『MissDior』~優しさにつつまれて~

『MissDior』~優しさにつつまれて~

彼に初めてプレゼントされたのはDiorの香水。
~Miss Dior~
優しい香りと共に、二人の love story が始まった。

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飲み物を買って、車に戻った。


沈黙が続く…


暫くして、先生が、


「家庭がね…仕事に障りがあるくらいゴタゴタしててね…」


ゆっくりと話し始めた。


「結婚して10年になるんだけど、1日として幸せだな~と感じた日が無いんだ。」


結婚の経緯と現状は、以前に先輩から聞いた内容の通りだった。


大学の同級生と同窓会で再会。離婚して間もない彼女の相談にのっているうちに、一人息子になつかれた。親に大反対されたが半ば同情心で結婚。それなりに幸せな家庭を想像していたが、安定した生活が約束されたとたん、奥さんから優しさは消え、先生の監視とお金の管理が始まった。カードの使い道や携帯のチェックなど、家に居ても気の休まる時間など無かった。もちろん、愛情など感じられなかった。ただ、子供との関係は良かったので我慢していたが、大学生になり下宿し始めたのを機に別居。嫌みを言われながらも、別居生活が落ち着いてきた頃、息子が二十歳になった。先生から離婚を申し出たのと同時に、息子の実の父親が自分の経営する会社を継がせたいと連絡してきた。再婚はしたものの、子供には恵まれず、後継ぎは長男しかいない。母親は離婚話と、息子を取られてしまうのではないかという恐怖心から精神が不安定になり、昼夜を問わず電話で猛攻撃してくる。


(研究室にかかってた電話、奥さんだったんだ…)


息子は離婚後も定期的に父親と会っていて、関係は良好。跡継ぎの件も乗り気だと言う。


「息子も離婚することに納得してくれててね、自分の為に辛抱してくれてたんでしょ?離婚してもお父さんは俺のお父さんだよね?今までありがとうって逆に感謝されちゃったよ。」


先生は寂しそうに笑った。