If a bullet should enter my brain,
let it destroy every closet door.
Without a hope, a life is not worth living.

`closet`というのは、ゲイであることを周囲に隠していることの比喩で、カミングアウトのことを Coming out from the closetというんだよ。

ゲイの中にも、もちろん性的に淡泊であったり、恥じらいの強い人はいるはずで、なのになぜストレートはカムアウトの必要がなくて性的マイノリティだけわざわざプライベートな問題である性的指向をカムアウトしなければならないんだろという問題とか、テニスをする人をテニスプレイヤーとは呼ばないのに同性愛行為を一度行った者はたちまち「同性愛者」という問題にも思いを馳せながら、人権までもを奪われる脅威の前に、ミルクの
「10%の我々を90%のストレートの連中に知らしめるためには、カムアウトするしかない」
という言葉に胸を打たれた。
10%、決して小さくないこの数字を、もっと自然で、しかるべき前提としての選択肢にするための、カムアウトは聖なる犠牲なのだ。


ミルクが死の当日、夜明け恋人に電話しながら、
生涯を思い涙するシーンにて、

I don't wanna miss this.
miss what?
this.

とあるのだが、
このthisはなぜ字幕において「この関係を」という訳になるのか不明
猛烈に抗議したい
私だったら少なくとも「この時間を」
「この夜明けを」と訳すると思う

最初、画面に出てくるのがむさくるしいおじさんばかりだったので
正直あまり入り込めず
ゲイが政治的イシューになるアメリカ社会も
ゲイを差別する気なんかさらさらなく、
また比較的同性愛文化に寛容な日本国の自分にとって
リアリティがなく感情移入しづらかったが、
中盤以降それを後悔した。

市会議員になった後の政治的駆け引きが断然面白い。
車いすのゲイの少年からの電話、「救われた」
普通に涙が出たな。

予備知識いろいろ仕入れてからみたほうがいいよ。
特にダン・ホワイトについて。
こういうのとか。


http://oshiete1.goo.ne.jp/qa2401678.html

しなりとした身ぶりと、愛嬌のある目許に、時に厳しさを湛える瞳を、演じ切ったショーン・ペンはもちろん素晴らしいが、徐々にミルクの卓越した政治的手腕に追い詰められていくダン・ホワイトの鬱屈を演じたジョシュ・ブローリンが結構すごくて、一押し。

男同士のラブシーンはリアルだけど下品じゃなくて、きちんと香り高いロマンスとして仕上がってるよ。ミルクが、私生活において情緒豊かで魅力的な人であったことがよく伝わってきた。

それにしても、ゲイの政治家の名前が「ミルク」、彼を暗殺する保守的政治家の名前が「ホワイト」、

なんてキャッチ―なんでしょう。





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●聖フランツ 
主人公は「少年」とそっくりな聖フランツ=美少年まつり。
画面のほとんどが美少年にて目の保養。
心まで清廉なフランツと、今回は悪魔役に徹し憎悪と嘲笑に顔をゆがめる少年、

双方の表情がそれぞれに美しい。


傑作だし、間違いなく良い話だが、あえて気になる点を挙げると、

「理由を問うてはいけない 信じるとはそういうこと」とのモノローグと、

「本当は神様を信じてたんじゃない!みんなの期待に応えて神を信じる自分を演じていただけなんだ!」

との告白が、矛盾して見え、どちらが本当?と思ってしまった。

あの告白の時点でフランツは初めて自己を乗り越え、真の信仰にたどりついたという解釈でいいのだろうか?
その後、フランツがリーザとふたりで、旅に出たのが、

逃避行か、贖罪の旅かというところも不明で、いまいち腑に落ちない。


リーザは、自由を愛する魅力的で、芯の強い女性であるが、

淫乱だというのもやはり確かなことなのだから、

巡礼の旅で素直にフランツにつき従ったところも納得がいかなかった。


しかし、やはり絵というか構図が圧倒的にうまい。
数あるメディアの中で漫画にしかできないことを正しく行っているという評価は下がらない。

少年の手から噴き出す炎に民衆が逃げ惑う中、

ひとりまどわされず笑みをたたえ炎の中にすっくと立つフランツの表情などは、白眉。

老いさらばえたフランツが、自分の町に自分を祀った聖堂が立っており、

気づくとそこに腰かけていたことに驚くという、ラストのコマに漂うほのかな滑稽味もよい。 



●マリー・ロンドン 
少年が、あえて気まぐれで移り気な、天使と悪魔の両面を併せ持つ存在と描かれているのが

この漫画のよい点なのだが、

そんな少年が一貫して持ち続けているのは「芸術への賛美の心」。

これは作者のアーティストとしての、各分野の才能へのまっすぐな賛辞だろうと思われ、快い。

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当然のようだが、人はプロットだけでは感動しない。
たとえば、第一話を簡単にまとめると、
「少年は祖父が人殺しで成り上がったことを知りました。でも長じて少年は殺しませんでした。」
なのだが、これだけで感動した人は多分いないだろう。

人が死ぬ、差別に苦しむ、葛藤に打ち勝つ、恋が成就する…
プロットにおけるひとつひとつのメインイベントを、
どれだけ読み手の実存的感情(=実感)にまで落とし込めるかというのは、
それを魅せるインターフェースに当たる部分の技術と手腕が多分にものをいうところで、
それが演劇なら、「役者の演技の巧さ」、
小説なら、「文体の巧みさ」、
映画やTVドラマなら「セットのよさとカメラワーク」、
そして漫画は、「絵の巧さ」ひいては「構図の妙」といったところになる。

そういった意味においてこの漫画には最大の賛辞が送られるべき!
絵がうまい!というか構図がもうとってもうまい。
卓越した構図とアングルのおかげで、
プロット上のイベントの劇的さが最大限に引き出され、
陰惨な殺しは胸をえぐり、
晴れやかな歓喜は涙を誘い、
計算された余白が溜息を引き出す。

細分化が止まらない数あるメディア、表現技法の中で、
「漫画にしかできない」「漫画でこそするべき」ことを正しく行っているのだと思わせる。

「不思議な少年」シリーズは、手塚治虫「火の鳥」と比されることが多いようだが、
絵だけ取ればこちらの完勝である、と思う。

第一話「万作と猶治郎」が珠玉。
処女作・第一作には、その作家が今後描き出すすべての要素が詰まっているというが、
この第一作もその例に洩れず、
「呪われた血」のイメージ、
「敗戦」のイメージ、
「水を渡る童子」のイメージ、
「笛の音」のイメージ、
「兄弟の確執」のイメージ、
さまざまなモチーフが一挙にこめられていて、濃厚、濃厚、お腹いっぱい。
こんな第一話が一番のお気に入りです。

第二話「エミリーとシャーロット」は、自分が演出上で表現したいテーマと重なった。

第三話「狐目の寅吉」ちょっと、
大人なら殺していいっていうのが自分的に引っ掛かったけど、構図最高にイイです


ちなみに、第一巻で少年のデフォルトの表情は、
常に含み笑いをしたような笑い目だったのですが、
二巻以降普通の人間のように葛藤する存在として設定が変わっていったのか、
素の表情になっていきます。
私としては、神秘性があって含み笑いデフォルトのほうが好きだった。


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