母のこと。
数日前も電話掛かってきた。
「このままきみちゃんが
夫のところに戻ってしまうんじゃないかと
不安になって
夜寝られへん」
そんなん言われたら、
またまた母の日方にぐぐぐぐーーーっと引き戻されてしまう。
そして
大好きな母にそんな思いをさせてしまった、と
罪悪感でいっぱいになり、
泣きそうにもなって、
思わず
「そんなことないから!!」
って言うてしまった。
お母さんを悲しませたくなかったから。
またまた自分の選択よりも
自分の幸せよりも
自分がどうしたいかよりも
母を守ること
母の気持ちを尊重することを優先してしまった。
……小さいきみちゃんの本当の気持ち、
ちっとも大事に出来てない。
ちっとも優先出来てない。
今日もまた。
夫のところに帰るんじゃないかという不安を打ち明けられ、
罪悪感を揺さぶられる。
そして、
「この家に何で住んでくれへんの?」
「この家が無くなることを考えたら
悲しくてたまらなくなる」
「何がイヤやの?
全然住みにくくないで?!」
「名前は、旧姓に戻ってくれへんのか?」
…………(T_T)
実家の近所はややこしい人が多くて、
子どもの頃から、いつも言動を見張られ、
本当にイヤだった。
すぐに噂話をされて
顔を見て、コソコソと話されてた。
同級生母だったこともあり、
ないことないことを
先生に報告されたりしてた。
本当に
この環境が嫌いだった。
だから、
あの人たちが生きている限りは
あの家には住みたくない。
それよりもそれよりも。
あの家で過ごした地獄のような日々。
あの家の中でどれほどの恐怖を感じ、
凄まじい緊張感の中でずっと身体を強ばらせて
様子を伺って生きてきた日々。
真夜中に獣が吠えるような叫び声、
糞尿垂れ流しの部屋、
痰も部屋中に吐きまくられ。
怖いの感情は凍らせてしまってた。
怖いって感じてしまったら、
精神が耐えられなかったから。
母が風呂に入ってても
酔っ払った父が風呂場のガラスを割って
母、血まみれ。
酔って2階に上がってきて
踊り場に火のついた新聞紙をぽいと投げて
家に火をつけようとした父。
寝ていても
いつ、何が起こるか分からないから
しっかり熟睡することが出来なくて、
夜中でも
「きみちゃんー、助けてー!!」
って母は私に助けを求めるから、
大好きな母を、アル中の父から守るため、
飛び起きて、下に降りていって
母を殴ろうとする父の前に立ちはだかって
母の盾になってた。
学校に行けなくなった時には
「そんな恥さらしなことをするんやったら、
ころ してやる」
と言われてて、
父の足音が聞こえる度に
ビクッと目を覚ましていた。
父が死ぬまで
あの家で深く呼吸をしたことはなかった。
ずーっと息を殺して、
いつでも身を守れるように、
お金を父に取られないように
(お金がお酒に変わるから)
全神経を研ぎ澄ませて生きてきた。
気を抜いたら
死んでしまうかもしれなかったから。
そんな家なのに。
なんで
「こんなに過ごしやすいのに」
なんて言葉が吐けるんだろう、母は。
母は
お父さんに酷い目に合わされた、
あんたらは子どもやから、
手もあげられへんかったやろ?
私だけが大変な目にあってた
みたいなことを言うけど、
お父さんにお母さんが殴られそうになった時に
盾になってお母さんの前に立ちはだかって
お母さんを守ったのは
私やで。
お母さんが私たちを守ってくれたんちゃうやん?!
それどころか
自分だけ父の暴力から逃げるために
私と妹を荒れ狂う父の元に残して逃げていったやん?!
なんで、
私と妹を一緒に連れて逃げてくれへんかったん?!
むちゃくちゃ怖かったんやで!!
お母さんが妹のこと、守ってやってやって言うたから、
私、怖かったけど
怖かったことを感じないようにして
ちゃんと妹を守ったよ。
お父さん、
私の財布からもお金を盗んで
お酒を買いに行くから、
カバンを肌身離さず家中持って歩いたよ。
それなのに、
大急ぎで入ったお風呂の最中に 10000円盗まれて、
10000円も取られると
延々と酔っ払った状態が続くねん。
お金無くなるまで飲み続けるから。
もう、人間じゃなかったで。
吠えるし、叫ぶし、
トイレ行かんと
寝転んだまま糞尿垂れ流すし、
ブツブツ怒りながら、痰も部屋中に吐き散らかすし。
部屋の畳は
尿が染み込んで腐ってカビはえるし、
床抜けるし。
もう、ずーっとしっこ臭いし。
でも、怒られるのは私。
「なんでお父さんにお金取られるの!
しばらく、ずーっと酔っ払ったままやん!」
……逆切れ……
こんな家に
なんで住めって言うの?!
父が亡くなった今でも、
あの家にいると落ち着かない。
いつ殺されるかと神経尖らせて暮らしてたし。
怖い、とか感じたら、もう生きていけへんから、
そんな感情はギューッと押さえ込んで
無いものにしてきたし。
お母さんのこと、一生懸命守ってきたけと、
怖かった。
お父さんの暴力の盾になるの、
怖かった。
大好きなお母さん守りたかったから
怖かったなんて感じてなかったけど。
お母さんは
自分だけが酷い目にあったって言うけど、
それやのに
なんでその家にいたいのかな。
私が守ってあげてたから、
怖い、とか忘れてんちゃうの?
私は
あの家にいる限り
怖かった記憶は蘇るよ。
私をあの家に引き戻さないで!!
当然のように
家を継いでくれへんのか?
とか言わんといて!!
ずっとずーっと、そのことで縛られてきた。
この家の因縁を抱えるのがイヤで、
長男と結婚しようと思った。
実家を継がなくてもいいように。
こんな地獄のような日々を過ごさせておいて、
なんでまた、
この家に戻って来ないのかとか
この家を継いでくれへんのかとか
そんなことが言えるのかなぁ。
お母さん、自分のことばっかりで
ちっとも私の気持ち、分かってないよね?!
よくもまあ、
こんなに苦しめた場所に帰ってこないのかなんて聞けるよね?!
家を継げってのも、
しょーもない宗教の影響。
それもイヤで辞めたのに
何故、またそこを縛り付けてくるかな?!
なんで自分の不安ばっかりぶちまけて、
私の気持ちはどうでもいい扱いをしてくるかな?!
怒りと悲しみと無力感。
ぐったり。
娘の幸せよりも
自分の不安を取り除くことの方が大事なのかな。
……まるで、私やな……