美しい写真は人を引きつける。クッキングブックもその例に漏れず。見事な料理が見事に撮られた写真に引きつけられて思わず買ってしまう癖がある。いろんな材料の素材と味が、姿を変え、味を変えて絶妙にハーモニーされた料理が色美しくお皿に盛られると芸術品と化する。欧米にはカリナリーアート(culinary art) 料理芸術という言葉があるけれど冴えた料理人はアーテイストである。
美味しそうな料理を見ながら一気にレセピーを読む。手元に材料があれば、その写真につられて、その日の夕食となる。材料がなかれば、そのまま閉じられて本棚にもどる。多すぎるクッキングブックの中から再び選ばれるのは何時の日かわからない。私の本の運命である。
クッキングブックはシーズン毎にちょっと目新しいものを求めて買ってしまう洋服のようなものだ。毎年洋服ダンスに増え続け、一、二年は手を通すことはあっても、そのあとはすっかり忘れられてしまう。ある時、こんなものもあったと宝物を見つけたように嬉しくなるけれど、大方は手を通してみるが、やはりその年の流行にそぐわなく、落ち着かない。自分の体型が変わっていることを棚上げして、ダメの判を押し、また洋服ダンスに戻す。そのうち洋服ダンスはパンパンになって、探すことすらしない。そんな中にも、着心地がよくて、何年となく着続け、くたびれているのだが
捨てきれないものもある。
私のクッキングブックも似たような境遇にある。一冊の本からどれだけのレセピーが選ばれるかを考えると、2、3冊をフル活用する方が効率的であるけれど、浮気性が災いしてか、本屋に立ち寄ると、足は自然と料理セクションに向いている、その日の気分で選ばれたものとか、あまりにも美しい写真の巧みな招きに引き付けられて、手に取ったのが縁で我が家のキッチンの本棚に並ぶことになったりする。
私にとってクッキングブックは読む本でもある。何冊かの本はキッチンに置くより旅行ガイドブックと並ぶ方がふさわしい。しかもその大きさと重さは私のクッッキングブックの概念からは大きく外れている。異国の料理、その土地の人々の日常の食べ物となったものには歴史がある。その国、その地域の地理的、気候的条件で作られた食材や香辛料がその土地の風土に上手く溶け込み料理されて、彼らの生命の源となる。気楽に旅が出来なくなった現在、料理の背景を綴ったクッキングブックは小さな旅の喜びも添えて楽しみの一つとなっている。 人々の暮らし と料理の歴史 がエキゾチックに伝わる本には心のときめきがある。
Food of ……シリーズはそれぞれの国の料理に誠実である。"Food of Thailand" はタイで習った料理や屋台料理がかなり誠実に伝わっていて懐かしさでいっぱいになる。ヒーヒー辛いカレースープにチキンがどんと入ったチェンマイヌードルを探しまわって食べたのも懐かしい。そのチェンマイヌードルがこの本にあった。何冊か興味のある国のものが加わって、私の好みのシリーズとなっている。その国に伝わった伝統食をアレンジし過ぎず、旅の途中で味わっているような錯覚を起こさせる。その国の本物の味に近くしたい時はこのシリーズからレセピーを選ぶ。
The Essential シリーズは一冊の本がベジタリアンであったり、アジアの国の料理であったり、地中海の国々の料理であったりだが、必ずしも伝統的とは言えない。カラフルで、作った料理の味にがっかりすることがないので、よく使う。特にベジタリアンは世界中の野菜料理が網羅されて野菜好きの者にはこれほど楽しい本はない。
世界中の料理をアペタイザー、パスタ、スープ、サラダ、デザートなど料理別にまとめられて一冊の本になったものや食材別にまとめられたものは急いでいる時にはとっても便利である。何もかも収録された一冊の本からは得られないレパートリーの豊富さが有り合わせ材料に引け目を負わせなくて有り難い。
“トラトリア”というイタリアのビストロの本はイタリア料理に凝っている時に一番の手助けとなったもの。本屋で何冊ものイタリア料理の本を見比べ選んだものだけあって、私との相性が良い。日本的サイズで使い易く、出来上がった味にも満足。今晩の夕食はイタリア料理と決めれば、先ずはこの本にお呼びが掛かる。
15年以上の付き合いがあるものがある。モーリー、カッツェンという人の “ムースウッドクックブック”。ニューヨークのイサカという所で彼女が起こしたレストランのレセピー集で、ベストセラーとなった。これは彼女自身のイラストが入ってとても親しみがあって優しい。野菜中心でチーズはよく使われているが、何を作っても美味しいので愛用している。彼女のシリーズを何冊か買ったけれど、やはり最初のものとの付き合いが深い。使い古されて表紙も中身もはずれてページを揃えるのが面倒になる。こんな本は古くなればなるほど愛着が湧く。彼女は大学卒業前から料理畑に入り、本を出版、現在ハーバード大学で、栄養学を教えている。
つい最近キッチンの本棚に仲間入りしたのは、私が今一番興味を持っているジューイッシのクッキングブックである。アマゾンで注文した二冊の本は中身を見ることが出来なかったので、届いた本にびっくりした。厚さが4.5センチもある分厚いもので、カラフルな写真はどこにも見あたらない。世界中に散らばったユダヤ人が世界中の料理を引っさげてアメリカにやって来たような本。料理を作りながら一つ一つの料理の歴史的背景が学べてとっても面白い本である。
私のクッキングブックの使い方として、新しい料理、例えばイタリア料理のラザニアとかデザートのテラミスに挑戦する時は、必ず2、3違うレセピーを混ぜ合わせる。自分流に作り上げるのが料理をする楽しみになっている。どこまで、チーズやバターを減らし、砂糖を控え、かつ美味しい物に仕上げるかに挑戦するのも、料理を作る醍醐味である。
日本へ行った時には必ず本屋に立ち寄り、文庫本と料理本を買い込んで帰ってくる。調味料の買い込みに加えて、何よりのお土産は本。一時は豆腐に凝った。最近は中華料理とか韓国料理の本。私は日本の中華料理が最高と思っている。やはり写真の美しいものが選ばれるが韓国料理の本は特に美しい。シフォンケーキの本は素材を吟味しての嬉しい本で、簡単に作れるシフォンケーキを堪能できる。ケーキサレの本も食事の用意の合間に作れるくらい簡単。ちょっとした時の手土産作りに重宝しているものである。




















































