風魔(上) (祥伝社文庫) 風魔(上) (祥伝社文庫)
著者:宮本 昌孝
販売元:祥伝社
発売日:2009-08-30
おすすめ度:4.0
クチコミを見る
ふと、戸部新十郎『服部半蔵』が浮かんだ
無駄な殺生はせず、終生の敵がいる
そして、完全ではない
その完全ではないところが魅力的だ

どちらにもお互いが登場する
戸部版は野性味溢れる風魔小太郎
宮本版は知略を尽くすが最後に討たれる服部半蔵
おまけに、凡庸な2代目が出てくる
結構、この凡庸さは抜け目がない
そう言えば、『吉原御免状』にも凡庸な2代目として書かれている

服部半蔵にしろ、風魔小太郎にしろある程度の資料は残っているだろう
しかし、これらの作品は作者の力量によるものだ
人間味に溢れている
『花の慶治』に出てくる半蔵は忍者というよりも、すでに官僚の域に達している
『SAKON』の小太郎はある種超人的な技を出す
これもまた一つの描き方
忍者だからどのようにも書ける
しかし、人間臭さを持たせる所、忍者だからこそのリアル感に『風魔』や『服部半蔵』の面白さがある

忍者を描いた作品は他にもある
柴錬なら『赤い影法師』
池波なら『忍びの風』
隆なら『花と火の帝』(裏柳生を忍者とするなら『吉原御免状』だけど)
そして、白土の『カムイ伝』(これも結構リアルな忍者像かもしれない)
いずれもそれぞれの作風が出ている
面白い

今日の結論
「あー、柴錬の『眠狂四郎独歩行』なら風魔が出てくるな!」