過去に『ガン』で亡くなった人が身近にいなかったわけではないのに、どこかずっと“他人事”だった。
おじいちゃんもおばあちゃんも長生きしたし、ガン家系ではないし、だから私もお母さんも大丈夫、と
勝手に決めつけていた。
 
大丈夫・大丈夫と勝手に決めつけて、お酒も飲んで健康診断も受けず。
 
でも今、“他人事”ではなくなった。
 
 
お母さんから昔聞いた『守り神』を調べて、山の奥地にあるお寺へ行くことにした。
お母さんに言うと「大変だからいいよ」なんて言いそうだから伝えずに。
こんな時ばかりで申し訳ないけれど、とにかく心から祈った。
「どうか、お母さんの病気を治してください」
「転移がありませんように・・・」
こんなに祈ったのは生まれて初めて、というくらい必死に手を合わせた。
近くから湧き出ている水もいいと聞いて持ち帰った。
 
お母さんに届けることを伝えると、「ありがとう。留守にしちゃってると思うから、玄関先に置いていってね」と。
お母さんの顔を見たら思わず泣いてしまいそうだったからちょうどよかった。
お母さんも私の顔を見たら泣いちゃいそうで敢えて留守にしたのかな。。。
 
それから私がしたこと。
まず、お母さんの医療保険を確認すること。
電話して、どの程度保険がきくのか知っておかなくては、と。
それからガン治療について。
例えば乳癌の治療を最初に行うとして、どんな治療をどのくらいの期間行うのか。
お母さんが今抱えている『心残り』に思っていることを一つ一つクリアしていこうと思った。
 
お母さんに会いたいし、連絡もしたいけれど、なんて言っていいかわからない。
「大丈夫だよ」なんて言えない。
お母さんも最悪の結果を想定して、なんとなく身辺整理を始めたみたいだった。
 
夜目をつむると相変わらず悪い想像しかできない。
お葬式のことまで思い浮かんだ。
また怖くなった。
天国のおじいちゃんに「お願い、まだ連れて行かないで」と祈った。
 
ずっとずっと子供のために・周りの人のために生きてきたお母さん。
どうしてそんなお母さんがこんな目に遭うの。
これからもっと自分のために生きたっていいじゃない。
なんで・・・なんで・・・
 
そんな思いと、私が早く気付いてあげられなかった後悔が頭の中をぐるぐる回って、
なかなか前に進めない。上を向けない。。。
 
 
病院は一生懸命探したけれど、結局お母さんの希望した通り、最初に診察してもらった病院にした。
よく考えてみたら、亡くなったおじいちゃんが亡くなるまでずっとかかっていた病院だった。
おじいちゃんの事が大好きだったお母さん。
お母さんのことだから、きっと「自分もこれで最期かも」と思っておじいちゃんと同じ病院を選んだんだと思う。
 
 
お母さんに思い切って電話を掛けてみた。
相変わらず元気に振舞うお母さんの声。
「お金の心配ならいらないからね」と伝えた。
「ごめんね、心配掛けて。でもお母さん、子供に迷惑掛けたくないから、もし末期だったら
治療はやめて、自分でできることだけ頑張ることにしようと思うから」と言う。
 
『子供に迷惑掛けたくない』がお母さんの口癖。
迷惑だなんて一度も思ったことないのに。
これから何があったって迷惑だなんて思わないのに。
私にできることならなんだってしたいのに。。。
 
 
私がお母さんのためにできること・・・・・・
お母さんのために私がするべきこと・・・・・・・
今私が本当にやるべきこと・・・・・・・