毎週のように台風が来る。。
ロ-タリ-エンジンは独特なメカニズムを持つエンジンであり、専用の計測機器(SST)を使う
代表的な物がコンプレッションテスタ-だろう。
マツダではロ-タリ-エンジンを搭載し市販車第1号となるコスモスポ-ツのデビュー当時からREには欠かせないテスタ-として設定しており、それだけ『ロ-タリ-には圧縮が命』という事を重要視していた事になる。
当時はプリント式で測定結果が専用シ-トに熱転写されて出てくるものだった。
SA22C後期辺りから現行モデルSSTの初期型に当たるデジタル式へモデルは変化
どちらのSSTも興和精機製である。
レシプロにもエンジン燃焼室の圧力測定器はある、しかしそれはREでは使えない。
燃焼室が次々と移動してゆく独特の構造を持つ為、一つのロータ-ハウジングに燃焼室が3つ存在するようなもので夫々の燃焼室がアペックス・サイド・コ-ナ-の3種類のシ-ルで仕切られていながら且つ移動してゆくので1ロ-タ-辺り3つの燃焼室を個別に計測する事が
レシプロ用では不可能なのだ。
うちで使っているテスタ-はデータをパソコンに総合管理させる事が可能なモデル。
フロント/リアが同時に1回で計測出来るSSTだ。
テスタ-には電源スイッチ(バッテリ-に接続)とリセットボタン
4つのデジタル表示窓を持ち真ん中の表示はクランキング速度(エンジン回転数)が示される
測定時の基準は250rpm前後とされる。
右の3つの窓には1ロータ-ハウジング辺りの3室の圧力数値表示される仕組みだ。
しかしどの燃焼室かを特定する事はこの時点では出来ない
計測数値が示す重要なもの、それは3室の圧力差。これを前後ハウジングで測り計6室と
3室づつの前後の圧力差が同等かどうかを視覚で確認するものなのだ。
専門誌やRE雑誌でもよく書かれている『圧縮が下がるとダメ』という文字が独り歩きしている気がする。
『圧縮が低いのでOHですね』
『壊れるのも時間の問題ですよ』
そんな事を言われた人も少なくないと思います。
ここに落とし穴がある。
飽くまでも3室の×2の数値のバラつきや差がある程度揃っているか否かが本当は大事なのだ。
計測した1回の数値を鵜呑みにしてはいけない!
それと圧縮測定で出た数値を圧縮比と勘違いしている人も少なくないが全く別のものなので
圧縮圧力と圧縮比は全く別の事である話はまた別の日にブログで書こうと思う。
ここではロータリ-エンジンのコンプレッションテスタ-(圧力測定)に於ける数値の意味と
1回の計測で出た結果に騙されるな!という事を書いている。
整備書では『7.0以上』『250rpm』というのが基準となっているが測定時条件に関しては何も触れられていない。
エンジンの冷間時計測なのか温間時計測なのか?
輸出モデルにはNAがありターボ付きか否かで厳密には排気量も圧縮比も異なりエンジン毎に条件が違うので同じ基準ではおかしいのだ。
更に言えばバッテリ-の電圧低下やセルモ-タ-の状態、クランクプ-リ-に掛かるベルトのテンション張り具合
アイドラ-プ-リ-等、回転するベアリング類の抵抗も劣化の有無でばらつく。
圧力数値を左右させる物は諸条件として幾らでもあるのだ。
可能性の話をすればテスタ-のセンサ-がプラグホ-ルにしっかり締め込まれていなくても
同様に数値は下がる。
数値が変わる条件は様々潜んでいるわけであり、うちでは計測時にバッテリ-チェックで
必要なら計測時のみ交換したりベルトの張りや状態を確認し冷間と温間の比較計測を基本にしている。
見た目の数値はクランキング回転数さえ出れば様々変わるわけで、例えばこれ
計測条件
水温85度の温間時計測
ベルトの張りはキツく張られている
クランキングで267rpmをマーク
数値は以下の通り
数値にはバラつきの差は殆どなく熱膨張している温間時でこの数値だかが冷めるまで待てば
250rpm換算で平均0.78まで数値は変貌する。
実際には267rpmを出すので冷間始動時の圧縮数値は0.80以上を示す。
数値がバラバラだったりすれば何かしらのトラブルがエンジン内部にあるが0コンマ以下の数値に多少の差が出るのは当たり前で過剰な心配は不要なレベル
基準数値だけに注目すれば初代コスモスポ-ツでは0.60を下回る場合も珍しい事ではなく
SA22C後期タ-ボでは10.0を超えているものもある。
言いたいことは数値数字を鵜呑みにしない。
高ければ良く低ければ駄目!という固定観念も捨てる事が大事という事
数値に踊らされない上手な付き合い方が自分のREをコンディション管理する事に繋がる。
冷間ではフロントが高くリアが低くなる
温間ではこれが逆転する。
差は0.10が平均数値となる。
測定時のクランキング速度を換算せずに揃えればこの差は消える。
バラつきの差が前後と3室で大きいか小さいか?
ここを診るのが本来の軸だから。
経験上水温が上がるとエンジンは熱膨張し圧縮圧は低くなる、基準は7だが実は6を切っても
エンジンは掛かり走る事が普通に出来る。
流石に5を切ると再始動性が極端に悪化する。
うちでは冷間温間で計測し温間時に0.60を切る場合はOHを勧めている。
機械は生き物と違い自然に治癒はしない。
この時期でOHを勧める理由は一つしかない。部品の単価高騰は止められないから極論を言えば明日より今日が同じことをしても安く収まるという事。
でも不具合を感じていないし0.60でも問題はすぐに起こらないんだろ?
確かにそうですね。
でも決定的に手に入る物が幾つもあります。今後の安心なんて言いません(笑)
でも一番の違いそれは走りやすい『トルク』です。
言葉では説明出来ませんがOH後は皆さん『これタービン要らないかも』と言います。
今までと同じ領域がタ-ボに頼らず今までよりも短時間で到達し、その時点でもまだココから更にタ-ビンが加給を始めるエンジンとなる。
これね、チュ-ニングでも何でもないマツダが作ったREエンジンが当たり前に持っている本来のスペックを只取り戻すだけの事です。
ロータリ-エンジンと付き合う上で大切な事は情報に惑わされず自分の目で手で触りそして
必要な事を実践し経験する事です。
コンプレッションテストは只圧縮を測ってみて『基準値内だからOK』とか『低いからおかしい!』という単純な判断ではダメ。
定期的に同じテスタ-で同じ条件下の元で水温変化でどう変わるかを見る事が重要です。
オイルの粘度や夏場冬場でも変化するわけでたまたま出た1回の結果で安心したり心配したりは愛車のコンディションを分かっているとは言えないんです。
※今回の測定画像はお客様のFC3Sですがイメ-ジ画像として侍FCを貼っときます(笑)
だからうちはOHもオ-ナ-さんの立ち合いスタイルを開業10年続けてきましたしこれからもそうです。
点検、相談、雑談、遊びに来る。
敷居は低いのでいつでもお越しください。
※定休日を月曜から水曜に改めましたので来店時はご注意下さい。