橙side
今年のバレンタインは寂しくなりそうだ。
毎年チョコをくれるお母さんは今年はくれないし、去年までいた彼女はもう彼女じゃないし、
今年は寂しいのだ。
自分で買いに行くか?
いや、寂しすぎるか…?
色々思いながらもいつも通りに会社に出勤。
バレンタインだからか、社内がソワソワしてる。
俺には関係ないけど。
「あのー義理チョコなんですけどー」
去年入った新人のギャルが、チョコを配ってる。
よくやるよ、おじさんばっかなのに。
そして、このギャルは「チョコ上げたら、ホワイトデーなにか返ってくるかも!?」って期待しているけど、そんな期待はしない方がいい。
ここの男どもは返すなんて愚か、貰ったことも忘れるんだから。
それを学んだギャルたちは、もう金輪際チョコを持ってこないのだ。
わかりやすい。
「あっ、西島さーん!
これ...」
あっ、俺にくれるの?
「あー...ありが」
「あっ!
ごめんなさい...
もうなかったや...笑」
「じゃあ、いいよ。」
「あの、代わりといってはなんですが、これどうぞ!!」
赤いハートの形の箱にピンクのリボンがかけられている。
いや、これって彼氏用だろ!?
「いや、いいよ。」
「でも、皆さんに渡してるから...」
「それ、僕のじゃないでしょ?
いいや、俺彼女から貰えるし」
嘘ついた。
だっていらないもん。
あっまた嘘ついてしまった。
「じゃあ、いいです!!」
えっ?なんか怒ってる?
「おーい、にしじまー」
「なに?」
会社のモテ男で俺の同僚の日高が動く椅子に乗ってこっちに来る。
「さっきの子、お前のは本命じゃね?」
「えっ?嘘?」
「鈍感!!
あの子、傷つけたねー
彼女いないことで有名なお前の嘘なんて一瞬でわかんだよ!!」
「いるかもしんねーじゃん!!」
「いるわけねぇだろ!!」
「はい...いません。」
「あーあー、好感度下がったね。」
「そんなもん捨てたよ!
でも、欲しかった...」
「今年は彼女いないもんなー」
「今年は寂しいよ。」
なんだかんだで仕事も終わった。
収穫はゼロ。
ギャルを怒らしてから目に見えるように女子の好感度は下がった見たいだな。
帰りにコンビニでもよるか。
家に最も近く行きつけのコンビニに入る。
チョコあるかな?
あった。
CMで毎日のように見かけるメーカーのチョコ。
買おっかなと思うけどやめておく。
なんか虚しい。
買うつもりのなかった缶ビールを手に取りレジに向かう。
コンビニには俺以外の客はいない。
レジに向かい缶ビールを置く。
「チョコは買わないんですか?」
「えっ?」
突然尋ねてきたのは、レジ打ちをしていたコンビニの店員さんだった。
若い女の子で、名札には「宇野」と書いてある。
「ずっとチョコのコーナーにいたのにチョコ買ってないので...」
「ははっ。
うん、なんかいいのなくて...」
「今年は、チョコもらえなかったんですか?」
初対面なはずなのにガンガン聞いてくる宇野さん。
今考えたら、そんな質問ほっといてもいいのに、その日の俺は寂しかった。
「うん。
貰えなかったよ。
彼女もいないしね...」
「じゃあ、これ、私からのバレンタインのチョコです。」
「へっ?」
コンビニの白いビニール袋に缶ビールと一緒に入っていたのは、可愛いウサギと可愛いクマの絵がプリントされているチロルチョコだった。
「私の大好きな味です。
プレゼントします。」
君の大好きな味なんて知らない。
いつもの俺ならそういって返すかもしれないけど、さっきから言ってたようにおれは、寂しかった。
「ありがとう。」
「ありがとうございました!」
コンビニから出てチロルチョコを手に取る。
袋を開けて薄桃色の四角のチョコを口にいれる。
甘い。
でも、酸っぱい。
うん。
俺も大好きな味だ。
