シアターグリーンフェス参加作品。


レイ・クーニーの作品を手掛けるのが多い ファルスシアターですが、今回はラリー・シューの作品を演出するというので、楽しみにしていました。これが結果的に楽しい公演となりました。レイ・クーニーの作品はベタな笑いを誘う代表格のような物語が多く、あまり好みではありませんでしたが、ラリー・シューの作品はナンセンスコメディと冒険活劇を足したような物語で観ていて実にワクワクしました。

私はハートを観劇。心根がやさしく極度の人見知りで人とうまく話す事ができないチャーリー(澤口渉)は親友のフロギー(種澤孝行)にすすめられ、故郷ロンドンを離れ、気分転換にアメリカ南部のとあるロッジへとやってきた。 おしゃべりな女主人や他の客達と口を聞かないようにするため、言葉の通じない「外国人のふり」をする事になったのだが、そのせいで宿を巡る様々な秘密や陰謀を耳にしてしまう。この陰謀に加担していたのがデビッド牧師(坂口邦弘)とオーエン(栗林賢司)だった。デビッドはクー・クラックス・クランに金を貢ぐため、資産家のキャサリン(船越ミユキ)を騙して婚約し、ついでにベティ婆ちゃん(仙石智彬)が経営するロッジを奪い取ろうと企んでいたのだった。

序盤、ベティ婆ちゃんが登場する場面で度肝を抜かれました。なんと、仙石智彬がベティを演じるという実にコミカルな設定。そしてチャーリーこと澤口渉の草食男子を遙かに進化させた若芽男子のようなキャラクター。この2人のキャラ設定だけで、これから始まる公演の面白味が確実にポイント高いと想定させられました。

また舞台上に登場する、1800年年代後半のアメリカで白人の人種差別主義者たちによって作られた秘密結社であるクー・クラックス・クランがロッジを襲撃した際の衣装がお見事でした。そして彼らに立ち向かい、大芝居を打つチャーリーとエラード(ししどともこ)とベティの3人の結束もコミカルで愉快でした。特にチャーリーが訳の分からない予言を言ってオーエンを驚かせ脅す場面は爽快でもあり爆笑した場面です。

栗林賢司の滑舌の悪さというか、鼻に詰まったような声が気になりましたが、あれは演出だったのでしょうか?役者では澤口渉が頑張っていました。特におとぎ話の語り部のシーンでは、言葉は解らなくてもその情景が目に見えるようで素晴らしい瞬間でした。

舞台装置がロッジの風景をそのままリアルに表現していて素敵でした。

脚本のそぎ落としと演出がお見事でした。特にチャリ-が話す外国人の言葉の演出が光っていたと思います。悪だくみを聞いてしまったチャーリーが何とかして、これを暴こうとする姿勢が観ていて気持ちの良い舞台でした。キャスト全体の演技力ですが、殆どの役者に演技力の差はなく、全体的に個々のキャラクターをきっちりと表現していたと思います。照明、音響、美術、衣装等も抜群でした。接客スタッフも実に気持ちの良い対応で、始終、一貫して楽しめました。

次回公演も観たい劇団です。