みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2013/03/23(土) ~ 2013/03/27(水)
会場 座・高円寺1
脚本 黒川陽子
演出 丸尾聡
料金 1,000円 ~ 3,500円
サイト http://promstage.com


2007年度の日本劇作家協会新人戯曲賞を史上初の審査員満場一致でグランプリ受賞した黒川陽子の戯曲「ハルメリ」。楽しさと不気味、愉快といら立ち。情報の時代をビビッドに捉えた戯曲のその完成度の高さとは裏腹に、作品化は困難な戯曲といわれてきたけれど・・、今回、丸尾聡主宰の「世の中と演劇するオフィスプロジェクトM」が、改稿を加えた決定版として、多数の客演陣を迎え総勢32名にて「ハルメリ2013」として上演したもの。


ある日、急に増殖をはじめた「ハルメリ」。それはファッションなのか、流行なのか、思想なのか、挨拶なのか・・。いつしか「ハルメリ」という言葉が流行りだし、それは次第に広まり、人々は「ハルメリ?」「ハルメリ」と言葉を交わし合う。そして、「ハルメリ」は、決して突出しない、自分の考えを述べない、そして突出したものに対しては容赦せずに非難が浴びせられる。こうした風潮そのものになっていく。


いかにも日本的な思想というか、出る杭は打たれるから、なるべく目立たず、競争をやめてお互い優しくしあおう!みたいなぬるま湯的なものがハルメリ。ハルメリはハルメリというクラブのカードを持った老若男女をハルメリと言う。


正直申し上げて、ワタクシは戯曲を読んだことがない。戯曲を読まずに舞台だけ観て、感想もあったものじゃないが、第13回劇作家協会新人戯曲賞を受賞したのだから、戯曲は素晴らしいのだと思う。


ハルメリをマスコミが取り上げたことで日本中の視点がハルメリに集中する。雑誌、ラジオ、TV・・。そんな状況の中、ハルメリミューズを選ぶ企画をTVが取り上げる。一方、そんなハルメリ効果をこれぞとばかりにしたたかに便乗してスポットを浴びるスーパー店長の妻・順子。うだつの上がらない夫と引きこもりの息子を家族に持つ身だ。そんな順子がTVに出演して注目を浴びる。憂鬱な家庭から飛び出した順子はこれを生甲斐にするのに数分とかからない。


「自分はハルメリ大好きです!」なんて宣言したかと思うと、時と場合によって風見鶏のように振るまい、自分の立ち居地を確保していく。まるで昨今の政治家のように。苦笑!
TVという媒体に要領よくしがみつく順子役の西山水木のなりふり構わずさの演技力が抜群。そしてTV出演を重ねるごとにデヴィ夫人のように派手になっていく順子。笑


ハルメリにのめり込む輩の共通しているものは、疲れだ。競争する事の疲れ。そして振り落とされる事への疲れ。しがみつく事への疲れ。そして他者と同じラインにいる事への安堵感。ハルメリの本質は自己否定することらしいが、世の中がハルメリで盛り上がれば盛り上がる程、雑誌で民衆をあおった側の記者・のし子は理性的な考えが働き、世評を増長させてしまった自分を後悔する。しかし、これを矯正し元に戻そうとするのし子はクビになる。いつだって世の中は競争の上に成り立っているのだ。


競争を嫌うハルメリが競争社会と比例するように競って、ハルメリミューズを選抜し、これによってハルメリ会員は暴走し、そこに乗っかる利害者も暴走し、コメンティーターとなった順子は家庭を顧みずTVに出まくる。


まるで社会を風刺したような作品だった。演出は一筋縄ではいかない。素晴らしいのか、そうでないのかも、ワタクシにはピンとこない。しかしアイドルりん子の暴走は観ていて、理解出来る描写だった。アイドルの暴走は流されるままに好に転じたり、悪に転じたりする。これに対しマネージャーは責任をとらずに、りん子を見はなすという大人の強かさが垣間見えた箇所だ。


アイドル・りん子役の横澤有紀がきゃわいらしい。ハルメリーー!!!