みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2013/03/14(木) ~ 2013/03/17(日)
会場 王子小劇場
作曲 中島とくあき
脚本 重信臣聡
演出 土井宏晃
料金 1円 ~ 4,000円
サイト http://fuuunkabocha.yokochou.com/


一遍は1239年、伊予国の豪族、別府通広(出家して如仏)の第2子として生まれる。幼名は松寿丸。有力御家人であった本家の河野氏は、後に没落、一遍が生まれた頃にはかつての勢いを失っていた。10歳のとき母が死ぬ(異母兄に殺される)と父の勧めで天台宗継教寺で出家、法名は随縁。 13歳になると大宰府に移り、法然の孫弟子に当たる聖達の下で10年以上にわたり浄土宗西山義を学ぶ。この時の法名は智真。


25歳の時に父の死をきっかけに還俗して伊予に帰るが、一族の所領争いなどが原因で、32歳で再び出家、信濃の善光寺や伊予国の窪寺、同国の岩屋寺で修行して、十一不二の偈を感得する。さらに、各地を行脚するうち、信濃国で踊り念仏を始めた。踊り念仏は尊敬してやまない市聖空也に倣ったものといい、沙弥教信にも傾倒していた。


これらをミュージカル化した舞台。意外にも本格的な和製ミュージカルで、歌も抜群だった。特に菅本生の声量は物凄い。劇団四季みたい。またオリジナルの楽曲もテンポが良く何度も導入されていたが、これらのタイミングも抜群だった。ミュージカルとしてはレベルは高いように感じた。


ただ、ワタクシの観た回はキャストらがセリフをよく噛んでいた。生身の人間だから仕方のない事だとは理解しつつも、セリフ噛みが目立つ度に、現実に引き戻され、そこが残念だった。また一遍役の菅本は苦しい表情、特に実母が死んだとの知らせを受けた場面での表情には、特に悲しみが漂っておらず、そこが不満だった。泣き叫ぶとか、絶叫するとかの身体全体の悲しみが感じられず、物語のクライマックスに感情移入が出来なかった。


泣いたけど。苦笑!


観劇者の中には、「こんな小さな箱なのだからマイクは必要ない」と言っていたが、それは違う。ミュージカルを見慣れてない観客はそういうが、ミュージカルの場合、どんな小さな箱でもマイクは付けるのだ。そうしないと小屋全体に声が届かない。なによりも歌ってる本人にデュエットしている相手の声が届かない場合だってある。自分の耳が拾う音は間近から拾っていくからだ。だからマイクは絶対に必要。


また疑問が残ったのが一遍と念仏房の別れの場面だ。なぜここまで、ずっと一緒だった念仏房が一遍と別れなければならなかったのかが、イマイチ、ぴんとこなかった。「もう付いていけない」との言葉を吐いた念仏房だったのだが・・。


今回、特に素晴らしかったのは演出だ。王子小劇場の階段から、トイレに至るまで、灯篭を置き、また小物の演出など見事な心遣いだった。これは小道具さんの担当なのかしら?また音響が素晴らしい。スタッフワークも的確で、気持ちよく観劇できたのは言うまでもない。役者を支えるスタッフが秀逸でした。


次回は4月27~29日までシアター711で「一遍~地演出編~」を公演する。観なきゃでしょ。