みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2013/03/14(木) ~ 2013/03/20(水)
会場 座・高円寺1
脚演出 中津留章仁
料金 3,000円 ~ 4,000円
サイト http://www.lcp.jp/trash/next.html


東日本大震災、そして原発問題を扱った作品「背水の孤島」で2011年の演劇賞を総ナメにし、昨年の「狂おしき怠惰」「水無月の云々」で2年連続の読売演劇大賞優秀演出家賞受賞となった新進気鋭の劇作家・中津留章仁が率いる劇団トラッシュマスターズが[尖閣諸島問題]に切り込んだ新作舞台。


「来訪者」とは土地からみた人間どもってことなのだろうと思う。こういった考え方が中津留マジックの面白いところでもある。そして誰もが認識しながらも積極的にかかわることを躊躇してしまうような社会問題にメスを入れ、すばりと切り込むスタイルで具現化して舞台を作ってしまうところは流石。だから観ているこっちも、ノンフィクションを観ているような気になってくる。笑


小劇場の密な空間で展開する3時間、飽きることなく観られたのはやはり、映画的な演出スタイルと、キャストらの熱演、そしてがっつりと蠢く濃い世界観だからだ。物語はいつものように骨太な世界を描写する。


1幕目、在中国日本大使館での外交官、細貝大使、中国人大使秘書、中国人家政婦の情景から。ここで中国人家政婦・姜を演じた林田麻里の演技力が特に秀逸。まったくもって、中国人にしか見えない。一方で反日デモに参加する姜。中国人の反日感情が悪化する中(中国政府もそのように仕向ける)、大使館では中国人スパイ名簿の取引交渉を聞いた大使秘書が、スパイ名簿の漏えいは中国人の危機だと感じて、この秘密を中国側に売る。これを受けて細貝大使の妻が拘束され、細貝は日本に助けを求めるも、政府はこれを見捨て細貝は自害する。


2幕目への繋ぎ、場面転換(セットの入れ替え)、舞台前の白幕に状況説明として膨大な内容の骨太な物語が語られる。東シナ海の南西部にある無主の地をめぐって論争が起き、中国と日本は戦争に突入する。しかし諸外国がこれを仲裁し、この土地に両国人が住むことを許可される。実はこの部分が重要な部分で、観る者の魂を揺さぶる重厚な人間ドラマへの引き水な箇所だ。できたら、この説明をパンフレットで加筆して欲しいくらいだ。


2幕目、セットが入れ替わり、1幕目と反してのどかな海辺の島の風景。東シナ海の南西部にある無主の地だ。領土問題で再び争いが起きないようにと、そして中国人に占領されないようにと、かつての外交官たちが日本の国益を守るために、この島に居住する。そして日本人の数以上の中国人も居住する。ここで起こる恋愛沙汰を巻き込んだ人間臭いドラマを展開させる。終盤でみせる、岸元外交官と姜の結婚は、この土地での最初の中国人と日本人の結婚だが、いつか誕生する二世は、まさに領土の中和剤になるかもしれない。


土地を主軸にした壮大なドラマのように感じた。劇中、「武器も扱えない国家に平和を語る資格はない」といったセリフが放たれるが、印象深い言葉だ。

面白い。中津留作品はいつみても面白い。