みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2013/01/10(木) ~ 2013/01/14(月)
会場 サンモールスタジオ
脚演出 マキタカズオミ
料金 2,800円 ~ 3,500円
サイト http://www.elephant-moon.com/

とある村には古くからの因習で罪を食べる人間(罪喰人)がいた。罪を食べられた者は全てから許され楽になれた。しかし、その罪は消えることなく罪喰人に溜まっていく。その罪の多さから罪喰人の腹は奇妙に膨れ上がり、そして奇妙にも暑がるのだった。


罪を巡る濃密な物語だったが、片田舎の孤立した村の因習もので、独特の秘められた物語というのは案外、よく聞く。そして罪深き人間が楽になりたいばかりに罪喰人に己の罪を食ってもらうという発想が面白いと感じた。どうやら比嘉家の家長が代々、罪喰人を務めているようで、この物語はその家長が死に、首を縄で吊られて祭られているところから始まる。


そして、この罪喰人を引き継ぐと言い出したのが三男の徹平(寺井義貴)だった。次男の清文(橋本拓也)は妻を自殺で亡くしていたが、この妻と不倫していたのが、四男の耕太(永山智啓)。そして耕太は現在、徹平の妻・真弓(鈴木アメリ)と不倫中だ。比嘉家長男は疾走し現在、行方不明だが放火の疑いをかけられていた。この長男の妻・由美香(中野麻衣)は健気にもこの家を守っているも、幼馴染の源治(杉木隆幸)に言い寄られ落ちそうでもある。苦笑!


ここらへんまでは隔離された村らしく男が手近に居る女に言い寄り、マイファミリー状態で不倫しまくるのである。だから、いっそのこと、みんな兄弟になっちゃえば?みたいな放任主義的コメディなのだ。一方で村長の樋口(芝博文)は娘を事故で亡くすも、亡くなった娘が周防(江原大介)の船に遊びに来ていた矢先の事故だったことから、その責任を負い罪の意識に苛まれるのであった。


舞台の演出、音響、奇妙な構成力のある脚本、セット、どれも面白い。罪を食ってもらって楽になりたいという人間の本質を見事に表現した舞台だと感じた。また罪食人になった徹平がいい感じのデブで太鼓腹ときてる。どんだけ罪を食ったんだ!みたいな腹の出具合。しかも暑い暑い!といってパンツ1枚でうろうろしながら説教するのだけれど、そんな裸男に説教されても説得力に欠ける情景も見事だ。


他人の罪を喰らう場面の徹平は何かに取り憑かれたようなうめき声をあげ、一瞬、ホラーかと思ったほどだった。終盤で産廃所が爆発するシーンではまるでジュラシックパークの恐竜たちが地響きを上げて動くような音だった。このあたりの演出、音響はお見事。ちょっとしたテーマパークに居るよう。椅子も揺れたしすんごく面白い!


結局薬局、人間ってやつは生きてるだけで何らかの罪を負っているわけだから、自分で自分の罪を食いながら生きてるんだな、って思った。