みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2012/12/20(木) ~ 2012/12/24(月)
会場 THEATRE1010
作曲 山口琇也
脚演出 ハマナカトオル
料金 7,000円 ~ 7,500円
サイト http://www.musical-za.com/

フランス南西部ピレネー山脈のふもと、スペインとの国境に近いところにルルドという小さな町がある。今から150年ほど昔、ここに住む貧しい粉挽き職人の娘ベルナデットは、ある日薪拾いに出かけたマッサビエルの洞窟で実に奇妙で不可解な体験をした。美しく神々しい女性と何度も出会い語り合ったのである。だが、その崇高な女性の姿は決して他の人々には見えなかった。 これが聖母マリアだ。


聖母はベルナデットに、これから15日間毎日ここへ来るようにと命じ、「人々が行列をつくってここへ来るよう望みます。」「ここに聖堂を建てるよう司祭に伝えなさい。」「あなたはこの世では幸せになりませんが、次の世での幸せを約束しましょう。」などの言葉を伝え、そして人々を救う湧き水が出る場所を教えた。そして事実、彼女がその場所を掘ると、地面からこんこんと清水が湧き出て来たのだった。


まもなく、難病で苦しんでいた人間が、この泉の水を浴びた途端にたちどころに直ってしまうという奇跡が立て続けに起きた。それ以来、ルルドの泉は奇跡を起こす泉と信じられ、多くの巡礼者が集う聖地となった。ルルドの町はその真贋を巡って大騒ぎになりベルナデットは嘘をついているのか、それとも本当に聖母マリアと出会ったのか。しかし、それはこの奇跡の物語の始まりにすぎなかった。


いよいよ、奇跡の泉の噂が広まり騒ぎが大きくなるとベルナデットは超有名人となり、そのため人づき合いを患わしく思うようになった。彼女の帰りを待ち構えてお金を手渡してまでも握手してもらおうと考えている者もいた。 しかし、彼女は断固として拒絶してお金を受け取らなかった。敬虔さの中で育ち潔癖性が身にしみ込んでいた彼女は、お金を汚らわしいものとして心底毛嫌いしていたのである。

だが皮肉なことに、彼女自身は虚弱でおまけに幼少時に患ったコレラのせいでゼンソクに始終苦しめられていた。他人の症状を軽減することは出来ても、自らの症状を軽減することは出来なかったのだ。ベルナデットは死ぬまでさまざまな病気に苦しめられることになる。


ベルナデットはその後修道院に入るが、そこでも病気との闘いの連続であった。ゼンソクと肺結核に冒された彼女は、とうとう死が彼女を捕える日がやって来た。カリエス(骨が溶ける恐ろしい病気)で、もはや歩くことも出来なくなった彼女はベッドに寝たきりとなり、2か月あまりも苦しみが続いていた。彼女はたびたび襲って来る激痛に毎夜うめき声をあげた。そして35才という若さで永眠したのだった。


今もルルドは難病に苦しみ治癒を願う人々の行列で後を絶たない。


知念里奈の天使のように透き通る歌声に圧巻!実に素晴らしいミュージカルだった。知念里奈が演じるベルナデットは清楚で儚かった。キャスティングがベルナデットのイメージにぴったりで、もし、ベルナデットが目鼻立ちのくっきりとした美貌の役者だったら、ここまで感情移入できなかったと思う。クリスマスに相応しい奇跡の物語は47曲の歌で綴られ美しく感動の場面を魅せつけ、充分に癒された。


そしてベルナデットが修道院に入るあたりから号泣。こんこんと泣いて声が漏れてしまうほど泣いた。更に「あなたはこの世では幸せになりませんが、次の世での幸せを約束しましょう。」の言葉に、心の琴線が振れて、ここでも号泣。

舞台セット、演出、キャスティング、演技力、歌唱力・・どれも申し分なく心が洗われた。聖夜に奏でる美しいミュージカルでした。