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劇場に入ると、静謐な感じのする静かさ。

それは無駄なおしゃべりに高じ、ワイワイガヤガヤとした普段の小劇場の場内の雰囲気とは異なり、手話でコミュニケーションをとるろう者が圧倒的に多かった故だ。

また、携帯電話をチェックする観客も全くなく、むしろ、場内は神々とした雰囲気さえある。

たぶん、90%以上の観客がろう者だったようだ。


彼らはいつもこういった静けさのなかで生活しているのだ。

舞台上の役者やスタッフが手話で説明し、それを受けて観客は拍手の代わりに、両手を耳元まで上げて、ギンギンぎらぎら・・といった体で手のひらをヒラヒラさせる。これが彼らの拍手だ。だから会場内で手をパチパチさせて拍手をするのは健常者という格好になる。


ワタクシは勿論、パチパチと拍手を送ったが、場内でこうして拍手をしていたのは数人で、しかも、このパチパチという音がろう者にどう聞こえるのか解らないが、パチパチすると数人のろう者がこちらをいちいち振り向いていたので、何らかの響きは感じるのだと思う。


そんなこんなで初めての体験だったのだが、健常者である人間というヤツは、持って生まれた五体満足に当たり前のように慣れてしまって、ついつい、劇場内でのルールを破ってしまうことがある。それは健常者に限ったことではないのだろうが、やはり、知らず知らずのうちに傲り高ぶった精神が宿ってしまい、と同時についつい相手の立場でものを考えるという基礎を忘れてしまいがちだ。


「窓際のとっとちゃん」を泣きながら読んだあのころを思いだし、「ひまわり」のボランティア活動をしていた頃を思い出すいいきっかけにもなった舞台だった。