2007年、紀伊國屋サザンシアターで好評を博した「獅子吼」の再演。

舞台は海に囲まれた南国の島の洞窟。
洞窟の中で暮らし、洞窟を出る日を待ちわびている十数人の男女は、ある日、自分たちが死んでいる、という事実を知る。しかし彼らは死んだ記憶がなかった。私たちは、何者か?なぜ、ここにいるのか?
彼らは、かすんでゆくそれぞれの記憶を手繰り寄せながら、自分たちの過去を「芝居」として演じることで、記憶の奥、闇に包まれた真実を、解き明かしていくことを決意する。

演じながら彼らは敵の攻撃を受けて死んだ、とするも何かが違う。過去の記憶は何者かによって作為的に操作されているかのようにも感じる。そして壕の中で起こった事柄を何度も演じなおすことで彼らの記憶が鮮やかに蘇ってくるのだった。

神の国として日本全体を統合していったが為の軍人達のマインドコントロールされた独特の意識は、日本人の誇りや恥や敵に屈しない自害精神を高く掲げ個人の死など所詮意味を持たないなどと言い放つ日本帝国陸軍徳之沖島地区隊の小隊長のセリフが痛い。

一方で小隊長に対して、「自分に陶酔しているだけ。この混沌とした世界を導こうとするなら、この自分が生きて導かねばならない。」と吐くユタのセリフがズシン!と響く。
こうして彼らは記憶のピースが繋がり一つの絵画となったとき、彼らの彷徨い続けた魂を回収するかのようにその記憶も彼ら自身も消えてなくなるのだ。

素晴らしい舞台だった。導入音楽、照明、舞台衣装、演出、キャストらの欠点のない演技力。これらが一つにまとまり芸術的舞台だった。特に照明の川口の仕事が神がかり。