中東で戦争やテロが発生すると、そこで生きている人間は過激で残酷で同じ人間と思えない、という印象を持たれがちだろう。そもそも私たちと違う人々だから殺し合いが平気なのだ的な捉(とら)えられ方が、蔓延(まんえん)している。
そうではなくて、暴力と圧制の対象となっているのは、普通に家族を心配し恋愛し喧嘩(けんか)する、サッカー大好きな人たちなのだ。
この小説は、それを伝えるために、思いっきり普通の少年の生活を描く。イスラエルに占領されるパレスチナで、イスラエルによる外出禁止令や検問や抑えつけのなかで、いかにパレスチナ人たちがタフに「暮らし」を維持しているか。
子供が爆弾騒ぎに巻き込まれて欲しくない親、イスラエル兵に抵抗できない親を悔しく思う子供、難民キャンプ生活者へのパレスチナ人同士での蔑視(べっ
し)。でも占領者の監視をかいくぐって帰還した子供への、近所一体となった称賛、そして手作りサッカー場に寄せる、子供たちの夢
。
作者
はイギリス人。アンネの日記
のように、幅広く共感を得る書が
パレスチナにもあって然(しか)るべきだ、という執筆動機
は、多くの中東関係者
が頷(うなず)くだろう。