生徒達は、入り口前に棒立ちの私の横を次々と通り、学校内に入っていく。
男女共に不審な目を私に向けている。
かつての私なら、がっつり睨み返すが、起こる変化の早さにまったく頭が追いついていない。
やはりここはプログラムの世界なのだろうか。
普通の人間が、いきなり風と共に現れるのか?
…
なにもできず、ただただぼうっとしているしかなかった。
どうすればいいのだろう。
学校内に入った方がいいのだろうか。
ぐるぐると悩んでいると、ふと、校門のほうから走ってくる人を見つけた。
見たことない顔だ。校門の見張りの先生だろうか?
「君ッ‼君は一体なにをしている⁉」
⁉
「うちの生徒だろう?何故制服を着ていない⁉」
まずい。
非常にまずい。
そうだ、わたしのいまの服装は、榎本貴音ver.エネだったことを忘れていた。
はたから見たら、真っ青服のコスプレ女にしか見えないだろう。
「あ、あのですね、あのあの…」
なんて情けない話し方だ。ご主人と話しているうちにコミュ障が感染ってしまったのか…
「ごごごご、ごめんなさいぃぃー…」
急に怒られても冷静なれるはずもない。
周りの視線と怒声に埋れ、泣きそうになった瞬間。
「あー、榎本。はやく教室はいりなさい。」
見慣れた髭と、聞き馴れた声。
私の横に立っていたのは、『THE 人間のクズ』の研次郎先生だった。