西暦3908年へ行った人物 | 話のコレクション

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食べ歩き、旅行、散歩を中心に記事にします。が、それらに行けぬ時は、古今東西の興味深い話を記事にします。

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   2017年、奇妙な内容でありながら英語圏で大ヒットした本がある。
 
 その本とは、「未来からの年代記・パウル・アマデウス・ディーナッハの驚くべき話」である。
 
 著者は体が弱いスイス人で、フランス語、ドイツ語の教師だったこと以外、よくわからぬ。
 謎の人物である。
 
 彼は1921年に、昏睡状態になった。
 そして、これが一年も続いた。
 
 この間、なんと彼の意識は体から抜け出し、西暦3908年に生きている男の体内へ入ったという。
 
 西暦3906年には、こういう事は、
 「意識スライド」
と呼ばれ、人々に認知されていた。
 
 そのため未来人達は、過去から来た彼の意識を、温かく迎えてくれた。
 いや、それだけでなく、21世紀から39世紀までの歴史を、教えてくれたのだという。
 
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  火星
 
 未来人が、彼に教えてくれた歴史とは、こんなものであった。
 
 西暦2000年~2030年
 人口過剰、環境破壊、経済格差など人類に問題も多い。
 
 2204年
 人類は火星の植民地化に成功する。
 2000万人が、火星に移住した。
 
 2205年
 火星で大きな自然災害が発生。
 移住した2000万人は、全滅した。
 以後、人類は火星への移住を断念。
 
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 2309年
 とうとう世界大戦が起こる。
 文明のほとんどは終わる。
 日本人などの黄色人種、黒人は全滅する。
 
 2396年
 世界は一つになり、世界政府ができる。
 しかし、世界の統一に反発する者が多く、3400年まで上手くいかない。
 
 3382年
 人類の脳に、劇的な変化が起きる。
 視覚、直観にひじょうにすぐれた者が生まれる。
 人間の想像力も高まる。
 
 3400年~3906年
 特殊な能力を持った者が、世界を動かす。
 物は、個人が持たず皆で持つようになる。
 人口は、10億人以下で調整されるから、全人類が豊かに生きられる。
 
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 著者のディ-ナッハは、1922年に昏睡状態から回復した。
 
 そして、以上の未来の話を残したという。
 
 1924年に、結核で亡くなった。
 
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 この本、英語圏でよく売れたというから、読者の中には、内容を真に受けている者が多いのでは?
 
 つまり、著者は本当に意識だけ西暦3908年に行き、人類の未来の話を聞いてきた、と思い込んでいる人も多いのではないか?
 
 だが、私は本に書かれている事は、創作か著者が昏睡中に見た夢に過ぎないと思う。
 
 話に辻褄があわない部分があるのだ。
 
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 西暦2309年、世界大戦が起こり、黄色人種、黒人種は全滅するという部分。
 
 逆に言えば、スイス人などの白人種は生き残るというわけだ。
 
 しかし、今の世は、白人も黒人も黄色人種も、同じ国にいっしょに住んでいる。
 
 例えば現在、韓国では就職難だから、カナダへ移住する若者が増加しているらしい。
 ブラジルには、白人、インディオが多いが、日本から移民した人の子孫も多い。
 アメリカも「人種のるつぼ」と呼ばれるぐらいで、色んな人種がいる。
 
 文明のほとんどが無くなるような世界大戦が起こったら、白人、黒人、黄色人種はいっしょに滅ぶ事になろう。
 
 黄色人種、黒人は全滅し、白人だけ生き残るというのはありえない。
 
 それぞれ、まったく別の地域に、住んでいるのなら別だが。
 
 1920年代のヨーロッパでは、黄色人種、黒人種への差別心が異様に高かったという。
 なにしろ、あのヒットラーが生きていた時代である。
 
 著者も、日本人、黒人に対して偏見、差別心が強く、あんな白人にとって都合のいい夢を、見たに過ぎないのではないか?
 
 人類の一部が火星に移住したと思ったら、翌年にはもう全滅するというのも、何やら出来過ぎた話である。
 
 2000万人も移住できるぐらいであれば、災害の事も徹底的に調査する科学力が、人類についているはずだ。
 そして、危険性が高いなら、移住は最初からしないだろう。
 災害の想定、分析、対策もできぬような科学力のない生物が、他の星へ移住できるであろうか?
 
 世界政府ができた後、完全な世界統一に、1000年も要するのも、変な話である。
 長すぎないか?
 
 この本は、現在日本でも販売されてはいる。
 けど、買うのなら内容を信じず絵空事として、楽しむぐらいで良いと思う。