着工できないリニア 建設許可を出さない静岡県の「正義」

 リニア中央新幹線の2027年開業に向けて、JR東海は建設工事を進めている。そこへ静岡県が「待った」をかけた形になっている。ただし、静岡県はリニア中央新幹線に反対しているわけではない。大井川流域の水利と環境問題を解決してほしいだけだ

 大井川は古くは東海道の難所でもあり、「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川(箱根馬子唄)」は、私の子ども時代の社会科教科書でも紹介されていた記憶がある。大井川といえば、鉄道ファンにとっては大井川鐵道だ。蒸気機関車の保存運転の先駆けである。近年はソドー島から「きかんしゃトーマス」がやってくるため、子どもたちや親御さんたちにも知名度を高めた。

 大井川鐵道のSL列車は新金谷~千頭間。その先の千頭~井川間は「井川線」という小型車両の路線が続く。愛称は南アルプスアプトラインだ。登坂能力を高めるため、ギザギザレールにギアの車輪を絡めて走る「アプト式」を一部区間で採用している。終点の井川駅付近に井川ダムがあって、景色の良いところで遊覧船も運航されている。しかし、私が訪問した2019年4月3日は運休中だった。理由は水不足。水位が足りなかった。運航再開は6月17日だった。

 大井川はかつて、頻繁に洪水を起こすほど水量が多かった。ダムの整備で下流の水量は制御されるようになったけれども、今度は水不足に悩まされている。17年度は97日間の取水制限が行われた。18年度は12月27日から取水制限が始まり、19年5月22日まで続いた。節水期間は147日間だった。

 その大井川の水がさらに減るとなれば、静岡県は看過できない。静岡県中央新幹線対策本部がJR東海に提出した「中央新幹線建設工事における大井川水系の水資源の確保及び水質の保全等に関する中間意見書」によると、大井川からの水を必要とする生活者は約62万人で、静岡県の人口の6分の1にあたる。ダムでは水力発電が行われ、1万2000ヘクタールの農地に水を供給する。下流では工業用水としても重要という。静岡県にとっては大切な水資源だ。

 

大井川水系の河川流量維持を求める

 リニア中央新幹線は静岡県も通る。全て南アルプスを貫くトンネルで、距離は約11キロ。品川~名古屋間285.6キロのうち、わずか3.8%にすぎない。しかし、この部分が大井川水系の水源地帯だ。11年にJR東海が「中央新幹線(東京都・名古屋市間)計画段階環境配慮書」を公開し意見を募集した。12年2月、静岡県知事は「河川流量のそのものの維持を図ること、トンネルの工事及び存在が水資源の減少につながらないよう路線維持を選定すること」と意見している。

 13年9月に公開された「中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価準備書」によると、大井川の河川流量は工事完成後に毎秒2トンの減少と記された。これを受けて静岡県知事は14年3月に意見を提出。「毎秒2トンの減少は住民生活、産業活動にとって将来にわたり深刻な影響がある」とし、「技術的に可能な最大限の漏水防止対策と湧水を大井川に戻す対策」を求めた。

 14年4月22日、静岡県は「静岡県中央新幹線環境保全連絡会議」を設置した。リニア中央新幹線事業が環境に与える影響を継続的に確認するとともに、環境保全措置について助言し、環境影響の低減を図るためだ。

 JR東海は14年4月の「中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書」において、「工事中からトンネル内の湧水を汲み上げて大井川に戻す」「工事完了後も流量の観測を行い、利水関係者の話を聞いて恒久対策を実施」「例えばトンネル湧水をポンプアップして河川に戻す方法を検討する」と回答した。しかし、静岡県はこの回答だけでは納得しなかった。

 17年10月、JR東海は工事中の湧き水を大井川に流すための導水路トンネル工事に着手した。導水路トンネルで毎秒1.33トンの水を戻す。残り0.7トンも湧き水をポンプアップで戻す計算だ。これに対して静岡県知事は「合意なき建設着手」と反発。静岡県は湧き水の全量を無条件に大井川に戻すよう求めており、JR東海の計算通りでは毎秒2トンが上限値となってしまう。報道によれば「JR東海から具体的な回答がない」「傲慢な態度を取り続けている」「堪忍袋の緒が切れた」などと強い口調だったという。JR東海としては大井川水域の利水団体とは県の仲介で基本協定の内容がまとまりかけていたところで、困惑するほかなかったようだ。

 結局、18年10月にJR東海は「全量を戻す」と約束。ただし、その方法については明示しなかった。静岡県は具体的な方法について回答を待った。

 18年12月28日、静岡県中央新幹線対策本部は、JR東海に対し、「水資源の確保及び自然環境の保全等に関する質問書」を提出。回答を得て対話を続けた。JR東海のリスク管理に関する基本姿勢が論点となっていた。

 19年4月15日、静岡県中央新幹線対策本部の地質構造・水資源専門部会で、JR東海は、リスクへの対処方法、基本的な考え方・方針を示した。静岡県とJR東海はリスク管理の基本的考え方の共通認識を持ち、個別事項の対話を進めている。JR東海から湧水量の上限値を毎秒3トンとするという提案がされたようだ。

 

「無礼千万だ」静岡県知事、JR東海に反発

 19年5月30日、JR東海の社長は記者会見で「未着工の状態が続けば開業の時期に影響を及ぼしかねない」と発言。静岡県との話し合いが膠着(こうちゃく)状態にあると明らかにした。この時点の未着工区間は静岡県内区間であり、静岡県のせいでリニアの開業が遅れるという意図にも受け取れる。

 当然ながら静岡県は反発する。リスクの共通認識を持ち、慎重に対話を進めているところだった。着工への合意に近づいていたはずだ。

 静岡新聞によると、静岡県知事は6月11日の知事会見で、「事業計画の年次を金科玉条のごとく相手に押しつけるのは無礼千万だ」と厳しい言葉で批判した。「まずは利水解決で、開業を延期してでも解決すべき」という考えを示す。

 この会見の直前に、静岡県知事はいくつか行動を起こしている。

 6月5日に静岡市で開催された中部圏知事会議で、静岡県知事は「静岡県にはリニア中央新幹線の駅がなくメリットはない」とし、国への提言のうちリニア中央新幹線早期開業に関して、「工事実施計画に基づき」の文言の削除を求めた。結論は先送りになったという。この会議では、北陸新幹線の全線開業、中部から北陸への特急しらさぎ増便などが報じられている。

 さらに、同会議では静岡県が「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」の加盟を申請した。工事に待ったをかけながら「建設促進」団体への加盟は一見、矛盾しているように見える。しかし、これは静岡県としては筋が通っている。リニア新幹線が通過する予定の都府県のうち、静岡県だけが加盟していない。駅ができず、利点がないから加盟の必要はないという判断があったかもしれない。しかし、静岡県は「建設促進」の都府県に、静岡県の考えを聞いてほしいと思っている。「建設促進」のために「水利問題」を理解してほしい。

 6月6日の「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会総会」は、静岡県の加盟を保留した。建設促進を求める会で、建設遅延の原因となっている静岡県の対処に困ったようだ。静岡県知事は会見で「加盟させないというなら、静岡県を通らないルートに変更すべきだ」と強硬な姿勢を見せている。

 ここまでの流れで、「静岡県はリニア中央新幹線の建設に反対していない」ことを確認しておきたい。主張は「水利問題を解決してほしい」の1点だ。6月11日の知事会見では金銭補償に対する言及もあったけれども、その件は後述する。

 もう一つ、静岡県知事の川勝平太氏自身は「リニア推進派」という見方もある。日経ビジネス18年8月20日号によれば、国土審議会の委員を務め、JR東海系の雑誌でコラムを担当したこともあるという。「日本の国土にとってリニアは必要だ。しかし静岡県の不利益は許さない」静岡県知事として正しい考え方だと思われる

 

静岡県の課題リストが明示された

 6月6日、静岡県が「促進期成同盟会」入りを保留された日、静岡県中央新幹線対策本部はJR東海に対して「中央新幹線建設工事における大井川水系の水資源の確保及び水質の保全等に関する中間意見書」を提出した。JR東海と静岡県の論点を整理するという趣旨だ。その内容は全般的事項として3項目9事項、個別事項として4項目25事項に及ぶ。小見出しと一部要約は以下の通り。

全般的事項:
1. リスク管理に関する基本的考え方
 1. 上限値毎秒3トンの概念や妥当性
 2. 上限値毎秒3トンを上回る場合の対処方針を検討する根拠と妥当性
 3. 上限値推定方法、施工管理方法について
 4. 上限値毎秒3トンの戻し方と実効性について

2.管理手法
 1. 河川の水量・水温・水質・掘削発生土の年間変化の可視化が必要
 2. 県民が工事のリスクと対策を容易に理解できるような説明が必要
 3. 推定データと確定していくデータの違い、不確実性の明示が必要

3.生物多様性の保存に関わる基本的考え方
 1. 希少種に限らず生態系の保全に必要な対策を講じる必要
 2. 不測の事態に対する事前の代償措置等、現実に即した自然環境の保全方策も必要

個別事項:
1. 水量
 1. 全量の戻し方
 2. 突発湧水対応
 3. 中下流域の地下水への影響
 4. 減水量の計測
 5. 減水に伴う生態系への影響

2.水質
 1. 濁水等処理
 2. 水温管理
 3. モニタリング

3.発生土対策
 1. 発生土置き場の設計
 2. 土壌流出対策

4.監視体制の構築
 1. 環境保全
 2. 安全管理

5.代償措置
 1. 事前の代償措置
 2. 基金・ファンドの設立

6.今後の方向性
 1. 施工計画書、発生土置場の管理計画書、環境保全計画書を作成し、県民等が理解できるよう説明する必要
 2. 対話の結果を明文化した基本協定を締結する必要

 これら一つ一つの項目について、JR東海と静岡県は解決する必要がある。素人考えだけど、予測値が正しいか否かは「やってみなければ分からない」であり、予測を超えた事態は「その都度対処する」でなければ物事は前進しないと思われる。それらの全てを明示しろとは難題だ。しかし、静岡県が納得しなければトンネルを掘る許可は出ない。

 例えば、発生土置き場について、カラマツ林を一つ埋めつぶす規模という報道もある。それが事実ならば、生態系への影響は大きい。大きいことは分かるけれども、どうなるかは予測できない。鉄道屋には難しい課題だ。生物学者などの知見も必要になる。

補償問題にすり替えられた?

 6月11日の静岡県知事会見では、「自然環境破壊への代償措置を求める」「他県で地元の要求に応じて駅を作った費用の平均ぐらいが額としては目安になる」と、金銭補償にも言及したと報じられた。

 JR東海は通過する県に対して、中間駅の設置費用約800億円を自己負担する。静岡県内はトンネルであり、沿岸主要都市からは遠いため駅はできない。しかし、通過するからには平等に、同じ予算で代償せよという。ただし、その使い道は静岡県にとって経済復興ではなく自然復興のはずだ。

 しかし、代償、800億円という数字が先走って誤解を生んでいる。翌日の6月12日、JR東海社長は静岡県の要求には応じられないと語った。理由は「リニア開業で静岡県が受ける恩恵は大きい」から。つまり、経済的代償と勘違いしている。

 確かに、リニア中央新幹線の開通で東海道新幹線の運行形態は変わる見込みだ。JR東海は18年1月から、浜松・静岡・三島駅に、「リニア開業後のダイヤ予想図」を掲示している。現在は東京発で最大「のぞみ10本、ひかり2本、こだま2本」(臨時列車用ダイヤを含む)だ。これが予想図では「のぞみ4本、ひかり+こだま10本」になるかのように見える。

 これは確定した話ではないし、のぞみからリニアへの移行が進めば運行総数が減るから「のぞみ3本、ひかり+こだま8本」になるかもしれない。また、京都・大阪以遠へ向かう客が名古屋乗り換えを嫌えば、のぞみは少ししか減らない。それでもダイヤにゆとりが出て、ひかり、こだまを増やす余地はできる。

今回の問題はカネではない

 静岡県はかつて「のぞみが静岡に止まらないなら通行税を課す」と発言した経緯がある。のぞみは静岡県民に利益を与えず、騒音と振動を残して去って行くからだ。静岡県としては、県内停車列車の増加は歓迎だろう。しかし、前述したように、静岡県はリニアに関しては「水利・環境破壊」を問題にしている。代償は、「JR東海が環境維持に手を付けられないなら静岡県側でやるから費用を出してほしい」という意味だろう。

 静岡県はかねてより「静岡空港の直下に新幹線の駅を作ってほしい」とJR東海に要請しており、JR東海は掛川駅に近いこと、トンネル拡幅工事の難しさなどから拒否している。これと「のぞみ通行税問題」を合わせて、静岡県とJR東海の因縁の対決と煽る向きもある。しかしそれは的外れだ。リニアと静岡県の問題は経済問題ではなく環境問題だ。JR東海が仮に山奥にリニアの駅を作っても、のぞみを静岡駅に止めても、静岡県は納得しない。

 JR東海は静岡県に誠意ある対応をすべきだ。しかし、誠意とはカネではない。

 ただし、「中央新幹線建設工事における大井川水系の水資源の確保及び水質の保全等に関する中間意見書」の前段を読む限り、静岡県側とJR東海の協議は進んでいるように見受けられる。現場はコツコツと取り組んでいるけれど、進捗(しんちょく)に業を煮やしたJR東海社長が「これでは間に合わない」と訴え、静岡県知事が「おたくのせいだろ」と反発した。それだけの話のようにも見える。

 愛知県知事が静岡県知事に対して「科学的に議論を」などとけん制しているけれども、本質から外れるからここでは問題にしない。リニア中央新幹線建設促進期成同盟会、中部圏知事会議の参加者は、まず「中央新幹線建設工事における大井川水系の水資源の確保及び水質の保全等に関する中間意見書」を読むべきだ。読まないで意見すれば「ボケかツッコミか分からないヘンなヤツ」と思われるだけだ。

(杉山淳一)

 

引用元☛https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190621-00000027-zdn_mkt-bus_all&p=1&fbclid=IwAR1bamQpWJyvQoziAY6qwWv1mEg7yUPPTOJ_NWlT_a3a7q9u_Dqi_UNAiQo

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^---引用ー

長万部町の地権者と一緒に、新幹線のトンネルの排水工事を見てきました。

黒岩町と長万部町との境辺りから山道に入ったところに、

立ち入り禁止の工事現場があります。

地権者と一緒に行ったので写真撮ってきました。

 

なると ヒカル

6月23日 11:27

北海道新幹線のトンネル工事ですが、大掛かりな、排水工事が行われています。

土砂運び出しトンネル開通と、水脈の破壊は、地権者に、無断で行われていて、

現地を見てきました。

工事名は、「北海道新幹線、立岩トンネル(ルコツ)

施工業者は 奥村・竹中土木・山田・近藤JV

 

画像に含まれている可能性があるもの:屋外

地権者にその規模を教えずに 勝手に掘ったトンネル。

左側の青いパイプから、排水が常時流れ出しています。

このトンネルを通り、10トン級ダンプが

ひっきりなしに土砂を積んで往来しています。

 

画像に含まれている可能性があるもの:屋外、自然

画像に含まれている可能性があるもの:屋外、自然

その水は、簡易プールに貯められ、

画像に含まれている可能性があるもの:屋外、水

常にたまらないように、近くの川に、流しています。

地権者宅では、水脈が壊れ為に井戸水が使えなくなってしまいました。

 

画像に含まれている可能性があるもの:屋外

 

引用元☛https://www.facebook.com/profile.php?id=100029739980391&fref=search&__tn__=%2Cd%2CP-R&eid=ARCnPDV7MTFuOwR871mhhHIYhsm30w8xK69EW0Rin4T7UbsD7F8omd_JLXle-2lIJ94FeT1oUsL9W3Ek

 

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^---引用ーー

JR東海株主総会 リニア開業遅れに懸念 

JR東海は21日、名古屋市内のホテルで定時株主総会を開いた。株主からはリニア中央新幹線への質問が相次いだ。静岡県との協議が難航している大井川の流量減少問題について、水野孝則取締役専務執行役員は「丁寧に協議を進めてきた。次の段階に進まなければ、開業の時期に影響を与えかねない」と改めて懸念を示した。

 

604人の株主が出席したJR東海の株主総会(21日午前、名古屋市内)

静岡工区は大井川の流量減少を巡る協議が難航し、トンネルの掘削工事に着手できていない。水野取締役は「利水者の心配を解消するため、湧水の全量を大井川に戻すと、丁寧に説明してきた」と理解を求めた。山梨県南アルプス市の沿線住民らによる工事の差し止め訴訟などを含め「地元への説明会を重ね、地域との連携を十分重視して進めていく」と述べた。

リニア建設を専任で担当する宇野護副社長は「リニアの開通で利便性は飛躍的に向上する。国家的な意義のあるプロジェクトだ」と強調した。

総会に出席した株主からは厳しい声が相次いだ。愛知県刈谷市在住の70代男性は「JR東海の説明が煮え切らなかった。JR東海と国のどちらが主導するのか曖昧だった」と話した。「開業が遅れて株価に影響が出ないか心配だ」と語った。名古屋市に住む男性は「『しっかり話し合う』というのは建前論だ」と述べた。「国土交通省に対応を求めるべきだ」との声もあった。

午前10時に始まった総会は3つの議案を原案通り可決・承認し、1時間42分で終了した。出席株主は604人で、昨年の680人を下回った。訪日外国人(インバウンド)対策や鉄道の安全対策に関する質問も出た。

 

引用元☛https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46405590R20C19A6L91000/?fbclid=IwAR1hGhDh3JfQ8YhhqUCFFjQMVv4c7Ipay-TOsc7WO-hcWREwn_OL22MR9Bo

 

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(*一部省略しています。書き起こしは時間がかかるので、誤字・脱字・変換ミス等はご容赦ください。「校正」より、記事のUPや 書き起こしに時間使っていますご理解ください。)