人気のソーシャル・ネットワーキング・アプリケーション(応用ソフト)の幾つかの運営会社は3日、中国本土でのサービスが不通になったことを明らかにした。香港では2日前の1日、大規模な民主化デモが行われていた。



 中国本土で携帯電話向け通話・チャットアプリの「LINE」や「カカオトーク」を利用する人々は1日以降、多くのサービスを使うことができなくなっている。両社のサービスが中国で大きな混乱に見舞われたのは今回が初めて。



 3日の時点で、米ヤフーの「フリッカー」もアクセス不能の状態だ。



 LINEとカカオは、両社のサービスの一部が中国でなぜ利用できなくなっているのか分からないとしている。ヤフーの広報担当者は電子メールで、「中国のユーザーからフリッカーにアクセスできないとの報告を受けており、当社チームが現在調査に当たっている」としている。



返還17年の香港で民主化求める大規模デモ

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 サービス不通のタイミングからは、中国政府が利用を制限する措置を講じた可能性がうかがえる。サービスは1日夜から不通になったが、このとき香港では民主化を求めるデモ行進が行われていた。中国政府は、微妙な時期に外国のウェブサイトやスマートフォン向けサービスを遮断することがしばしばだ。最近の天安門事件から25周年の6月4日もそうだった。



 国務院新聞弁公室の当局者にコメントを要請したが、回答はない。



 日本のLINEの広報担当者は、中国でいつサービスが復旧するか分からないと答えた。同社幹部は先月、中国には何億人もの潜在的ユーザーがいるため、同国でのプレゼンス拡大を目指す計画だと述べていた。



 カカオ(韓国・板橋)の広報担当者によると、中国で使える機能もあるが、新たに友人を追加したり、一部のエモティコン(感情を表す記号)を使ったり、通知をチェックしたりすることができない。担当者によると、1日夜にユーザーからの苦情が出始め、2日には大半の中国ユーザーに影響が及んだという。



 同担当者は、できるだけ早くサービスが完全に復旧することを望んでいると述べ、何がサービス不通の原因なのか分からないと付け加えた。カカオには1億4000万人の登録ユーザーがいるが、国別のユーザー数は公表していない。



 中国のLINEユーザーは、メッセージの通知を受けても、そのメッセージ自体にアクセスできない状態になった。携帯電話のユーザーは、カカオトークのアプリをダウンロードできても、登録はできない状態だった。



 LINEは中国での利用者は多くはないが、若いユーザーに人気であることが分かっている。こういったユーザーの多くはスタンプと呼ばれるエモティコンが好きで、同アプリを利用している。香港ではLINEの人気が高い。このため、香港での民主化デモのニュースを共有するために同アプリが使われる可能性があった。LINEは登録ユーザーが4億人を超えるとしているが、中国のユーザー数は明らかにしていない。



 地元のソーシャル・メディアでは、香港でのデモへの言及に対する厳しい検閲が行われている。それは、天安門事件から25周年の先月6日のサービス遮断を上回る厳しさだという。検閲を追跡する香港大学のサービス「WeiboScope」が明らかにした。



 インターネット検索大手の米グーグルのサービスの多くは、先月に完全に遮断されて以降、全くアクセスできない状態のままだ。アナリストは、これが中国政府が対策を強化していることの表れだと指摘する。中国政府はインターネット上の情報の流れを制御し、外国ネット企業の活動に制限を設けようとしている。



 中国の習近平国家主席は2012年の就任以降、政府によるインターネットの監視を強化する措置を講じている。同主席の下、中国政府はサイバーセキュリティーを強化する委員会を新たに創設したほか、多数のフォロワーを持つネット界の著名人たちにネット上でうわさを流すことについて警告したり、極めて強力なポルノ規制キャンペーンに着手したりしている。



 最近フェイスブックが買収することで合意した「ワッツアップ」や、中国の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)が創設した「微信(WeChat)」などといった他の人気のメッセージサービスは機能している。日本の楽天が今年買収することで合意した「バイバー」も中国で通常通り動いており、楽天の広報担当者によれば、接続に問題があるという報告はないという。