サイくんのプレゼント探し
サイくんはとても妹思いな兄である。その証拠に妹の誕生日プレゼントを何か月も前から気にかけている。去年はハンドメイドのネックレスを贈った。そのネックレスを妹は大層気に入り出かけるときは必ず身に着けているそうだ。ここまでの話を書いていて僕は羨ましくて仕方がない。思わず布でも噛みしめてしまいたいほどだ。まあ、それはいいとして。サイくんの目下の悩みは誕生日プレゼントのことだ。出来れば前回よりクオリティーを落としたくない。そしてハンドメイドにこだわりたいそう。そう思って探してみるとどうしても金額が高くなってしまうのだ。「なあ、1万2千円とかさ。それくらいからじゃないといいのが見つからないんだ。安いのがあったと思ってもSOLDOUTだろ。困ったよ。」とLINEで言ってくる。僕はサイくんに教えてやる。「高くなってもいいんだろうけど、でもお返しする方が困っちゃうぜ。同じくらいを返さなくっちゃってなるだろう?」「そっか。」そう簡単には妹へのベストなプレゼントは見つからないものだ。本当なら僕だって同じくらい悩んでいたはずだ。金にものを言わせてサイくんよりいいものを贈っていたかもしれない。(性格悪い)そうならなくて良かったのだ、と自分に言い聞かせる。何しろ僕は妹にすっかり嫌われているのだから。それは時間が解決してくれるだろうから、まあ横に置いておこう。「またネックレスじゃおかしいし、アクセサリーばかりなのも何だかなあ。」と、サイくんがブツブツと言う。それだけ悩めるだけ幸せなことを彼は知っているのだろうか。知らないだろうな。人は手前にあるほんの小さな幸せには気が付きにくいものだ。そのほんの小さな幸せを僕はどうやっても得ることが出来ない。以前、ハロウィーンの時、手作りで贈ったキーホルダーはすぐにゴミに捨てられてしまった。それからは妹になにも贈ろうとは思わない。あんなに残念で悲しい思いをしたくはないからだ。「でさぁ、金額だけどさあ。いくらが妥当なわけ?」そうサイくんは言う。「そうだな、いくらなんでも一万円くらいまでじゃないかな?うーん、高いかな・・・。」「兄妹の誕生日プレゼントの相場なんてどこにも載ってねぇよ。」そりゃ、そうでしょうね・・・。20歳越えてまで誕生日のプレゼントを妹にやる兄がいるのかどうかわからんからね。我が家は誕生日となるとなぜか大騒ぎになるのだ。サイくんは今21歳だがやはりケーキを買って部屋の電気を消しロウソクに火をともしてハッピバースディの歌を歌いロウソクの火をサイくんに吹き消してもらう。その時のサイくんの顔ときたらまるで子供である。頬を膨らまして。「何がいいかなあ。」そう悩むサイくんを見守りながら僕は良いアドバイスが出来たらと思う。そのアドバイスが生きたとしたら間接的に妹にプレゼント出来たことになるのだから。そしてサイくんの優しさを大切にしたいと思う。