五ヶ瀬は、初心者に対して容赦なかった。 しかも今日はたまたまイベントが開かれており、スキー客がごった返していた。初心者の自分らには練習しにくい環境だった。そして自分ら以外にコケている人なんて最初全くいなくて、皆シャーシャー滑っている。自分らは完全に浮いていた。 スキーは高校の頃、1回滑った事があるからと、完全になめていた。連れの友人はスキーが初めてで、ちょっと経験者ぶっていた自分は『ハの字型で停止・体重移動で左右に曲がる』事のみを教え、自分は先に‘初心者’向け『パラダイスコース』へと笑顔で消えていった。 ちょちょっと滑ってすぐリフトに乗って戻る予定だった。 初心者コースの、一段目の15°くらいの坂を何十メートルか滑ったのち、
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‘初心者’にとっては余りにも理不尽すぎる傾斜が急に現れた。 雪の感覚がつかめずまだ静止することすらままならなかった状態で、 上に引き返し上っていくのは無理だった。 滑るのを断念した人が下っていける階段らしきものも無い。 もちろん下に滑っていくという選択肢を始めに除外しての話だ。 滑る意外の方法で避難する方法がひとつくらいあってもよくね? 既にこの時点で心が折れそうだった。 どう考えても生きて帰れる心地のしない急傾斜。 一体どういうつもりでこれを‘初心者’コースに設定したのか。 この傾斜を前に15分ほど葛藤したのち、傾斜に板を傾けた。友人を待たせている事がとにかく気がかりだったからだ。 6年ぶりのスキー故、機転を利かして体重移動ができなかった自分は板を真下に向けたままスピードが制御できずもちろん転倒、ストック・板を何回も吹き飛ばしながらこの理不尽な傾斜を体を張って下るしか無かった。 1回転倒するごとに自分は途方に暮れ、そのうち他のスキーヤーが部品を拾ってくれ、恥ずかしさと情けなさをこらえながら子鹿のように起き上がり、それでも理不尽な傾斜はまだまだ続いていた。どんなにハの字にしても踏ん張ってもスピードを制御できない!! どうやって一番下までたどり着いたのか覚えていない。一体どれだけの精神的・肉体的絶望感、屈辱と恐怖を味わっただろう。 ようやくのリフトがあり、これでやっと友達の所に戻れると思うとどっと疲労感が押し寄せた。まだ午前中なのに。また、一日リフト券を買ってしまったもののこんな坂を再び滑ろうなんて事どう考えても思えず、一刻も早く友人と合流してあとは帰るのみだった。 リフトに乗ったはいいが、降りる予定だった友人のいる広場みたいな所の上をあれよあれよと通り過ぎながら、連れて行かれたのはさらに頂上の上級者コースだった。どうやら乗るリフトを間違えたらしい。地獄の沙汰以外何物でもなかった。 ここでは特に慣れた感じのスキーヤー達がひとりずつ、勢い良く滑っていく。どうやらここはそういう仕組みらしい。滑りに‘慣れている’スキーヤーたちが贅沢にもひとりずつ滑っていくというところに真に降り立ってしまった。ましてじっと立つことさえまだ儘ならない自分がここに降り立つ権利はないのだ。 再び『どうやってここから降りようか』との勝負が始まっていた。 上級者用滑走路で転ぶことなんてまず許されない。 そして自然の成り行きによるこの‘ひとりずつ’滑るというルールがさらにどん底に陥れる。人が滑るところをみんなが見ている。 この時の絶望感といったら、午前10時50分から11時20分の約30分、ここから下を見下ろしたまま、途方に暮れていたくらいだった。 同じスキーヤーが何度も私をこの頂上で見ただろう。 二回目はデジャブ、三回目にはさすがに何か特別な理由があってここに留まっていると悟ってくれたであろう。 数年に1回あるかないかの勇気を試されていた。あれからまただいぶ友人を待たせている。きっと不安を感じているに違いない。 『行くしかない』見た目の恥を捨て、ここは足を限界までハの字に開き雪の音をパサパサ立てながらトロトロ降りていった。コケなかったのは奇跡だ。 私がパラダイスコースに消えてからおよそ1時間半、圏外の為連絡が取れないままお互いすれ違いの時間を過ごしていたが、友人がさすがにこれはオカシイと感じ、もしや私が下でずっと待っていると思ったらしい。 しかし考えてほしい、全くの初心者を最初からひとりで滑らせるわけが無い。 友人は意を決してパラダイスコースをすべり出した。丁度自分が頂上の上級者コースで絶望の淵を彷徨っていたころのことだった。 広場に戻り、辺りを見渡したものの友人の姿はあるはずもなく、事情を知らない自分は不安の中じっと佇んでいましたが、そのうち向こうの方からパトロールのお兄さんが一直線にことらへ向かってきます。 『吉田さんですね??』 見知らぬお兄さんに自分の名前を呼ばれたことでピンと来ない訳がありません。すぐに友人のSOSを感じ取った。 お兄さんに連れられパラダイスコースを途中まで下っていくと、例の急に現れる理不尽な傾斜のところに、板を外して座り込む友人の姿が目に入った。お兄さんと私の登場で、塞ぎ込んだその顔に少なからず光が差しました。  
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友人は傾斜を前に、こんな風に体育座りして、30分くらいうずくまっていたそうです。そのまま放っておいたら雪だるまになっていたであろう手前でパトロールのお兄さんに声をかけて貰い、この状況がタダゴトでないことを察したお兄さんは、千人以上はいたであろうスキーヤーの中から15分足らずで私を見つけ出し、その友達の所へ連れて行ってくれたのでした。 パトロールのお兄さんが私たち二人の命を繋ぎ止めてくれました。 傾斜は容赦なかった。『パラダイスコース』と銘打たれたそのコースは、一連の出来事を通して容赦なく私たちを地獄へと誘っていった。 そのパトロールのお兄さんに少しレクチャーして貰うと、さっきまでの二人が嘘のように、1時間以上かけて必死に降りた同じコースを5分もかからず下りきるという目覚しい進化を遂げ、プロのレクチャーがいかに重要かということを二人して思い知らされました。しかし同時に、置かれた状況によって人は強くなれることも思い知りました。
その後、リフト一日券の元が十分取れたことは、言うまでもありません。
日記を書くことにしました

文章を書くことが苦手だから、文書をつくる練習も兼ねて♪
いや、練習がメインです!!

Yちんが読者第一号です♪


がむばりますо(ж>▽<)y ☆