きっとあなたが現れるだろうと
二時間も三時間も改札口に立ち続けたり
通りすがりにあなたが与えてくれる
一瞬の微笑で一週間生きたりする
こちらのほうをチラッと見てくれた時
こちらを認めたか認めないか分からないけれど
確かにこちらを見てくれたという
その身振りだけで勇気づいてしまう
ああ、ひとを恋するなんて…
あなたが使い古した鉛筆だとか消しゴムだとか上履きだとか
あらゆるものが異常に価値のあるものに思えたり
あなたの親たちがとても偉い人に見えたりする
言葉を発することがひどく難しいものだと初めて思い知ったり
どんなことであれ、あなたが一言いってくれれば
全身全霊を込めて何でもやり遂げる自信が湧いてきたりする
ああ、人を恋するなんて…
自分のすること一つ一つすべて
あなたの黄色い声で笑われているような気がする
でも、やっぱり、俺は下衆じゃないから腹を立てるつもりはない
けれど、それでいいんだというほどにはウジウジしていない
奪い取ろうとはできないけれど、引き下がるのもいやだ
ああ、人を恋するなんて…
顔をじっと見せ続けてくれ
どんなにすぐれた画家よりも
あなたを美しく描いてあげられる
けれど俺のほうを見て欲しくない
また一つ欠点を見つけられたくないから
俺はあなたのいいところだけを見る自信があるけれど
俺にはあなたに見せられるようなものが何もない 何もない
ああ、人を恋するなんて…
そう言う俺に、一言
「好きです」
といってくれませんか
それで初めて別れる決心がつきます
だって、それが愛のセリフではないことは
充分わきまえていますから
たんなる同情であると思っています
でも、「好きです」といって下さい
あなたへの想いを断ち切ることができますから
だけど
「嫌いです」
といわれたら…
※Beat Takeshi KID RETURNより抜粋