電気技師、配管工、建設作業員などのブルーカラー労働の技能職が米国のZ世代に人気です。インフルエンサーの動画が発端となっており、同世代の共感を招いています。背景には、ブルーカラーの収入が伸びていることがあり、逆に大学へ行くにも学費が増加し、物価上昇で生活費も増加しているので経済負担の大きい4年制大学へ行くよりも即戦力となれる技術を学べる専門学校などへの進学が注目されているのです。

 人工知能(AI)がホワイトカラーの仕事を奪うと危惧されているなか、ブルーカラー職はAIに仕事をとられる恐れがないと言われており、若い世代を惹きつけています。これまで大学で学位をとることがキャリア成功への最良の道であるという伝統的な認識がこれからはそうならないのではないかという考えが広がりつつあります。全米学生情報センターのデータでは建設専門課程、機械工・修理工コースといった職業訓練プログラムを提供する専門学校への入学者数が顕著に増えていることが明らかになりました。その一方で4年制大学や2年制大学への入学者数は減少傾向でした。

 この傾向は多くの家庭、今日の若者の大多数が高等教育への投資対効果に疑問を抱いていることを示していると専門家は述べています。実際、4年制大学の経済的負担は大きく、学生はローンを抱えて卒業する場合が多くなっています。それにもかかわらず明確なキャリアの方向性や実務経験がないため、学生は卒業後の働く場所を確保することに苦労することになり、就職しても転職を余儀なくされているのが実情となっています。

 多くの若者が4年制大学のコストや価値に対して懐疑的になっており、その結果、職業訓練プログラムへの入学につながっています。多額の借金をする必要がなく、デスクワークなしで自分自身のボスになれる高収入な仕事を若者たちは求めています。Z世代の54%が高卒でも安定した高収入の仕事が数多くあると思っており、実際、55%は副業をもって働いています。ブルーカラー職はまさにそういった仕事の一つと言えます。

 米国のブルーカラー労働者の平均時給は約4000円と日本と比べても非常に高いです。また、大学で学位をとるよりもブルーカラーの仕事に就くほうが早く稼ぐことができるので生涯賃金は大学卒より高くなる可能性があります。さらにブルーカラーの仕事には一般的に権威ある資格は不要で参入が容易です。

 これまでになくブルーカラーの仕事は現在、需要が高いです。米国のインフラ整備は遅れており、熟練した職人の半分以上が55歳以上で数年以内に退職すると予想されています。もし若い世代がその穴を埋めなければ深刻な人手不足になると指摘されています。米国のインフラ整備は喫緊の課題となっており、若年層の獲得は業界にとって最重要です。ブルーカラー職の需要は高く、年収もホワイトカラーとそん色なければ生涯賃金を稼ぎたければ若者の職業選択肢に入ってくるのは当然と言えます。

 SNSに電気技師・配管工・建設作業員といった技能職のインフルエンサーが作業の様子やコツなどを投稿し、肉体労働の厳しいイメージを覆す格好いい動画が若者の関心を集めています。米国で年間約1580万円以上を稼げるブルーカラー職は発電所作業員・放射線療法士・エレベーターの設置や修理作業員と言われています。速く稼げること・安定性・教育費の安さといった要素を兼ね備えたブルーカラー職は若い世代にとってますます魅力的な選択肢となるでしょう。多様な教育やキャリアの道がより広く受け入れられるようになれば、社会にとって健全なトレンドになってきたと言えます。