ウクライナの和平案を協議する「平和サミット」がスイスに開かれ2日間の日程を終えて閉幕しました、西側主要国や同盟国はロシアによる侵攻を非難しましたが、一部の新興国などは共同声明への署名を見送りました。サミットには90か国以上が参加し、ウクライナは新興・途上国の支持を得てロシアを孤立させたい狙いでしたが、中国が欠席したことにより達成が困難になりました。共同声明は幅広い支持を得るために異論のある問題が一部は削除されたにも関わらず、インド・インドネシア・メキシコ・サウジアラビア・南アフリカなどが署名を見送りました。

 ロシアのプーチン大統領はロシアがウクライナでの戦争を終結する唯一の条件としてロシアが自国領と主張する4州(ドネツク・ルハンスク・へルソン・ザポリージャ)からのウクライナ軍の撤退とウクライナのNATO加盟申請の即時取り下げを挙げています。加えてウクライナの非武装化や欧米諸国による対ロシア制裁の解除も要求しています。ロシアは当初、開戦後数日で首都キーウ、数週間でウクライナ全土を奪取できると踏んでいましたが、2年4か月近く過ぎた現在、ロシアの占領地は10年前に併合したクリミア半島を含め、ウクライナ領の約5分の1に留まります。この状況は当初のロシアの戦争目的を達成できなかったことを示しています。

 プーチン氏は「ウクライナの部隊や組織の安全な撤退を保証する」と約束し、ロシア政府はウクライナが世界の安定に果たす役割を認めていると説明、プーチン氏の挙げる戦争終結の条件を国際協定に明記することも求めました。しかし、ウクライナのゼレンスキー大統領はプーチン氏の「最後通告」を「信用していない」と述べ、プーチン氏の以前の提案と大差ないとの認識を示しました。

 6月初めに開催されたアジア安保「シャングリラ会合」でもロシアの裏に中国の支援があると指摘されていました。欧米諸国の経済制裁にも関わらずウクライナ戦争を継続してきたロシアの背景には中国の後方支援と協力があります。今回の「平和サミット」でも中国が欠席したというのはロシアが招かれていないことに呼応したものです。中国がロシアのウクライナ侵攻を長引かせ、ウクライナの「平和サミット」を妨害しているというゼレンスキー大統領の示唆は正しかったのです。プーチン大統領は中国に対して台湾問題支持を表明し、有事の際にロシア参戦も匂わせています。北朝鮮も同様です。ロシア・中国・北朝鮮は軍事同盟を結んだと言われています。

 インド・インドネシア・メキシコ・サウジアラビア・南アフリカなどが署名を見送ったのもロシア・中国の影響があります。インドは国益最優先からロシア・中国との関係悪化を避ける狙いがあります。インドネシアはイスラム大国であり、ガザへのイスラエル侵攻を受け、支援する米国に対する反発があります。ゼレンスキー大統領の警告通り、近い将来起こる台湾を巡る西側諸国とロシア・中国・北朝鮮との対決が来るのであれば、ウクライナ侵攻問題は台湾進攻の裏返しと言えるのではないでしょうか。中国・ロシア・北朝鮮は完全な同盟というかたちで国際社会に挑んでくるのでしょう。今回の採択に署名しなかったインド・インドネシア・サウジアラビア・南アフリカ・メキシコなどに対する対応策が自由・民主主義陣営は今後求められてきます。