経団連は、希望すれば結婚後も夫婦がそれぞれ従来の姓(苗字)でいられる「選択的夫婦別姓制度」の導入を求める提言を公表しました。国際化が進むビジネスの第一線で活躍する女性が増える中、旧姓を職場で通称として使用する日本独特の仕組みを「企業にとってビジネス上のリスク」と指摘しました。政府に対し、制度導入を盛り込んだ民法の改正案を国会に一刻も早く提出するよう求めました。

 経団連の調査では企業の現場では社員の税や社会保険等の手続きに際し戸籍上の姓との照合などの負担を強いられてきたほか、結婚・離婚といったセンシティブな個人情報を本人の意思と関係なく一定の範囲の社員が取り扱わなければならないことになっています。昨今、とりわけ長期的にキャリアを形成する女性、自ら起業する女性等の増加に伴い女性が不便・不利益を被る場面が増加しており88%の女性役員が「旧姓の通称使用」が可能である場合でも新姓への変更手続きをはじめ戸籍上の姓の変更に伴い不便さ・不都合・不利益が生じると思うと回答しています。

 国際的には夫婦同姓しか選択できない国は日本のみとされています。世界で人権意識がますます高まる中、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)は日本に対し人権侵害やジェンダー平等といった観点から夫婦同姓の強制を廃止するようこれまで3度の是正勧告を行っていますが自民党は拒否しています。その為この秋には6年ぶりに日本への定期報告審議を行う予定です。日本のジェンダー平等政策が国際基準に照らして審議されることから日本政府の対応が注目されています。

 企業では男女雇用機会均等法において労働者の募集・採用時に身長や体重等の要件を合理的な理由なく設けることや募集・採用・昇進・職種変更時に転居を伴う転勤に応じることを要件として設けることは女性に相当程度の不利益を与える「間接差別」とされ禁止されています。95%の夫婦において妻が改姓している現在の夫婦同氏制度は女性に相当程度の改姓による不都合・不利益を与える「間接差別」にあたる恐れがあるとの指摘もあります。

 さらに改姓による不利益・不都合を理由に結婚をあきらめる人や事実婚や海外での別姓婚を選択する人もいます。その中には人生の伴侶と別の姓にしたというよりあくまで生まれ持った姓を変えずに名乗り続けることを法律婚の選択肢として認めてほしいという声も多いです。配偶者と同姓となることも生まれ持った姓を維持することも選択できるようにすることがなぜできないのでしょうか。

 以前から日本のジェンダーギャップ指数は韓国や中国よりも下位に居続けている最下位に近いレベルで推移しており、問題とされています。特に政治・経済分野での遅れがひどく、今回の法整備も含めて政治・経済分野でのジェンダーギャップが足を引っ張っています。NHKの世論調査では選択的夫婦別姓に賛成が62%・反対が27%です。古い価値観を大切にしたいという気持ちはわかりますが、国際的に日本だけというのはどうなのでしょうか。選択できるという話に自民党がそれほど抵抗するのはなぜなのか、理解できません。