生成AI(ジェネレイティブAI)は、大量のデータからパターンを学習して、リアルなテキストや画像、音声などを生成する技術です。

 生成AIは、人間の知的作業全般に急速な変革をもたらしつつあり、そのインパクトは「第4世代AI」の方向性にも影響を与えています。また、生成AIは企業や個人が多様なアイデアを迅速かつ効率的に生み出すことを可能にしており、企業全体の生産性向上や業務プロセスの再設計、新たな顧客体験やサービスの開発などに活用されています。

 実際、中国のアニメーション業界では生成AIを積極的に導入し、イラストレーターやアニメーターは生成AIが作成した画像をサポートするだけの仕事しかありません。失業するイラストレーターやアニメーターも出てきており、人件費の相場も下がってきているとのことです。

 いま、株式相場をけん引しているNVIDIA社のAIは、データ処理を数時間から数秒に短縮します。同程度のCPU構成と比較して70倍以上の性能、20倍の費用対効果があると言われています。それだけ、業務を飛躍的に効率向上させるので、生成AIを使用したコンテンツ制作の現場は次々に新たな新作をリリースできる環境にきていると思われます。

 「AI」と「生成AI」の違いは、一言で表現すると「オリジナルコンテンツ創造の可否」にあります。従来のAIは「学習済みのデータの中から適切な回答を探して呈示する性質」を持っていましたが、生成AIは「0から1を生み出す」性質が特徴的です。すでに学習したデータを参考に予測した答えを返すのではなく、AI自身が自ら学習し続け、人間が与えていない情報やデータさえもインプットし、新たなアウトプットを人間に返すことができます。

 これまで0から1を生み出す作業は人間にしかできないものといわれてきましたが、生成AIの登場によって「アイデアの創出」さえもAIに任せられるようになり、より創造性の高い作業も自動化できるようになるのでしょう。

 懸念される点のひとつである「人間の仕事を奪う可能性がある」は、すでにアニメーターやイラストレーターで起こっております。また、「フェイクコンテンツを生成することがある」や「悪用されるリスクがある」については、アカデミー賞作品賞を受賞した「オッペンハイマー」の監督が述べていたようにAIが核兵器の発射ボタンを押す懸念があることに結びついてきます。

 2045年にシンギュラリティ(技術的特異点)が発生し、AIが人間の知能を超えたとき、社会に予測不可能な影響を及ぼすと仮説が一部に出ています。特に社会的・政治的な影響力のある情報が対象となった場合、深刻な結果を引き起こす可能性があることを私たちは認識しておかなければならないと思います。