中国・四国に家族旅行に行ってきました。外国人旅行者がどの観光地、どの交通機関でも多かった印象です。以前なら中国・韓国・台湾からの旅行者が主だったですが、今年は欧米からの旅行者も目立ちました。

 外国人旅行者が旅行先に日本を選ぶのは、円安が一番大きな要因だと思います。宿泊費が1泊3万円くらいで3週間滞在して約60万円しても、外国人旅行客からみれば、欧米の宿泊費は2倍するので、安く楽しめる日本が人気になっていると言えます。

 日本政府は、1963年に制定された観光基本法を改正、2007年に施行された観光立国推進基本法では、観光を21世紀における日本の重要な政策の柱として明確に位置付けています。日本が国際競争力をもって成長していくには、少子高齢化で地方が疲弊していく中、観光で稼げるかどうかだと思います。

 政府は、観光立国の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、観光立国推進基本計画を定めています。2023年3月31日に閣議決定した観光立国推進基本計画では、コロナ禍で大きく落ち込んだ訪日外国人旅行者数、訪日外国人旅行の消費額、消費額単価、訪日外国人旅行者一人当たり地方宿泊数を早期に令和元年水準に戻すことが基本方針のひとつに定められています。

 特に宿泊単価をはじめ、価値に見合った価格設定は重要です。日本は長らくデフレに晒され、価格低下圧力が続いたため、価格上昇についてはあまり考えられなかったと思います。物価上昇や円安からコストを見直し、価値に見合った価格設定は、持続可能な観光地域づくりの戦略として肝となるものです。

 国は、基本的施策として、国際競争力の高い魅力ある観光地の形成、観光産業の国際競争力の強化及び観光の振興に寄与する人材の育成、国際観光の振興、観光旅行の促進のための環境の整備に必要な施策を講ずることとしています。

 円安という強い追い風により、訪日外国人旅行者が増えている中、外国人にとって、日本への旅行経験が、一過性に終わるか、口コミを呼び、更なる拡大するかは、大きな岐路となります。持続的な外国人旅行者数の増加基調がつくられれば、地域の雇用も新商品やサービス開発に向けた新規投資も行っていくことができます。

 観光立国の実現に関する施策の基本理念として、地域における創意工夫を生かした主体的な取り組みを尊重しつつ、地域の住民が誇りと愛着を持つことのできる活力に満ちた地域社会の持続可能な発展を通じて国内外からの観光旅行を促進することが、将来にわたる豊かな国民生活の実現のため特に重要であるという認識の下に施策を講ずべきこと等を定めています。

 訪日外国人旅行者の声を聴き、アンケート調査も行いながら、地域が持っている素材をいかに活用して応えていくかは、考えるポイントとなってきます。これまでの基本計画では訪日外国人旅行者数だけにこだわっていましたが、外国人旅行者一人当たり旅行消費額をいかに増やせるかといった「質」の向上が大切です。

 普段から外国人旅行者が求めている商品・サービスの開発を意欲的に取り組んでいく必要があります。持続可能な観光を前面に押し出して、地球環境問題とともに、地域経済をいかに活性化させ、地域社会の持続可能性を高めることを主眼に置いていかなければなりません。

 実質賃金が低下し続けている現状では、日本人旅行者の数や消費額については厳しいと言わざるを得ません。コロナ禍からの回復として、国内旅行者への対策も行わなければならないと思いますが、まずは国際基準にあわせた価格設定と稼げる産業にすることが優先だと思います。日本全体が「稼げる地域・稼げる産業」を実現することができれば、日本経済の持続的な成長は見えてきます。