明智光秀6話目②



*ネタバレしていますので、ご注意ください*



蝶々エピソード 6蝶々


義元 「光秀のところの女中か」


「は、はい・・・」


義元はなめるように、下からゆっくりと私を見る。


義元 「・・・顔がよく見えないな。もっと近くに寄れ」


「え?」


私が恐る恐る足を踏み出そうとすると、光秀様がそれを手で制した。


光秀 「これ以上近づくな」


義元 「・・・ふん、しらけることを言うな」


でも、光秀様は義元様の挑発には乗ろうとしない。


光秀様は、真っ直ぐ義元様を見据えていた。


光秀 「話は何だ。和歌を詠むために、私を呼んだわけではないだろう」


義元 「ふっ」


義元は鼻で笑った。


義元 「その通り。用があるのは、俺じゃない」


?? 「私だ」


柱の陰から、忍びの格好をした人が現れた。


光秀 「お前は・・・百地丹波!」


五右衛門 「師匠じゃねえか!」


光秀 「どうやってこの島に入り込んだ」


百地 「こんな手薄な警備の島にもぐり込むことなど、虫を捻りつぶすようなものだ。ところで、明智光秀殿、二人だけで膝を合わせて話がしたい」


光秀 「・・・すぐ戻る。心配するな」


「はい・・・」


光秀 「五右衛門、○○のこと頼んでぞ」


光秀様は険しい表情で、百地様とお部屋を出て行った。



無言の時が過ぎていく。


(光秀様・・・遅いなぁ)


そう思ってときに義元が急にふっと笑った。


義元 「光秀が何の話をしているのか、気にならないのか?」


突然、義元様は立ち上がって私の方へ歩いてきた。


五右衛門さんが、立ち上がって行く手をふせごうとした。


「え・・・!?」


グラッと五右衛門さんがよろめいた。


義元様が鼻で笑う。


五右衛門 「その香は、師匠のしびれ香か!」


体に力が入らない。


五右衛門 「それ以上、○○に近づくんじゃねぇ!」


義元 「触るな、下郎」


次の瞬間、五右衛門さんは床に投げ飛ばされていた。


義元 「女中、お前、男の体臭に酔ったことはないか?」


義元様は、私のすぐ目の前で立ち止まった。


無表情のまま私に手を伸ばす。


私はぎゅっと目をつぶった。


?? 「何をしている」


ぱっと目を開くとそこには光秀様が立っていた。


「光秀様!?」


義元 「女が香に酔ったというのでな、背中をさすってよろうと思ったのだ」


光秀 「話は終わった。これで帰らせてもらう」


光秀様は、私の肩に優しく手を掛けた。


私が立ち上がれないのに気づくと、鋭い視線を義元様に向ける。


立てない私の体に手を回す。


ふわりと体が宙に浮いた。


「あ、あの・・・」


私は、光秀様に抱き上げられていた。


軽々と私を抱きかかえて歩き出す光秀様。


「自分で歩けますからっ・・・!」


光秀 「いいから、島を出るまでじっとしていろ」


私は光秀様に支えてもらって、舟へと乗り込んだ。


光秀 「怖い思いをさせてすまなかった」


「いえ。光秀様がお守りくださったので・・・」


その時・・・


急に背中が暖かくなった。


光秀様の腕がぎゅっと私の体を締め付ける。


「み、光秀様!?」


私を包み込むように光秀様は私を後ろから抱きしめていた。


光秀様の私の襟元に顔を埋める。


途端に目から涙が溢れ出した。


止めようとしても、次々に滴が光秀様の腕に落ちていく。


私が泣き止むまで、ずっと光秀様は抱きしめていてくれた。


五右衛門 「結局、師匠はあんたにどんな話を持ちかけたんだ?」


光秀様はその質問には答えようとしなかった。


「私は何があろうと、光秀様についていきます・・・」


そう言うと、光秀様の手をぎゅっと握った。




怖~い、義元!!


光秀が助けてくれなかったら・・・


確か、今川義元って武田信玄のときに出てきて


家康が幼少の頃に、人質にされてて


危険な人だって言ってたような気がする・・・