歯科金属の種類を一覧形式で紹介します。それぞれの歯科用金属の成分や特徴について説明します。
歯科用金属とは?
歯科用金属とは、詰め物や被せ物、入れ歯などの歯科治療に用いられる金属材料の総称です。金や銀、パラジウムなどの貴金属系と、ニッケルやコバルト、チタンなどの非貴金属系に大別され、強度・耐食性・加工性などの特性に応じて使い分けられます。
歯科金属の種類一覧
金銀パラジウム合金
金銀パラジウム合金は、一般的に「金12%以上・パラジウム20%以上・銀40%以上」の鋳造用合金で、保険のインレー・クラウン・ブリッジなどで頻用されます。
代表例では金12、パラジウム20、銀46、銅20、その他2%(亜鉛・イリジウム・インジウム等)で構成されます。密度は11.5と中〜高比重であり、硬さは熱処理によってHV166(軟化)からHV280(硬化)まで調整可能です。耐食性は銀合金より高いものの、口腔内の薬剤や環境によって変色が生じる場合があります。
用途はインレー、クラウン、ブリッジ、クラスプ、バー、鋳造床など幅広く、臨床実績が豊富で強度調整がしやすい点が利点です。
一方でパラジウムなどにより遅延型金属アレルギーの原因となる可能性があるため、既往歴がある場合は材料変更やメタルフリー化の検討が必要です。
銀合金
歯科鋳造用銀合金は銀60%以上を基本とし、第2種ではインジウム5%以上および白金族元素10%以下を含む、金を含まない鋳造用合金です。代表例では銀70、インジウム21、パラジウム5、その他4%(亜鉛・イリジウム・アルミニウム等)で構成されます。密度は10.0、硬さはHV135、引張強さは450MPa、伸びは22%とされ、機械的性質と加工性のバランスに優れています。
臨床用途はインレー、クラウン、キャストコア、短いブリッジなどで、コスト面の優位性と低融点による鋳造のしやすさが特徴です。
ただし銀は硫化しやすく黒変しやすいため、外観の長期安定性や耐食性は金銀パラジウム合金より劣る傾向があります。またパラジウムやインジウムを含む製品もあるため、金属アレルギー既往の患者には十分な説明と代替材料の提示が重要です。
金合金
金合金は金を主成分とし、銀や銅で硬さや鋳造性を調整し、白金やパラジウムで強度や耐食性を高める設計が一般的です。高金合金(タイプIVの例)では金71、白金4.9、パラジウム10、銀8、銅6、その他0.1で構成され、密度15.1と高比重で、硬さは熱処理によりHV170からHV320まで調整可能です。クラウンやブリッジ、義歯部品など広範な用途に対応します。
一方、低金合金(例:金35%)では金35、白金1、パラジウム12、銀39.2、銅12などで構成され、強度は確保されるものの、貴金属量が少ないため腐食や変色への配慮が必要になります。
加工性と性能のバランスが良い点が利点ですが、パラジウムによる感作リスクが残るため、症状がある場合はチタンやセラミックの選択も検討されます。
ニッケルクロム合金
ニッケルクロム合金はニッケルを主成分とし、クロムによる不動態皮膜で耐食性を確保する非貴金属合金です。代表例ではニッケル63.9、クロム15.1、マンガン5、ニオブ5、その他11%(モリブデン等)で構成され、密度8.1、硬さHV350と高強度を有します。
補綴物や金属床、クラスプなど幅広い用途に使用され、コスト面でも優れています。しかしニッケルは金属アレルギーの原因として頻出する元素であり、過敏症の既往がある場合は使用が禁忌となります。
さらに、研磨不良や酸性環境などによって金属イオンの溶出が増える可能性があるため、材料選択と加工管理が安全性に直結します。
コバルトクロム合金
コバルトクロム合金はコバルトを主成分にクロムやモリブデンを加えた合金で、高剛性と耐食性を兼ね備えています。代表例ではコバルト60.6、クロム33.0、モリブデン5.0などで構成され、密度8.2、硬さHV345と高い機械的強度を示します。
義歯の金属床やフレームワークに多く用いられ、薄くても変形しにくい設計が可能です。クロムの酸化皮膜により耐食性は良好ですが、研磨状態や口腔内環境によっては腐食が進行する場合があります。
強度とコストのバランスに優れる一方、コバルトやクロムもアレルギー原因となる可能性があるため、患者の既往歴に応じた材料選択が重要です。
ステンレス鋼
ステンレス鋼は矯正ワイヤーや歯科器具に広く用いられ、代表的なSUS316系ではクロム16〜18、ニッケル10〜14、モリブデン2〜3を含みます。密度は約7.98で、耐食性はクロムによる不動態皮膜によって確保されます。
加工性や強度に優れ、臨床での取り扱いが容易な点が利点です。ただしニッケルを含むため、アレルギーのある患者では注意が必要です。
また加工条件や表面状態によって腐食挙動やイオン溶出が変化し、ワイヤーでは疲労破壊のリスクもあるため、品質管理が重要となります。
チタン系
チタンは強固な不動態皮膜により非常に高い耐食性を持ち、密度も小さいため軽量な歯科装置の製作が可能です。純チタンはチタン99%以上で構成され、チタン合金ではアルミニウムやバナジウムが添加され強度が向上します。
代表例として、純チタンは耐力483MPa以上、チタン合金は795MPa以上と高い強度を示します。
用途はインプラント、クラウン、義歯フレームなど多岐にわたり、生体親和性が高くアレルギーが起こりにくい点が大きな利点です。ただし完全にリスクがないわけではないため、既往歴の確認と経過観察が必要です。
金属アレルギー関連の注意点
歯科金属アレルギーは、口腔内で溶出した金属イオンが体内で免疫反応を引き起こすことで発症します。特にニッケル、コバルト、クロム、パラジウム、金、白金などは陽性率が高い金属とされます。
そのためニッケルクロム合金やコバルトクロム合金、金銀パラジウム合金などは注意が必要です。症状が疑われる場合は皮膚科でパッチテストを行い、原因金属を特定した上でセラミックや樹脂、チタンなどへの置換を検討することが重要です。
まとめ
歯科金属には多様な種類があり、それぞれ強度・耐食性・審美性などの特徴が異なります。どの素材が適しているかは、治療部位や予算、金属アレルギーの有無によって大きく変わります。
大切なのは、特徴を理解したうえで歯科医師と相談し、自分に最適な素材を選ぶことです。納得のいく治療のためにも、事前にしっかり比較検討しておきましょう。
