Lundis Bleus...

フランス語で直訳すると憂鬱な月曜日。転じて、月曜からユル〜く行こうよ、という意味を込めた名前のブランド。それがランディブルーです。

創業者の『その昔時計師は、たいてい日曜日は飲んだくれて、月曜日は二日酔いになっている。僕もそんな生き方がしたい』という思いからこの名前にしたそう。

いいね、放蕩としていて。

このブランドは私がエナメル文字盤の時計をひたすら探していた時に知りました。2016年創業の非常に新しいメーカーですが、グランフー・エナメル文字盤の時計を破格で提供する面白いブランドです。

シェルマン主催のスポット展示会なんかが東京ではありましたが、常時取扱いしているのは奈良の小柳時計店さんのみのようです。で、私は実際見に行きました。

外装というか、ダイアル全振りの突き抜けた時計です。


Contemporaines Royal Blue / LANDIS BLEUS 

Ref:1120.EU.BR
ケース径:40.0mm
ケース厚:11.0mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:カーフ・レザー
バックル:ピンバックル
防水性:3気圧(30m)
価格:470,000円(税抜)

鮮やかな青の文字盤に目が奪われますが、これがロイヤルブルーのグランフー・エナメル文字盤を持つブランドのアイコンモデルです。

こんな鮮やかな青色の文字盤を見たことがあるでしょうか?近づいてみると海面テクスチャ仕上げの下地が浮き上がってきます。この下地はスターリングシルバー製の地板をハンドメイドで仕上げた物になっています。

その上から焼成されたエナメル・ダイアルは、特有の光沢がある鏡面仕上げなっています。この伝統技法に則って完全にインハウスで製造されるダイアルがランディブルー最大の特徴です。


なんだか目がチカチカしてきて、時間を読むどころの話ではなくなりそうですが、50万円以下でグランフー・エナメルのダイアルというのは希少です。

往々にしてこうした手の込んだ仕上げは、貴金属ケースなどと組み合わせて200万円を超えるような価格でリリースされています。

インデックスとブランドロゴはプリントで、針は中空のロジウムプレート仕上げです。ケースは浅いボウル型にラダー型のラグを合わせています。

ラインナップを見る限り、ランディブルーの時計のケースと針はこのパターンのみで、こうした効率化によって価格を抑えています。



型番:SELLITA SW 300-1
ベース:-
巻上方式:自動巻
直径:25.6mm
厚さ:3.60mm
振動:28,800vhp
石数:25石
機能:センター3針
精度:-
PR:42時間

ムーブメントはセリタSW 300-1を搭載しています。おなじみETA 2892-A2 相当の機械ですので、汎用ムーブメントとしては、薄型の上位機種です。

ムーブメント開発能力のない独立系中小メーカーの時計としては良い機械を載せていると言って良いでしょう。

面白いのは、日本向けにミヨタムーブ版を提供している点です。MIYITA 9015を搭載しているバージョンは、価格が税抜35万円12万円も安くなっており、バーゲンプライスです。

というわけで、ダイアルに全力投球しているランディブルーですが、そのバリエーションが半端ないので、ここからはそれを幾つかご紹介しましょう。


Contemporaines Random Abstract Mosaic  / LANDIS BLEUS

これもエナメル文字盤です。11色の釉薬を織り交ぜた神秘的なカラーリングとなっていますが、紛れもなくグランフー・エナメル技法によって焼成されたダイアルです。

非常にユニークな表情ですね。人と被るという事はまず無いでしょう。深みのあるモザイク模様はもはや工芸品です。


Metiers d’Atr Sea of Japan Silver / LANDIS BLEUS

ハイエンドにはクロワゾネ技法を用いたエナメル文字盤もあります。金線で区画割りして、何度も何度も焼成して絵を描くという非常に手間のかかる技法です。

これは完全に美術品の域の技法であり、時計の装飾としては最高峰のひとつに数えられます。

これが税抜1,285,000円なのですが、クロワゾネエナメルの時計としては破格です。

といってもSSケース、汎用ムーブの時計でクロワゾネなんてライバル不在なので比較のしようも無いのですけど。

日本がモチーフというなんとも親日的なデザインですね。


Contemporaines Onyx  / LANDIS BLEUS

彼らの作品は何もエナメル文字盤に限ったものではありません。これはブラックオニキスを文字盤に使ったモデルです。

こちらはコンテンポラリーなデザインで、非常に格好いいです。

時刻合わせは難しいですし、そもそも今何時なのかもよく分かりませんが、デザイン性重視ですから細かい事は気にしてはいけません。

エナメルモデルとほぼ価格が同じ(税抜455,000円)という点に関しては、ん?そうなの?と思わせます。


Contemporaines Malachite  / LANDIS BLEUS
天然石シリーズは他にも色々あるのですが、このマラカイトをはじめ、いずれも時計の文字盤としてはかなり異色です。

これいつ着けたらいいの?と一介のサラリーマンである私なんかは思うのですが、ファッション業界で働く人や、芸術家、作家などクリエイター的な方には似合うかもしれませんね。

独創性が現れたユニークな時計です。

価格は税抜598,000円とエナメルより高いです。面白いですね。世の中のエネメルってぼったくりなの?という疑問を抱かせます。

<モデル名不明>
出典:instagram #lundisbleus

一般市民による普段使いにはハードルが高すぎる奇抜なデザインが多めな中で、私が実物を見に行った際に最も惹かれたのは上のモデルです。

現在メーカーやディーラーのHPには載っていないのでディスコンかも知れないですが、ピュアなホワイトエナメル文字盤の時計です。

これを見て何かを連想しませんか?


そうです。これ↓です。


叡智Ⅱ / CREDOR

Ref:GBLT999
ケース径:39.0mm
ケース厚:10.3mm
重量:99g
ケース素材:プラチナ
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:クロコダイル・レザー
バックル:ピンバックル
防水性:3気圧(30m)
価格:5,700,000円(税抜)

いや、叡智は白磁ダイアルだろ。と言われればその通りです。

しかしポーセリンエナメル、日本語では磁器と琺瑯(ほうろう)、地板が土か金属かという違いはもちろん大きな差としてありますが、表面はどちらも釉薬を焼き付けたものです。

従ってその表面の質感は類似しており、腕時計の文字盤の質感としては極めて特徴的です。

これほどシンプルな見た目でありながら、非常に高い技術が注ぎ込まれているという点も共通しています。

叡智Ⅱはプラチナケースで税抜570万円とあまりにも高額です。文字盤の雰囲気が似てるだけですがランディブルーならその十分の一ほどの価格ですから、かなりバリューは高いと言えるでしょう。

<初代 叡智 2008>
出典:HODINKEE 

叡智に少し話を戻すと、個人的には2008年に35mm径で登場した初代 叡智により惹かれます。シンプルなドレスウォッチはこれくらいのサイズの方が絶対的に優雅だと思うのです。

これは国産ウォッチメイキングの到達点と言っていい芸術作品ではないでしょうか。

シンプルな美という日本的美意識を突き詰め、我が国の伝統工芸の技を投じた、これ以上の表現があるんでしょうか?

機械式至上主義者の私としてはスプリングドライブという駆動方式がやや引っ掛かるので、クレドールには機械式の手巻きでこの白磁ダイアルの時計を作って欲しいです。

それが出たら自分のコレクションも終わるのではないかとさえ思えるほどです(もちろん、そんな筈はないんですが笑)。


ちょっと話が逸れてしまいましたが何が言いたいかというと、ダイアルとは時計の顔であり、その表現に対して凝らされた卓越した技術には、抗いがたい引力があります。

このランディブルーなんてのは、人によっては一点豪華主義のバランスに欠けた時計と映るかも知れませんが、それが逆に魅力という部分もあるのです。

顔は超絶イケメンだけど頭スッカラカンの、でも不思議と憎めない奴みたいな。

例えがイマイチですが笑

私の唯一の希望は一回り小さくして下さい、という事です。それが成れば、また遥々奈良まで見に行くかも知れません。