いいもの揃ってます
ホワイトダイアルにブルーの針とインデックスが爽やかです。こちらも非常に魅力的な顔立ちだと思います。
20万円もの予算があればかなり色々あります。並行輸入品ならタグホイヤーすら買えますからね。
SARX049 / SEIKO PRESAGE
まずはセイコー・プレザージュから。国内メーカーはこの価格レンジも非常に層が厚いです。一見普通の3針デイトのドレスウォッチですが、この時計の最大の見どころは琺瑯ダイアルにあります。
ホーロー鍋とか言いますが、その琺瑯(ほうろう)です。英語ではenamel (エナメル)。そう、最高級ブランドにおいてよく用いられるエナメルダイアルの事です。
エナメルダイアルというと200万円を優に超えるような時計で用いられる仕上げです。私が知る限りは海外メーカーなら安くても100万円はしています。
それがなんと10万円(税抜)。これはお買得過ぎます。私の様に見た目重視の人間からするとエナメルダイアルのモデルは是が非でも一本は持っておきたい所。それが10万円で叶うなんて!
という事で、この時計の存在を知った時はすぐさま現物を見に行きましたが、結果購入には至りませんでした。理由は質感に納得いかなかったからです。
実物を見ると本当にホーロー鍋って感じでした。比較の為にブレゲやユリスナルダンのエナメル文字盤も見ましたが、表面の凹凸や光沢がまるで違うと感じたのです。
ブレゲなどは確かにエナメル質の光沢はあるのですが、とにかく表面が滑らかで美しいダイアルなのですが、それと比較するとこのセイコーはやや凹凸が目立ちますし、ホーロー鍋の様にヌルッとした光沢があるのです。
20倍以上の価格のブレゲと比較するのが間違っているとは思いますが、こればかりは好みもあります。しかしSARX049の琺瑯ダイアルは紛れもなく焼成エナメル技法で作られている極めて貴重な仕上げである事には違いありません。
この技術を持つ職人は世界中を見渡しても僅かと言います。つまりSARX049もいつまでも安定的に供給される保証はありません。ひょっとしたら今はとんでもなく貴重なものを考えられないくらい安い値段で手に出来る状態なのかも知れませんよ。
最大の見どころが琺瑯ダイアルである事は間違いないのですが、デザイン自体もクラシックで私は好きです。優美な曲線のラグ、細身のローマンインデックス、青塗のリーフハンド、ユニークな秒針など、シックながらアクセントもある優れたデザインだと思います。
セイコー製ですから当然ムーブメントは完全自社製です。搭載する6R15は50時間パワーリザーブの自動巻3針デイト、手巻付き、秒針ハック機能付きムーブメントです。
精度は日差 -15/+25秒と鷹揚ですが、全ての面でセイコー5(#18参照)の機械には勝ります。
ケースサイズは径40.5mm、厚12.4mmで、重さも88gと軽量なので取り回しは容易です。3針デイトで12.4mmは厚すぎだろと思いますが、セイコーは基本的に分厚いです。
6R15は3針デイト仕様で5.3mmもの厚さがあります。汎用ムーブメントとして広く普及しているETA2892 (セリタSW300)が3.6mmという事を考えると、結構劣っていると言わざるを得ません。
それでもSSケース、サファイア風防、サファイアシースルーバック、クロコダイルベルト、100m防水、プッシュボタン式三つ折りDバックルとダイアル以外もなかなか豪華仕様です。
これで10万円ですから、正直かなりバリューは高いと思います。私も一度は見送ったもののもう一度試着してみようかなと思っています。
因みに同じシリーズでクロノグラフのSARK013というモデルもありますが、ケース径42mm、ケース厚14.9mmとなって25万円です。ドレスウォッチなのに厚さ15mmとか、いったいどんなシーンで着けるんでしょう。理解不能です。
恐らく針も3針モデルと共有なせいで、短く見えます。こういうのって一度気になるともう無視できません。
<SARK013 / SEIKO PRESAGE>
という事でMinority’s Choice のお勧めは断然3針のSARX049です!
Heritage Gothic (Ref: RK-AW0003S) / ORIENT STAR
ポルトギーゼじゃないですよ。オリエントスターです。しかしキレイな時計ですね。6時位置にスモールセコンド、12時位置にパワーリザーブ・インディケーターを配することで、一瞬縦目のクロノグラフかと思うフェイスになっています。
ケースはSSにPG色メッキですが、いい色出てると思います。ただしやはりメッキのテカリは安っぽいですね。ダイアルはサンレイ仕上げ。さらにアワーマーカーはアプライドと、フェイスの上品さはかなりのもです。
ケース径39mm、ケース厚12.5mmと、これもスモセコ3針にしてはやや厚いですが、扱いやすいサイズ感ではないかと思います。
風防はサファイア、裏蓋はミネラルガラス、50m防水に革ベルト、プッシュボタン式三つ折りDバックルという構成です。価格帯を考えれば妥当な所でしょうか。
搭載するキャリバーF6G42はスモセコ3針デイト+パワーリザーブ・インディケーターの自動巻自社製ムーブメントです。50時間パワーリザーブで日差 -15/+25秒、手巻付き、秒針ハック機能付きなので能力的にはセイコーの6R15と同等です。
定価8万4千円(税抜)はリーズナブルではないでしょうか。
デザインが露骨にポルトギーゼに寄せているという批判は免れ得ませんが、むしろそれを39mmでやってくれてありがとう、という人もいるでしょう。
オリエントといえば私が忌避するオープンハートのデザインを乱発するので、あまり好きになれないのですが、ダイバーズやこのヘリテージ・ゴシックはデザインが好みです。
ちなみに色違いでシルバーのSSモデルも存在します。こちらはカラーリング含めてますますポルトギーゼそっくりですね。
<Heritage Gothic (Ref: RK-AW0004S) / ORIENT STAR>
当然ケースのエッジや仕上げのレベル、ダイアル仕上げの質の高さなど、あらゆる面でポルトギーゼが圧倒していますが。
Khaki Field Murph Auto / HAMILTON
本日ラストはハミルトンです。米国発の大衆ウォッチ・メーカーの代表格として知られていますね。そのハミルトンの中でもカーキ・コレクションは人気のシリーズです。
その中でもこのマーフは映画インターステラーの劇中で使用された時計という事で、ハリウッドとのコラボ作品になります。映画自体もそこそこ面白かったです。長いけど。
こういったコラボ作品は価格に謎のプレミアムが乗ってくるので通常私は相手にしないのですが、これについてはデザイン自体が気に入っているのでご紹介します。
カーキ・コレクションはミリタリーテイストのダイヤルが特徴的ですが、このマーフはシンプルながら黒文字盤にベージュの色使いがマッチしています。何よりコブラと呼ばれる時針のデザインが他のカーキと違ってアンティーク調で良いです。
サイズはケース径が42mmと結構大きめです。厚さは11mmとスリムです。ただし写真を見てわかる通りラグが長く、これを入れると縦は実に52mmにも達します。
この大きなサイズ感が個人的には最も悔やまれます。縦に52mmもあると正直私には大き過ぎます。36-38mmくらいだったら言うことなしだったのに。
ムーブメントは80時間パワーリザーブを誇るH-10。ハミルトンはスウォッチグループの一員ですので、このH-10はETA C07.611ベースのセンター3針デイトの機械です。
裏スケなのでH-10の姿を見ることもできます。ローターはくり抜きやヘアラインなど仕上げが施されていてナイスです。ケース全体の仕上げも結構レベル高いと思います。
また、ベルト幅が22mmと太めなので正面からの表情が力強い印象になっています。このためラグもやや外側に寄っていて長さもあるのでケースのシルエットに独特の力強さがあります。
80時間のロングリザーブに加え、SSケース、サファイア風防、カーフレザー・ストラップ、100m防水と実用性も非常に高いです。
これが11万円(税抜)であれば十分お買得です。本数は2,555本限定らしいですが、それだけあれば入手には苦労しないでしょう。むしろ売り切れるのか心配になります。
5-20万円とか言いながらほぼ10万前後になってしまいましたが、いずれもルックスに特徴があって面白い時計です。全部欲しいですが、敢えて一本あげるならやっぱり琺瑯ダイアルですね。