わたしは今、沖縄の西表島にいる。
東京に一旦帰省し、また島に戻ってきた時のこと。
西表島へは、成田空港から飛行機で石垣島へ行き、そこからフェリーで向かう。
今回は石垣島のゲストハウス" こねくと "で一泊し、
仕事のため、翌日の朝一のフェリーで帰る予定だったのだが、逃してしまった。
理由は、ストイックにギリギリまで散歩をしていたら、間に合わなかったから。
職場にフェリーを逃したことを伝えると、「今日まで休みにしてたよ」と、なんともラッキーな返答だった。
西表島到着後、
島のターミナルで無料送迎バスを待っていた。
といっても、
それらしきバスはあるのだが、運転手がいない。
困った表情の4人ほどが、バスの周りでたむろしていた。
暇なので、辺りを見渡すと、
見るからにかわいらしい、白い帽子をかぶった女の子が、バスを探して歩き周っていた。
近寄って、話しかけた。
私 「バス、探してますか? 多分あれだよ! 運転手いないけど。」
女の子 「え、そうなんですね! よかった~!」
彼女の声はか細くて、すごく高かった。
そしてゆっくり話す。
私の声は、彼女ほどか細くはないけれど、結構高い。
びっくりするほど二人の声と、喋り方と、発声方法が似ていた。
こんなの初めてだった。
[まじか!? 真似してるのかな? よく真似されるしな。]
と思ったのだが、
[もしかして、本当にこういう子なのかもしれない]
と好奇心が湧く。
私 「バス、となり座ってもいいかな?」
女の子 「いいですよ~!」
運転手さんも現れ、バスへと乗り込んだ。
彼女は、沖縄本島から旅している21歳。
横浜でのアパレルを辞め、本当はピラミッドを見に行きたかったそうだが、
親に反対されて、とりあえず沖縄に来たそうだ。
喋っていると、声が似すぎてどっちが話しているのかわからない、
という謎の気持ちになった。
そして、顔自体は似てないけれど、顔面の攻撃力の無さも似ていた。
(たれ目、とかそういうこと)
女の子 「キャンプ場に泊まってます! 友達もいるので遊びに来てください!」
と最後に教えてくれて、彼女はバスを降りた。
もちろんその晩、遊びに行った。
キャンプ場には、二人の友人がいた。
ちょうど、夕食のバーベキューをしているところだった。
友人は二人とも旅人で、
一人は、日本全国を自転車で周ったチャリダーであり、
山の縦走や野湯が大好きな自然系アクティビティ女子26歳。
もう一人は、ITで3年働いた後、現在旅3年目、本州諸々は行き尽くしたので、離島巡り中の、パスタと菓子パンで食いつなぐ節約男、川上さん(31)だ。
3人の接点を聞くと、同じ時期にゲストハウス" こねくと "に宿泊して仲良くなったという。
私も昨日、泊まってた!
まさにこねくとしたようだ。
友人と過ごす彼女の自然体な姿を見て、
話し方も雰囲気も全部、そのまんまの子だとわかった。
心の中でガッツポーズ。
勝手に彼女が妹であり、そして姫のような感覚になっていた。(笑)
かわいすぎて。
よく見ると髪の毛もピンクなのだが、ナチュラルすぎて、長いこと気が付かなかった。
彼女は合計4日程しか島にいないというので、
ほとんどの仕事の休憩時間と、夜に遊びに行った。
彼女はだいぶ霊感がある人で、
繊細なやさしさを持っている人だった。
そして私は、感受性豊かな方で、
少々ひねくれたものの見方が好きなタイプ。
そんな互いの感性の中で、
独特の遊びを楽しんでいた。
世の中には、なんだか惹かれるもの、
というのがあると思う。
たとえば、
通りがかりのアンティークショップの古びた鞄。
東京の吉祥寺を歩いていた際に、ぼんやり映る景色の中で、
“わたしはただの景色じゃないよ” と、
ある鞄が目に焼き付いたことがあった。
抱いてみると、すごく気持ちのいい全身への鳥肌と、包まれるような安心感があった。
その鞄は、スロべニアの軍の医薬品入れだそうで、使い道はわからないし、複雑な歴史があるのかもわからないが、
一緒にいると落ち着くのは確かだったので、
購入し、島に持ってきていた。
わたしの家に彼女が遊びにきてくれたときに、
その鞄を見せた。
手に取って抱きしめ、
彼女もまた、その鞄の奏でる穏やかなメロディーに浸っているようだった。
彼女は言った。
「 女性だね。 あったかいね。
すごくやさしいね。」
わたしは言う。
「 そうなんだね! すてきだよね。
とっても。」
お互いが
似たような世界に居るようだった。
部屋に飾ってある、友達の描いた風景画も見てもらった。
それを見て彼女は、
「絵のお花たちが、この絵を描いた男の子のことを、とてもやさしい気持ちで、愛おしく思っているのが伝わるね。お花は揺れているんだね。」
と言った。
[そうなんだね。
あなたはとってもやさしい言語を話す子だね。]
って、彼女を見て私は思った。
そんな時を過ごして、
やがて、彼女の帰る日はやって来た。
彼女は家は今、石垣島にある。
チャリダー女子と一緒に、石垣の居酒屋さんに行ったときに、
気になったアルバイトの女の子に声をかけたところ、仲良くなって、
結局ワンルームに3人で住んでいるらしい。
そこに帰ると言っていた。
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