結末-22 叔母、浴槽で溺死する | あなたに,も一度恋をする

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はじめに

 

現在、私は環境が変わり、

自宅で母の介護を行っています。

母の介護に関し、思う事、綴りたい事、

山ほどありますが、

ずっと連載のように書いていた介護記事の続きが

どうしても書けずにいました。

 

2020年の4月、

面倒をみていた叔母の最期の状況です。

この事を書かないと、前に進めず、

ずっと停滞していました。

 

叔母の結末は題名の通りです。

この時のリアルで悲惨な体験を綴りますので、

読める方のみ、

続きをお読みになって頂ければと思います。

私と同様のトラウマにならないためにも、

途中、だめだと思われたら、

すぐに中断してください。

 

尚、叔父と叔母の過去記事を、途中から

アメンバー限定とさせて頂いていましたが、

全てを解除致しました。

さかのぼってお読みになりたい方は

ダラダラの長文ですが、

お読み頂ける設定にしました。

 

 

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叔母が息子の依頼によって、

老人施設に強制連行のように入所させられた日

 

 

 

あの日から、

あと1日で満1年を迎えようとしていた夜、

叔母は一時帰宅していた自宅浴槽のなかで

溺死しました。

 

叔母を土曜日から日曜にかけて、

老人施設から自宅に

一時帰宅させていた息子は、

母親が風呂に入っている間、

別室で妻と長電話。

40分もたつのに、

風呂場から音がしない事に気づいて

風呂場をのぞいてみたら、

そこで診たのは、

浴槽のなかに頭まで沈んだ

母親の姿でした。

 

息子は母を浴槽から引き上げるどころか、

あわてふためき、

隣の我が家のチャイムを鳴らして

助けを求めたのでした。

 

駆けつけた私が

息子に電話させた119。

私は浴槽から叔母を引き上げ、

救命措置を施しました。

 

すでに死亡しているだろうと思いつつ、

このままではあまりに不憫だと、

心臓マッサージをしつつ、

無反応であったことから、

意を決して施した人口呼吸。

肺に入った水がゴボゴボと溢れ、

施設で食べた夕食の

消化しきれてない一部の

吐しゃ物も流れ出てきました。

 

浴槽に沈んだ裸体の重さは

ハンパなく、 

引き上げるのは大変でした。

湯舟の中に上下の入れ歯が

叔母の死体とともに

浮遊する光景は、

長い間、

私のトラウマになりました。

 

この後、7分から8分で救急隊到着。

そして病院への搬送。

そこで死亡が確認されました。

 

搬送された病院での警察からの調書、

その後、自宅に警察官と刑事が

ドラマのように現場検証を行い、

口頭での息子へ詳細な質問を終えて、

その日は終了。

翌日、息子は警察に死亡診断書を

受け取りに行きました。

 

叔母の死因は溺死で、

犯罪性がないという事で、

解剖は行われず。

そのため遺体にメスが入れられる事なく、

さらに温かい湯のなかで、

意識を失うようにして沈んだためか、

菩薩のような穏やかな表情で、

こんなに色艶のよい遺体を見たのは

初めてでした。

 

この事故の夜、

連絡をうけたお嫁さんは

夜中に県外からタクシーを飛ばして到着。

息子は自分(←?)が遺体を引き上げ、

必死の救命措置をしたが、

生き返らなかったと、

妻に伝えていたようです。

 

私には、どうでも良い事なので、

あえて真実を伝えるつもりもなく、

夫婦二人ですぐに葬儀の準備をするよう

アドヴァイスをし、

二人は葬儀社を呼んで

打ち合わせを行っていました。

(葬儀社は真夜中でもかけつけてくれる。)

葬儀社との打ち合わせの後は、

葬儀に必要な諸々の準備を

徹夜で行っていたようです。

 

 

実は叔母が亡くなったこの夜、

死亡するわずか2時間前に

叔母は我が家に来て

私の母と私と3人で話をしていました。

 

叔母が施設から家に帰っている隔週の週末、

本来傍にいなければならないはずの息子は、

母親を施設から自宅に送り届けた後、

毎回どこかに遊びに出かけていました。

いつもぽつんと独りでおかれていた叔母。

この日はよほど思い詰める事があったのか、

我が家を訪ねていたのでした。

 

叔母は私達を前に、

夫を亡くして希望がないこと、

今すぐにでも死にたいこと、

ホームでは仲間に嫌われていること、

そんな事を、普段の暴言とちがって、

悲しそうに話していました。

 

「ホームで嫌われているとしたら、

補聴器をつけてないからだよ。

つけたら、会話に参加できるから、

息子に補聴器のお店に

連れていってもらうといいよ。」

 

そういうと、

「ずっとそうしたかったけど、

息子の嫁が、

お金がもったいないから

あかんって言われてるらしい。」

というので、

 

「それは叔母ちゃんのお金でしょ?

そんなこと、言わせないよ。

補聴器作れば、環境が変わるから。

だいじょぶだよ。

お嫁さんになんて邪魔させないよ。

だいじょうぶだよ。」

そんな会話をしてたのでした。

 

そのうち、出かけていた息子が

母親を迎えにやってきたので、

私達から息子に、

 

「母親がホームで

仲間の輪のなかに入れるように

母親から預かっている預金をおろして

補聴器を作ってあげなさい。」

と助言し、

息子はそうすると約束してくれたのを見て、

叔母はようやく明るい表情になって

帰っていった、

そんな矢先の事故でした。

 

高齢者をご自宅で

介護なさっていらっしゃるご家族の方、

入浴はくれぐれも気をつけてください。

介助が不要と思っているなら、

最低でも見守りが必要です。

ヒートショックが起きて浴槽に沈んだら、

ものの数分で死に至ります。

 

叔母は施設で、人に裸を見られながら

入浴する屈辱を、

長々と母に愚痴っていた事がありました。

それは叔母の命を守る見守りだったのです。

何度伝えても、伝わっていなかった。

何より、息子には、自分の父親が、

過去3度も浴槽で沈みかけた事を

伝えていたにもかかわらず、

それを教訓にしていなかった。

 

悔いても悔いても、命は戻りませんが、

ただひとつ救いとするのなら、

叔母のただひとつの、

ささやかな願いが叶ったのかもしれません。

 

『せめて死ぬなら、

施設じゃなくて、自宅で。』と。

 

夫を支えるのを生きがいにしていた

80歳の生涯でした。

 

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今回も長い文章に

おつきあい頂きまして

ありがとうございました。

 

今後は、私の母を通じて感じた

数々の介護現場の記事を

ゆっくりではありますが、

記録に残していきたいと思います。