政府も認める、恐るべき脱原発のコスト | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 経済産業大臣名で出されている『「エネルギー・環境戦略策定に当たっての検討事項について』という資料があります。ここにはかなり驚愕の事実がいろいろと銘記されています。
www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120904/shiryo2.pdf

 この中で、総電気代が現在の15兆円が脱原発によって最大で38.1兆円にまで2倍以上増え、家計の電気代が月平均9900円が最大で2万712円へと2倍以上に膨らみ、就業者数が6257万人から最悪で5223万人へと1000万人以上減り、貿易収支が17兆円の黒字から最悪で9.7兆円の赤字へと大転換するという、驚愕の内容になっています。

総電気代(コスト)  15兆円 → 38.1兆円(最大)
家計の月平均の電気代 9900円 → 2万712円(最大)
就業者数     6257万人 → 5223万人(1000万人以上の減少)(最悪)
貿易収支     17兆円の黒字 → 9.7兆円の赤字(最悪)

 つまり、脱原発を推進しようとすると、日本国民の暮らしが破壊されるものであることを、脱原発を推進する政府自身が理解しつつ進めているのが現実であるというわけです。

 この資料には、「まず向き合わなければならない課題」として、「電力需給のひっ迫」と「電気料金の上昇」及び「原子力政策変更に伴う影響」から来る「追加的国民負担」が挙げられています。つまり、現在脱原発を推進すると、電力の需給が逼迫して電力の供給の安定を損ねる危険があり、電気料金は大幅に上昇せざるをえず、廃炉などに伴う追加的な国民負担も多額にのぼっていくことを、率直に認めているわけです。

 また「不可逆な影響がでる課題」として「原子力安全を支える技術と人材の喪失」「日米関係を含む外交・安全保障への影響」「エネルギー調達における交渉力の低下」などを、きちんと挙げています。つまり脱原発によって、原子力の安全を支える技術と人材がなくなっていき、日米関係を含む外交・安全保障に対しても大きな影響が及んでいきます。そして、エネルギーが逼迫することから、石油や天然ガスなどの燃料を購入するにあたっての価格交渉力が低下せざるをえなくなるわけです。

 さらには「ホルムズ海峡封鎖による供給逼迫懸念が生じた場合には、エネルギー価格が史上最高値を付ける可能性や安定的なエネルギー・電力供給に支障が生じるおそれ」があることも、率直に認めています。ホルムズ海峡というのは、ペルシャ湾の出口にあたる海峡で、アメリカとイランの対立によって緊張が高まっているところです。このホルムズ海峡でいったん有事が発生した時に、石油や天然ガスの値段が高騰するどころか、そもそも石油や天然ガスが必要量輸入できない事態さえ発生しかねないわけです。ホルムズ海峡の位置については、以下の地図を参照してみて下さい。



 では、脱原発を実施して、別の電力で代替しようとすると、どのくらいのコストがかかることになるのでしょうか。まず住宅太陽光について見てみましょう。

 原発1基分の電力(福島第一原発に6基ある原発の1基分の電力)を代替するのに、住宅太陽光では1.6兆円から3.3兆円が必要で、しかも必要となる住宅の戸数は175万戸だそうです。ちなみに原子力発電1基なら、投資額0.4兆円だということも書かれていますから、これに相当する住宅太陽光では原発に比してコストが4倍から8倍も必要になるというわけです。住宅太陽光で原発を代替しようとするというのがどれほど非現実的な選択肢であるかは、政府自身が認めているのも同然なわけです。

 ちなみに、原発1基分の電力をメガソーラーで代替しようとすると5800カ所であり、風力発電で代替しようとすると2100基であり、地熱発電だと35地点だとされています。念のために確認しますが、これだけ作って原発1基分にしかならないのです。

 そして、脱原発に走り出すと、電気代が跳ね上がり、国内の産業の競争力が奪われて雇用が大幅に喪失し、大幅な貿易黒字が大幅な貿易赤字へと転換することが、実は政府の見通しによっても示されているわけです。

 こうした情報を持ちながら、進んで広報しない政府にも大きな責任はありますが、このように埋もれた情報を取り上げて伝えるべきマスコミが、全くその機能を果たしていません。この結果、国民はこうした事実についてほとんど何も知らないまま、脱原発の流れが進んできているというわけです。

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