「で、今日は一日歩いてたの?何件取れた?」

返す言葉もない。

「だいたい君は会社に遊びに来ているのかね?」

「そんな社員はうちにはいないよ。」

RIKAOはうつむくだけだった。

あれから1年は経つ。

 

入社して2日、渡された住所を回って挨拶をしてくるのが仕事だった。リストがあるならそこを回ればいい。初めての場所をGoogleを頼りに行った。が、どういうことかあるはずの建物がない。そんなこともあると聞いてたので次に行く。元城下町だけあって一歩通行や袋小路が多い。やっとたどり着いたかと思うと更地。間違えたのかと思いあちこち探しまわる。Googleにだって間違いはある。そんなこんなで時間ばかり取られて何件も回れない。周りのお店も回って、と言われているので行けば、

「え?来るのは明日だよね?」

「何でうちに来るの?リストがあるの?何のリスト?」

「もうあるよ。そのために借金しろってか?」

「担当者がいるのになんで調べてこないの。」

「(チラ見)・・・(営業とわかって無視)」

とはいえ御社も会社でしょ?

 

ま、そんなものかなと思ってもこのまま帰ればまた嫌味を言われる。

これで皆辞めちゃうんだ。

そんな日が一週間続いただけですっかりおかしくなってきた。

後でもその場でも嫌なことを言われると思うと怖くて店に入れなくなっていた。

つい通り過ぎてしまう。

帰れば歩いているって言われる。確かに歩いてはいる。入れなくなったから。

それでも入れそうな店舗に入ったら「一切、興味はない。」

とても粘れる雰囲気ではない。

っていうか、粘るからさらに嫌われるんだよね、私たち。

何度顔出してくれたって要らないものは要らないんだ。

 

そのうち不思議なことをしでかすようになる。こりゃだめだ。自分でもわかってる。

 

大体なんでこの仕事を選んだんだろう?いろんな店舗を回ってたくさんの人に合えるから?

時間が自由だから?なんでだろう?入った当初はやる気があったのに。なんでだろう。

疲れているはずなのに眠れない、食事も取れない。まだ1週間しかたってないのに。

 

そんな日。思いついた。

 

   そう、辞めればいいんだ、今すぐにでも。

この業界にいられなくなってもいい、もう二度とやらない。

いつでも辞められるなら、