「リュウ!」

心臓病で入院している
入院患者のリュウ

ただ、症状は比較的軽い方なので
10歳の、イタズラ盛り

菩提樹の下で寝転ぶ俺の腹に
飛び乗っては、
俺を起こして喜んでいた

でも、無理をすると
すぐに発作を起こしてしまう

そんなリュウを
年の離れた姉のソヨンさんが
心配して追いかけてきた

「ユンホ先生!
リュウを見かけませんでしたか?」

辺りを見回すけど、リュウの姿が見えない

「どこ行っちゃったんだろ?」

そう言って、首を傾げるソヨンさん
彼女は、リュウの一番上の姉で
12歳も歳が離れているから
姉というよりも母親みたいな人だった

初めて、彼女に会った時
何処かで見た事があるような気がした

そして…彼女の瞳が
チャンミンによく似ている事に気がついた

そう意識してから
リュウの担当医として
よく顔を合わせるようになった
ソヨンさんの事が気になって仕方がなかった

ソヨンさんに好意を持っているのか
それとも、いまだに逢えない
チャンミンを懐かしく思っているのか…

自分の気持ちがよくわからない…

「ユンホ先生‼︎」

いきなりリュウが、菩提樹の陰から現れて
俺の背中に飛びついた
そのタイミングを逃さずに
リュウの腕を掴んだ

「リュウ!
お姉さんに心配かけたら駄目だろう?」

リュウを捕まえて、ぎゅっと羽交い締めにした

「先生!もうしないから離してよ!」

俺の力に負けて、半べそをかいて
謝るその姿に
俺とソヨンさんは、顔を見合わせて笑った

笑った時の、笑顔が
本当にチャンミンに似ていると思う…

考えてみれば、俺ももう28になる

こんな風に
穏やかな時間を過ごした時…

帰る宛のない人を
このまま待ち続けるには
あまりにも長い時間が経った…

ふとそう、思ってしまう

正直な所…
この頃、時々自分でも
迷っていると感じる時がある

あまりにも、幼かった恋…

ましてや、相手は男の子

チャンミンだって、今頃
普通の恋愛をして
幸せに暮らしているのかもしれない…
そう、考えてしまう

俺も、ソヨンさんを見つめながら
どの気持ちが本心なのか

考えあぐねていた…