娘は
カテーテル検査のため
一昨日から入院

人見知りも始まり
聴診器を見るだけで
大泣き

血圧をはかるのに泣き
体重測定で泣き
エコーで泣き

ここまでは
そばにいてあげられるし
時間も
さほど掛からないから
良いけれど

点滴だけは
別物で……


処置室の外で
泣き声だけを聞きながら
ただひたすら
待つしかない


乳児の点滴は
一本刺すのに
30~60分は掛かるから
ずっと泣き通しで

無事に
終わって
会うときには
全身汗ビッショリ
泣きすぎて目は腫れ
グズグズ状態

これだけは
何度経験しても
慣れるものではなく……

***

今回は
心臓のカテーテル検査

その目的は
心臓の右室の大きさと
肺動脈の弁の幅を確認し
出生時からの経過から
次の手術の時期と
内容を具体化していくことだった

定期的な通院で
レントゲンや
エコーなどを行うけれど

手術へ向けて
心臓の血液状態や形
心室・心房と弁の動きを
より詳しく
調べるには
この検査が必要で

***

カテーテル検査は
食事制限が事前にあるため
前日からの入院

飲食の制限と同時に
点滴が始まる


基本的に
足の付け根の大動脈から
カテーテルを心臓まで挿入

心臓で
カテーテルの先から
造影剤を投与し
造影することで
心臓の形や大きさなどを
調べていく

通常は……

でも今回
カテーテルを挿入した際
足の付け根から
心臓へ通らず
大動脈に一部損傷があることが
わかった

そのため急遽
首からカテーテルを挿入することに


この大動脈の損傷
前回の入院時
点滴で使用していた際に
起こったようだとか……

そう言われると
確かに
前回の手術の時
足の付け根から入れていた点滴が
閉塞することが多かった

もうすでに
あの時には
損傷していたのだろう……


日常生活や
成長過程に支障は無いものの
今後の検査や
手術での使用は
出来なくなると


正直
あまり良い知らせでは
無いけれど
手術時ではなく
今回の検査で
分かったことは
良かったのかもしれない

***

検査時に今回
併せて行われたのが
肺動脈の弁を広げる処置

これは前回
出生後に一度行っていて
この処置により
弁が広がることで
血流が保てるようになれば
手術の選択肢が
良い意味で広がることになる

***

大動脈の損傷の判明などで
検査は4時間

集中治療室で再会した娘は
まだ意識は無く
口から肺へと
呼吸補助のチューブが入り
点滴が数本と
身体は完全固定された状態だった

この光景も
初めてでは無いけれど
やっぱり
慣れるものではなく

そんな中でも
安心材料を挙げるとすれば
手術とは違い
呼吸や脈拍が
安定していること
ただひとつだった

***


帰りのバスの中
わたしは自分に
「強くなれ!
もっと強くなるんだ!!」と
心の中で
呪文のように唱えた


娘の泣き声を
たくさん浴び

見るに耐え難い姿が
目に焼き付いた状態の私には

まだ
未来を信じること
信じ切ること
信じ抜くことは
出来なくて

ただただ
歯を食いしばり
耐えることだけで
精一杯で


病院を出ても
外さない
外せないマスクは
流れる涙を
隠すためのものでしかなく


家につき
鏡に映る
自分の顔の青白さに
ゾッとしつつ

「やつれている場合じゃない…」と
自分自身を正気に戻し
変わらない現実を
今すぐには
受け入れられずとも
「闘うな!」とだけ
言い聞かせ


食べ物なんか
欲しないけど
とにかく胃に流し込み
「健康であるんだ…娘との未来のために」と
自分自身を説得し続けた