カテーテル検査~まさかの心拍停止


娘の容態は
点滴により安定していたため
カテーテル検査は
もう少し日数をおき
娘の体力を
少しでも蓄えてから
実施することになった

私も産後の経過は順調で
通常通り1週間で退院

翌日から
娘の面会に通う日々が始まった

***

検査は結局
産後2週間経っての実施となった

検査は約3時間
病院内で待機

娘が検査室から
病棟に戻ると
その旨の連絡が携帯で知らされた

検査後の病棟は
PICU(小児集中治療室)
主に手術直後など
経過管理が重要となる患者が
集まる病室だった

検査直後の娘は
小児用のベッドに
ちょこん…と小さな身体

その身体の下には
身体と同じ形状の板があり
両手足
さらに頭までが
その板に括り付けられ
固定されていた

全身麻酔のため
口からは気管に管が入り
呼吸器が取り付けられていた

その光景は
まるで
張り付けの刑にでも
処されているかのよう…

私たち夫婦は
言葉ひとつ出なかった

検査自体は
特に問題なく行われ
撮影したデータをもとに
心臓 特に右心室の容積を
計測していくと共に
カテーテルで広げた弁の経過
血流の経過を見ていくと
説明された

口に入っている呼吸器は
麻酔が覚め
呼吸が安定したら外すということだった

***

少しずつ麻酔が切れ始め
モゾモゾする娘

動きによって
色々な管が抜けないよう
固定されている姿が
必要以上に苦しく見えて

私たちは
娘に手を伸ばすことも出来ず
ベッドからも
少し距離をおいて
ただただ無言で
その光景を
目に焼き付けた

***

翌日の朝
息子を学校に送り出し
家事をしていたところに
病院からの電話

担当医からだった

昨夜から
娘の血中酸素が少しずつ下がり
あわせて脈も弱まり
今朝方
一時的に心拍が停止したとのこと

心臓マッサージなど
措置をして
今は容態は安定している…と


無事に検査は終わったはずなのに
「心拍停止」とは
一体何が起こったのか
分からなかった

説明が
あまりに淡々とされたので
大変な事が起きていたと
実感が湧くのには時間を要した


検査の説明でも
そんなリスク説明などなかった

詳しい説明は
午後の面会時間に改めてということで
一旦電話を切り
面会時間を待って
娘のところへ向かった

***

病室へ入り
娘のベッドへ近づくと
ベッドサイドには
点滴 点滴 点滴…
それは更にベッドにも
所狭しと並んでいて
その数 20本以上

外されているはずだった
呼吸器も着いたまま
手足はベッドの柵に括り付けられ
身体は何も着ず
電気毛布が掛けられていた

この光景は
驚きを遥かに通り過ぎ
もはや
無理やり生かされているとしか
思えない状況に
娘への申し訳ない気持ちさえ
込み上げてきた


ただ
今から想えば
娘はちゃんと
「生きる」という選択を
してきたのだろう
「自分」で

だから
心拍も戻った…


でもこの時は
そんな風に想える余裕は無く
言葉も出ず
このまま
消えてなくなってしまいそうな
命を前に
ひとり震えながら
零れる涙を少しでも
堪えることに
精一杯だった