出産の翌日夕方
わたしの病棟から少し離れた
NICU(新生児特定集中治療室)で
管理されている
娘のところへ

帝王切開の場合
手術の24時間後から
歩行練習が開始されるため
車椅子で娘のところまで
連れて行ってもらった

出産時に少しだけ顔をみた娘
再会の時には
鼻から胃に管が入り
足には点滴
胸と腕には心拍数や
血中酸素などが管理されるモニターが
装着されていた

後から思えば
こんな姿は
まだまだ序の口だったが
正直
衝撃的で直視出来なかった

これは大人たちの
「生かす」ことへの執着であり
親としてのただのエゴを
医療技術を駆使して
押し付けているだけなのではないか

そんな気持ちで
胸が張り裂けそうだった


「触ってあげて大丈夫ですよ」と
看護士さんに言われたが
なかなか手は伸ばせず…

目の前の光景が
夢であってほしかった
でも
娘の温もりに触れてしまったら
それはたちまち
現実になる

それが怖かった

だから
触れるのが怖かった

***

その後
医師から
数日後に予定している
心臓の検査についての
詳細説明を受けた

内容は
脚の付け根の動脈から
カテーテルを心臓まで挿入

そのカテーテルから
造影剤を投与し
心臓の動きや血流を映し出す

またカテーテルを
狭くなっている弁のところで
膨らまし
弁を広げる措置を行う
というものだった

***

説明後
再び娘のところに行ったときは
その小さな小さな命を前に
涙が止まらなかった

「ご自身を責めてませんか?」

そう
看護士さんに言われ

「責めないように しています」と
答えたものの

その言葉に反応し
込み上げる感情から
わたしは自分を
心の底で
ずっと責めていたことは
明らかだった

ただ
その想いに蓋をしてきただけで

娘の心臓の疾患が
判明した瞬間から
ずっとずっと
原因探しをする形で
責め続けていたんだ

***

検査の内容を知り
これから起こる事への不安
産まれて数日で
そして
たくさんの痛みや苦しみを
与えてしまう事への悔しさが
大波のように私を襲い
その夜は
溢れる涙に
ただただ溺れていた