シカやイノシシなどに付着し、血を吸って増殖することから「山の吸血鬼」とも呼ばれるヤマビル。近年、里山の荒廃で動物の行動範囲が拡大したのに伴い、農家の人への被害が増えている。吸血鬼を退治して農家を支えようと秋田県の女子高生4人が立ち上がった。
秋田市の県立金足農業高2年の加藤愛咲さん(17)が、山林の落ち葉に「ふぅー」と息を吹き掛けた。二酸化炭素や歩く振動音に反応して動きだすヤマビルの習性を利用した捕獲方法だ。
昨年11月初旬、秋田県五城目町の集落に近い山林で、水色の農作業着に長靴姿の加藤さんら。捕獲作業は多い時には週5日実施、計約500匹を捕まえた。
これまでの生態観察で、耕作放棄地など雑草が伸びた日陰で増殖していることが判明。ヒルが吸った血のDNA検査で被害動物の特定を進め、牛などの家畜も被害に遭っていることも確かめた。
調査を始めたきっかけは、2009年春に農家の人たちから「靴下が血で真っ赤に染まった」と被害実態を聞いたこと。ヒルは吸い付く際に麻酔成分と血液凝固を阻害する物質を出すため、痛みを感じないまま、出血が続く。「ショックで農業を辞めた人もいた。農業を学ぶ私たちが何とかしないといけないと思った」と加藤さん。
捕獲の際にヤマビルに“逆襲”されたことも。メンバーの一人は「帰りの車中で腰が血まみれになっていた。ほかの人に指摘されるまで気付かなかった」。
昨年9月には東北大学で開かれた国際学会に出席してスピーチ。生息数が少ないとされていた岩手県で森林管理署や小学校など約20カ所にアンケートし、生息域がシカの移動範囲と重なって北上していることが判明したと発表。「いずれ畜産地域にも被害が広がってしまう危険がある」と訴えた。
各国の教授らから質問が相次ぎ「リーチ(ヒルの英語)・ガールズ」との愛称も。審査員特別奨励賞を受賞し、メンバーは「自信がついた」とはにかむ。
4人を指導する田中大介教諭(35)は「世界遺産の白神山地まで北上したら、動植物保護の観点からヤマビルの駆除は難しくなる」と警告する。
加藤さんらは、長靴などに散布することでヒルが近づかなくなる薬の開発にも取り組み、特許を申請中。今後、NPO法人を立ち上げて農家や登山者向けに「ヤマビル注意」の看板を設置するほか、小学校に出向いて「山の吸血鬼の恐怖」を伝える活動をしていきたいとしている。