昨年のベネチア映画祭でみごと金獅子賞をとった
キム・ギドク監督の『嘆きのピエタ』を見に行きました。
あの特異な世界の映画がどのように受け入れられたのか
非常に興味がありました。
小さな町工場が並ぶ裏通り
材料と言い製品と言いゴミ捨て場のようにうず高く通りまではみ出している。
私たちが訪ねるソウルは
近代的な高層ビルの間に公園や世界遺産の王宮があり
明洞、東大門など若者が集う繁華街や
漢江を渡ればファッションをリードするおしゃれな街、江南の整備された町並みがある。
地方都市へ行く車窓から時折見える朽ち果てた貧民窟は
意識の中に有ったとしても
もし、この映画に出てくる裏町の雑踏を先に見ていたら
「韓国だいすき~!」なんて言えなかったかもしれない。
血も涙も感情すらもない一人の取り立て屋の物語。
でたらめな高利で金を貸し
返済が出来なければ平気で債務者を身体障害者にして
その保険金を返済の代わりとしてせしめる。
その残虐な方法は見ている側としても胸くそ悪い。
そんな悪魔のような男の前に
「あなたの母親よ、あなたを捨てた母さんを許して」と一人の女が現れる。
初めは疎ましがったが
自分の為、こまごまと身の回りの世話をし
尽くしてくれる女を母と信じるようになり次第に心を開くようになる。
親子の情愛とか人を思う心が少しずつ芽生え
取り立てにも変化が現れ、
母と名乗る女が行方をくらませれば自分が怪我を負わせた男たちの復讐でどうにかされたのか・・・と必死に探しまわる。
しかし、このハッピーな状況で終わらないのが
キム監督の彼らしいところ。
当然のようにあっと驚くどんでん返しがあり最後は・・・・。
韓国のガイドさんは
監督の映画は見たらキチガイになるとか頭が痛くなる
とか言ってたなあ。
それでも私は韓国で好きな監督は?って聞かれたら
迷わずキム・ギドクと答えます。